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私の声は誰にも聴こえないし届かない  作者: 轟 十六夜
漆黒の騎士団
19/20

扉の先に

伊賀恭介は考えていた。

 陸奥からメールがきてから恭介は数時間考え続けていた。もう、太陽の光がさしこんできて、恭介は考えるのをやめた。

「いくか」

恭介はそう呟くと、荷物をまとめた。

 恭介は今から日帰りで実家に帰ろうとしているのだ。今恭介が住んでいる家と極東にある実家は一つのドアと繋がっており、いつでも出入りできるようになっているのだ。

 恭介は実家に戻り、何をしようとしているかと言うと、(·)(·)(·)伊賀白夜の部屋で何かを探すためにだ。

 と言うのも、恭介が小さい時に白夜がふとしたときにこう恭介に言っていたのだ。

 それは、 

『もし、俺がいなくなったとき、俺の部屋であるものを探せ。』

そう白夜が言うと恭介は疑問を抱き白夜にとうた。

『あるもの、とは?』

そう恭介が聞くと白夜は笑顔で答えた。

『今のお前では無理だが、その時のお前なら行けるはずだ。あと俺が生まれ変わった時、探せ。お前の望む物があるだろう』

白夜はそう答えたが、その頃の恭介には全く理解が出来なく頭の上に疑問符を大量に並べていた。

 が、今なら何となく理解できる。

 そう、思ったのだ。

-俺の望む物、か。だがあの兄貴の事だ。そこは盛っただけだと思うが···

 白夜が言った、生まれ変わった時。

 それは正しく今の状況であり、今の恭介なら見つける事ができる。

 なら方法は一つしかない。

 

神の力を使うのだ。


「そう言うことでいいんですか月読様」

そう、恭介が呟くと月読が返した。

『ええ、存分に使って下さい』

恭介は月読の言葉を聞くと、フッと一息ついた。

「では、行きますか」

恭介がそう言うと、家の奥にある一つのドアに手を置いた。

 このドアは常人の者では開けない仕組みになっており、少し力をいれなければ開けれないのだ。

「はっ」

恭介が息を吐いて開けるとそこは緑あふれる所だった。

 恭介にはここが何処だかすぐわかり、目指す場所へ行く前に父と母がいる場所へ行こうとした。

 今、恭介がいるのは中庭で、恭介が入ってきたドアは消滅してしまった。

 恭介が今住んでいるドアはこの家の色々な所を行けるようになっており、通常ならば入り口から入るべきなのだが、父と母のいる場所に近いのが中庭だからというのと、

「若、お帰りなさいませ」

「若、荷物はこちらへ」

「若、お風呂の準備は出来ております」

「若、お風呂にしますか、食事にしますか、それとも(·)(·)(·)♪」

-何故、いる

入り口からいくと百人近い使用人が若、お帰りなさいませ。と言うのでかたくるしく、だから中庭から入ってきたのだが、やはり何十年もいるベテラン(一人を除き)にはもう考えが丸裸なのか、そのベテラン三人がここにいることは分かるが、

-何故、こいつもいる。 

 それは最後にふざけた事を言い、後ろでベテラン三人に叩かれている、女性なのだが、この中で、というか使用人の中でも恭介と年が近く、使用人歴も短い新妻久美(にいづまくみ)という女性で、恭介をからかっているのか、本気なのか、恐らく後者であることは確かであるが、そのやり方がやり方の為恭介にはどうしてもからかわれている、としか思えないのだ。

 何とも可哀想な女性である、が今はそんなことはいってられなく、ずっとここにいれば、叩かれてギャーギャー騒ぐ久美のおかげで他の使用人も来ると思った恭介ははや歩きで父と母のいるであろう。大広間へといった。

「あ、待って」

後ろで恭介を呼び止める久美の声には気づかぬふりをして。


大広間につくと恭介は一息ついた。

-恐らく、この戸を開ければ、またアレが始まるだろう。

 恭介は覚悟をして、戸を開けた。

 ダンッと恭介は思い切り戸を開けた瞬間、前から物凄い勢いで何かが突進してきた。

 恭介は予想通りという顔でそれを受け止めたが、違和感を感じ、上を見上げると足が恭介の顔めがけて落ちてきたため、恭介は咄嗟に身を翻すと、クナイを一本何もないところへ投げた。

