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高校生である私が請け負うには重すぎる  作者: 吾田文弱
序章 その男 影と裏あり
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4. 貼り紙

 放課後。ただ彼を見守ることしか出来なかった自分の行いを反省しながら私は帰路についていた。


 結局、彼は休み時間でもずっと机から離れず気怠そうに座っているだけだった。


 クラスメイトから話しかけられたりもしていたが、私に言ったことと同じ事を言ったのか、彼に話しかけようとしていた人たちはみんな判を押したように不機嫌そうにして彼から離れていった。


 どうやら彼は本当に誰とも仲良くなる気はないらしい。


 最後の一年間、同じ学舎(まなびや)の下で勉学に励んで行くというのに、一人も友達がいないというのは、自分の事のように寂しいものを感じる。


 転校を繰り返しているせいなのか、友達作りを諦めてしまっているようだ。

 それらを改善させるために私が世話係に任されたのだ。頑張らないと!


 さて、話を現在に戻すけれど、私が下校を始めてから丁度自宅まで半分くらい歩いたところだ。


 私は登校する時もそうなのだけれど大体同じ道のりで下校をしている。

 だがその帰り道に私は違和感を感じた。


 その帰り道の途中には空き地があり、その付近に電柱が一本立っているのだが、違和感を感じたのがまさにそれなのだ。


 よく見慣れたその電柱に——見慣れない張り紙が貼ってあったのだ。


 この場所は貼り紙は禁止している筈なのだが、お構いなしという感じで貼ってあったのだ。

 大げさかもしれないが、大胆を通りこして、もはや放胆である。


 この貼り紙をした人物は一体どういうつもりなのだろう。

 貼ってはいけない場所に貼り紙をしてはいけないというのは小学低学年でもわかる警告である。

 それをわざわざこのような公の場所に貼るなんて……。


 ——只事でない急ぎの事情でもあるのだろうか。


 そんな思いも私の脳裏をよぎってしまい、自分には関係のないことかもしれないのに、この貼り紙を無視してしまったらきっとものすごい罪悪感に私は苛まれるだろう。


 ああ、もう見過ごす訳にはいかない! 見てしまおう! 


 そう思う前に私の意識は貼り紙の前に集中していた。

 そして紙にはこう書かれていた


『四高高校の諸君、いかがお過ごしだろうか?

あなた方の希望、悩み。

 満足いく結果となり解消する事だろう。

 詳しくはこちらまで』


 文末には携帯電話の番号だと思われる数字が書かれていた。


 これは一体? 希望や悩みを解消? まるで探偵のような物言いだった。


 文章から察するに何故か四高高校に在籍している人たちのみ対象だと思われる。いかにも怪しい。


 私は直感した。これは犯罪の予感がする。

 だけどこのやり口は聡明ではない。


 名門校に通う高校生相手にこのやり口で引っかかると思った張本人の思考に逆に脱帽する。


 だけどそこで私はいらぬ深読みをしてしまった。もしこの貼り紙を私以外の四高高校が先に見ていたとしたら、もしかしたらその人が誰にも話せないような重い悩みを抱えていて藁にもすがる思いで電話を掛けてしまい、犯罪に巻き込まれてしまったらという思いがよぎった。


 そう思ったら何だか怖くなってきた。今すぐこの貼り紙を破り捨ててしまいたいところだけれど、何を思ったのか私はこの電話番号に掛けてみようと思ったのだ。

 

 正直、危ないとは思った。


 けれどこのままでは他の四高高校生に危険が及んでしまう。けれど、真っ当な貼り紙なのかもしれないし。


 ここは生徒代表(?)として私がこの罠にあえて引っかかる事を決めたのだ。


 何事も挑戦。やって後悔することを私は選んだきた。

 この選択もきっと、正解だ。


 私は懐からスマートフォンを取り出し、貼り紙の電話番号をうち、電話を掛けた。


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