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高校生である私が請け負うには重すぎる  作者: 吾田文弱
第二章 請負人のいろいろ
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17. 白い塔

「お、知っているかな? 喋らなくとも表情の変化で読み取れた。それで、そいつは今何処にいるんだ?」


 まさかこんな陰山くんに負けず劣らず不吉で怪しい雰囲気を放った人から彼の名前が出てくるなんて思わなかった。少し動揺してしまい表情が顔に出てしまった。


 どうすればいいだろう、顔に出てしまった以上彼のことなど全く知らないなんて言えなくなってしまった。取り敢えず、クラスが同じだと言っておこう。


「彼とはクラスメイトです。ですがそれだけです。彼のことはそれ以上知りません」


「ふぅ~ん、まあいい。あいつがこの町にいることは分かってるんだ。気長に探すさ」


 一体この人は陰山くんとどういう関係なのだろう。彼をあいつだとかこいつ呼ばわりなんて、仲がいい友達みたいじゃない。

 でもこの人は私や陰山くんなんかより明らかに年上だ。若くても精々二十代後半だろう。

 そんな年上の友達がいるのだろうか? そもそも陰山くんは人との接触を極力避ける人だ。そんな彼に知り合いがいるとも思えない。


「あの、ちょっといいですか?」


 そう考えるとこの人のことが気になり出し、帰ろうとした彼を呼び止めてしまった。


「ん? 何だい? 急いでいるんじゃないのか?」


「あなたに訊きたいことができました。あなた、一体何者なんですか? 陰山くんとはどういった関係なのでしょうか?」


「んん……、君はさっき奇鬼のことはクラスメイトだけの関係だって言ったよね?

 もしかしすると俺に嘘ついてる? 何でただのクラスメイトを庇うようなことをするんだい?本当は奇鬼のこと何か知ってるんじゃないのか?」


 彼のことを下の名前で呼んだ。完全に彼のことを何か知っている! この人が何者かは解らないけれど、いい予感がしないのはハッキリと、確かに、理解することが出来た。


「ええ、クラスメイトだからだと思います。申し遅れましたが、私、陰山くんのクラスで委員長を務めさせていただいている、海野蒼衣と申します。委員長として、クラスメイトのことを庇うのは当然のことです。私のクラスの生徒達に危険が脅かされるようなことがあってはいけませんから。あなたも例外ではありません。もし私のクラスメイトに何かしようものなら私が許しません!」


「んん、言い切ったね。完全に論破されたな。これは話し掛ける相手を間違えた。見た目通り君は聡明な頭脳をお持ちのようだね、眼鏡っ娘ちゃん」


 と言い、彼は私から目を逸らすようにして巨体を翻し向こうに振り返った。そして、こちらを見ることなくこう言った。


「俺の名前は白臣塔(しらおみとう)。君に倣い職業も言いたいところだけど、諸事情で名乗れなくてね。別に覚えてもらわなくてもいいよ。けど俺は君の名前を憶えておく。何故なら君はあいつに似て俺の一番苦手なタイプの人間だからね」


 捨て台詞とも取れる言葉を残しながら男性はのそのそと歩きながら去って行った。


 あいつとは陰山くんの事だと思うけれど、私と彼のタイプが似ている? 

 一体あの人の視覚から脳へはどのような情報が伝わっているのだろう? 

 でもまあとにかく、当面の危機は何とか解決へと導かれたようだ。でも所詮はその場しのぎといったところである。


 白臣塔。年齢、職業不詳の不吉な雰囲気を纏ったあの男性は、きっとまた私の前に現れるだろう。その時はきっと今回のようにはいかないだろう。細心の注意を払い彼に挑まなくては。


 よく考えてみれば、陰山くんと出会ってから今日まで毎日ろくなことがない。一週間前まではごく普通の何処にでもいる女子高生のこれまた普通過ぎる学生生活を送っていたと言うのに。


 高校では珍しい転校生である陰山くん。

 その彼にひょんなことから借金を負ってしまい返済するために助手に半ば強引に任命されてしまったこと。


 クラスメイトによる陰山くんに対するイジメ、クラス会議。


 そしてついさっき、白石塔と名乗る怪人物との邂逅。


 色々なことが起こり過ぎて頭が付いていかない。こんな状態で私はこれから先陰山くんの借金返済と学校での勉強や仕事を両立できるのだろうか。お先真っ暗どころかすぐ目の前が既に一筋の光すら入る隙なく真っ暗である。


 勝手に思わなくてもいい事を勝手に想像し、勝手に落ち込んで、私は帰路へとつくのだった。

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