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高校生である私が請け負うには重すぎる  作者: 吾田文弱
序章 その男 影と裏あり
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6. 山田光の嘘

「電話越しに聞こえた声色、アンタから聞いた外見の特徴、全てが一致していた。はあ……、まさか記念すべき一人目の依頼人がアンタだとはな」


 帽子とフードで顔が隠れているため相変わらず表情は分からないが、声の調子とリアクションは明らかに落胆しているようだと分かった。


「あなた、電話でも話したけれど何が目的? 朝来た時から怪しいと思っていたけれどあなたは何者なの?」


「目的? 何者? アンタと私はそのような義理か? 答える理由など皆無だ」


「いいえ、話してもらう。今朝はろくに話せなかったけれど、丁度いい機会だわ。私は海野蒼衣。

 一組で僭越ながら委員長を務めさせていただいている者、そしてあなたの世話係を仰せつかっているの」


「別にそのようなことをしてもらう必要もない。言っただろう? 私は誰とも関わるつもりはないと。

 そんなことよりも、こんな所とはいえ長居は出来ない。もっと人気のない場所へ移動しよう」


 そんなことをする必要こそ皆無な気がするけれど。

 だったら何故このような無人駅で待ち合わせたのか?

 その為にこの駅を選んだのではなかったのか?


 そう疑問を持つ私を尻目に、彼は駅からそれほど離れていない空き地の隅の方まで案内された。

<hr>

「さて、早速仕事の話をしよう。アンタは私に何をして欲しいのだ?」


「…………は?」


「いや……。アンタは私に何かして欲しいから電話して来たのだろう? まさか、優等生のご身分でイタズラ電話か……!」


「違うよ、話がのみ込めないだけ。あと私は優等生ではありません。

 ……ええっと、順番に話を聞かせて? 今朝の話に戻るけれど、あなたのその格好。何でもううちの学校の制服を着ているの?」


「大した理由などない。私だけ違う高校の制服を着ていては目立つし、何より自分は転校生だと公言しているようなものだろう」


 意味が分からない。まるで転校生であることを嫌がるような言い方。それに目立つのが嫌って……。

 ——だとしたら。


「あなたって、本当に病気なの? 先生はそう言っていたけれど」


「この格好を見て分からんか? 私は陽があるうちはなるべくこの格好でいなければならないのだ」


「もう夕方で、あと数十分もしたら陽が落ちるけれど?」


 私が追求すると、彼は唇を僅かに歪ませた。

 すると彼は、


「訳は話せない。だが病気というのは嘘だ。私は光線過敏でも何でもない。いたって健康体だ」


 と、またしてもあっさり嘘だと白状した。

 押しに弱いのか、落ち着いている声色がどこか頼りなく感じてきた。


「嘘? それは聞き流すことはできない。山田くん、あなたは何を企んでいるの? どうして先生たちに嘘をついてまでそんな格好をするの? 話せないなんて言い訳は通らないわよ」


「黙って聞いていれば口うるさい女だ。今日初めて会ったアンタに何故ペラペラと私のことを話さねばならないのだ」


「何でそう頑なに話そうとしないの? 教えてくれなきゃ分からないじゃない」


「教えるメリットがないからだ。仕事に支障が出る」


 いよいよ怪しさが本格的に増してきた。彼はただの高校生じゃない。


 何か色々と——裏があり、影がある。


 どうやら彼にはまだまだ訊くことがありそうだ。

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