 そうすると今までのは全て術だったのか、恭介に攻撃をした何かは二つとも、いやそれ以外にも攻撃の準備をしていた何かが消滅した。

「がっはっはっはっは!強くなったな恭介ぇ!」

すると大柄な男性が大きく笑った。

「本当に強くなりましたね。この一‚二ヶ月で何があったのやら」

そう横にいた綺麗な女性がいうと、その女性は刀の柄の月のようなものに気づき、あら、と言って続けた。

「月読様、息子を宜しくお願いします」

息子、そうだ。 

 この二人は恭介の父と母であり、父の名前を伊賀寅丸(いがとらまる)母の名前を伊賀京子(いがきょうこ)という父は神が憑いてる今の恭介よりも強い力をもっており、母は特別な目をもっており、恐らく月読に挨拶したとき、母にだけ月読の姿が見えていたのだろう。

『ええ、任せてください。』

月読が言うと何故か寅丸が涙を流した。

「ああ、このお声なんと懐かしきか、お久しぶりでございます。月読様!」

寅丸が大粒の涙を流しながら言うと、月読は続けた。

『ええ、お久しぶりです。寅丸。あまり変わっていないようで安心しました』

お久しぶり、というのは昔に京子の目、を通じて教えをしてもらったのだ。

 正確には京子と夜を共にした事によって、京子の目の力が少し寅丸にも流れ、寅丸が強く願った事によって実現したのだが。

 母が十四、父が十八の時に白夜が産まれた為、(この世界では女子は十二から成人で子供は十四の時からつくってよいとされいる)あまり変わっていない、というのは寅丸の反応の事であり、昔はそこまで寅丸も大柄ではなかった。

「それで、恭介。どうかされたのですか?」

京子が自分の世界にいっている寅丸をさしのき、話を続けた。

「ん、ああ。ちょっと探し物をしにきただけだよ。そのついでに挨拶しにきただけだ」

恭介は軽い頭痛を感じていたが、何とかおさえて質問に答えた。

「そうですか。探し物、とは白夜の事ですね」

図星を突かれ恭介はドキッとしたが、何も隠すことでないため、頷いた。

「ああ、そうだ」

恭介が言うと立ち直ったのか寅丸が突然立って、奥の引き出しからあるものをとりだした。

「これは白夜の部屋の鍵だ。来るべき時が来たとき渡すよう言われている」

今がその時なのだろう、そう言うと恭介に鍵を渡した。

「じゃあ、言ってくる」

そう恭介が言って行こうとすると京子が止める。

「待って!最後に、気を付けてください。あの部屋には何か、いる」

京子がそう警告すると、恭介は大丈夫、といった顔で走っていった。


「寅丸さん。もし恭介に何かあったら、あなたも行ってください」

そう京子が言うと寅丸は大きく首をふり大丈夫、といった

「アイツは俺の子だ。ならどんな敵でも倒せる。俺も危うかったからな!」

そう寅丸が言うが京子は完全に安心できないでいた。


*

「ここが兄貴の部屋か」

-何年ぶりだろうか。

 恭介は京子の忠告を耳に残して、顔を引き締めて鍵を使い、ドアを開けた。

 ガチャという音と共にドアを開けるとそこは最後に来たときと同じで綺麗な部屋だった。

-恐らく、術かなんかで兄貴がいなくなったときと同じにしているんだろう。

 恭介が物を探すため神の力を使うと、先ほどまで無かった扉が出現した。

 恭介は一瞬戸惑ったが、すぐ扉を開けようとしたが扉はびくともしなかった。

-鍵が必要か。明らかに父さんからもらった鍵とは形状が違うから別の鍵があると思うが···

 そう恭介が考えていると、白夜の机の上にあっさりと鍵を見つけた。

 その鍵に触れると、耳鳴りが聞こえ、頭に直接言葉が入ってきた。

『お前もこの力を手にしたか、ならこの扉を開き、その先へ進め。お前の望む物があるかもしれない』

その声は聞き覚えのある声だった。

 間違える筈もなく、白夜の物だが恭介はお前も、という言葉が気になった。

-やっぱり兄貴も神の力を持っている。戦うことになれば、かすり傷程度じゃすみそうにないな。

 恭介はかわいた笑いをしたが、すぐ気を引き締め扉を開けた。

 扉は鍵を開けただけで自動的に開き、恭介を吸い込むように中にいれた。

「うわっ」

恭介は驚いて声をあげた。

 

