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高校生である私が請け負うには重すぎる  作者: 吾田文弱
序章 その男 影と裏あり
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5. あの声

 三秒ほどの呼び出し音の後、その声は聞こえてきた。


「もしもし。うむ、早速依頼か?」


 落ち着いた低めの男性の声が聞こえてきた。


「あなたですか? この貼り紙をしたのは?」


 相手の問いに答えず、私は問い質した。


「ああ、そうだ。私以外に誰がいるというのだ?」


 相手はあっさりと白状した。私は更に問い質す。


「ここが貼り紙禁止の場所だと分かった上でこんなことをしているのですか? だとしたら何が目的なんですか?」


「フッ……。そのような細微なこと、気にするな。重要なのは、アンタが私に電話をしてきたことだ」


──何を訳の分からないことを……。


 私が電話をしたことが重要? 話を逸らされた気がしてならない。

 そう思う私などお構いなしに男は話を続けた。


「とにかく、今は電話で長くは話せない。詳しい話は落ち合ってから話そう。三丁目にある駅まで来ることは可能か?」


「え……。ええ、別に大丈──」


「そうか、ならば早く来るのだ。あそこでも長居は出来ないからな」


 私が言い切る前にそれだけ言って向こうから電話を切った。

 文句を言う暇さえ与えてはくれなかった。しかし、電話の主と会う約束が出来た。そこで面と向かって彼に忠告しよう。

彼の言い分はめちゃくちゃだ。言ってはなんなのだけれど、向こうの言い分を拝借して言うとしたらこちらは依頼者、平たく言えば、お客さんのような立場だ。

そんなお客さんのような立場である私の意見を聞き入れることなく、そちら側の意見を押し通そうとするその態度も、とても頂けないと思ったからだ。

 

 私は駅へ向かおうとした──とその時、私のスマホが着信音を鳴らしながら揺れだした。


 非通知だった。


 けど電話の相手はあの人だろう。私は躊躇わず電話に出た。案の定、さっきの人が出て、こう尋ねてきた。


「私としたことが聞き忘れたことがあった。アンタの外見の特徴を教えろ。見つけたら声を掛けよう」


 おっと。

それは私もうっかりしていた。相手の姿も分からないで駅へと向かうところだった。

 私は自分の特徴を簡単に伝えた。


「ふむ、長い黒髪に丸い縁の眼鏡……、そして今は四高高校の制服を着ている……と。分かった」


 必要最低限の特徴を伝えると、そう言い相手は電話を切った。

 私は待ち合わせにおいて相手を待たせるのは嫌いだ。

 急いで駅へと向かった。


 しかし何か引っかかる。電話越しに聞こえてきたあの声──どこかで聞いた気がしてならなかった。

 

 いや、考えても仕方がない。今は駅へ赴くことが先決だ。


<hr>

 程なくして私は駅前に着いた。

 彼が指定した駅は、この時間だというのに全く人の気配がない寂しい無人駅だった。


 このような場所で待ち合わせるなら別に私の特徴を聞かなくても良かったのでは?


「ふん。ようやく来たか、アンタだな?」

 

 と、突然後ろから話しかけられた。きっと私をここまで呼びつけた電話の主だろう。


 私は振り返った。


「あ……! あなたは!」


「ふむ。やはりアンタだったか……」


 彼の容姿を見た途端、引っかかりが解消した。

 

 目の前にいたのは今朝、私たちのクラスを一瞬にして気疎い雰囲気に支配した黒づくめの転校生。


 山田光くんだったのだ。


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