扉の先は楽園のような場所であった。美しい緑に色とりどりの花、正に極楽浄土とはこの事を言うのだろう、と恭介は思ったが異変に気づいた。

 それはこちらを睨み付ける、怪物。一見猪のように思えるがその大きさは猪の何十倍で牙が刃のように鋭く、真っ赤に染まっていた。

 恐らく、数々の人々を貪り喰っていたのだろう。

 よく目を凝らせば怪物の後ろに天へと続く階段のようなものがあるため、怪物を倒さなければ、先へはいけないのだろう。

 恭介は身を屈め怪物が襲ってきてもいいような体勢をとった。

 すると、怪物が驚くべき早さで突進してきた。

 恭介は一瞬驚いたが、すぐ受け止めた。

 が、恭介はそのまま、おされた。怪物の力が強く恭介は苦虫を噛み潰したかのような顔をした。

 ちら、と後ろを見やるとそこに地は繋がっていなかった。

-やばいな。

 そう思った恭介は怪物を振り払い、一太刀浴びせた。が、怪物は思った以上に固くかすり傷を負わせるのが精一杯だった。怪物は恭介の攻撃をあまり気にせずに牙を思い切り振り上げた。

 恭介はかすっただけだったがかすった所から血が止まらなかった。おそらく怪物の攻撃は怪物を倒すまで血がとまらない呪いがかかっているのだろう。

-くっ

 怪物は強く、恭介は跳んで逃げながら、力をためていた。

-どうにか、この一撃で!

 恭介は刀を片手にクナイをもち怪物に向かって投げつけた。

 だがそれはやはり怪物には何の効果もなく、怪物が突進しようとしたが、怪物はそれができなかった。

 先ほどのクナイには強力な麻痺薬が塗られており、下手すれば死ぬレベルの麻痺薬だったのだが、怪物は数秒でときそうな勢いだったため、恭介はその数秒の隙をねらい、畳み掛けた。

-闇

 そうすると一面が闇に覆われ怪物のかすり傷に集まっていった。

 すると、そのかすり傷から血が溢れだして怪物は倒れそうになるが、なんとか持ちこたえた。

-隠密

 恭介の気配が突如なくなり、怪物は辺りを見回すが何処にもいなかった。

-暗殺 

 すると怪物の背中を恭介の刀が襲い先程とはちがい深く深くさしこまれた。

「◆◆◆◆◆◆◆」

怪物はこの世の物とは思えない叫びをあげながら暴れようとするが麻痺で暴れることができなかった。

-羅刹

 恭介の刀は怪物を食わんとばかりに怪物を襲ったが、その瞬間に怪物の麻痺がとけたことによって、怪物は逃げ出した。が、牙はなんとか折ることができた。

 怪物はすぐさま恭介の方をみやると、これで最後、と言わんばかりに身を屈め突進の準備をしていた。

 恭介も似たような構えをとると、物凄い勢いで怪物が突進してきた。

-月光龍

 恭介は予想してたため、その対処もはやかった。恭介が呟くと怪物はその刀に呑まれ、その姿を消した。

「倒した、か」

恭介はそう呟くと階段を上っていった。

 数百段くらい上った所にいたのは草食恐竜のような巨大な胴体と九つの首という見た目からしてヒュドラかと思われる怪物にでくわした。

-確かヒュドラは首を斬った切り口を燃やせばいい筈だが、最後の首は面倒だったな。

 恭介は疲れきった顔でヒュドラと対峙しようとした瞬間、ヒュドラが毒気を吐いてきたため、とっさに逃げた。

-闇

 恭介は闇で自らの口と鼻を覆った。

-火炎斬り

 恭介は自らの刀に炎をまといさせて、ヒュドラの九つのうち八つの首を切り落とした。ヒュドラの首は八つ燃え続けた。

-岩落とし

 恭介は術で巨大な山ほどある大岩をだして最後の首目掛けて落とした。

 するとヒュドラは動かなくなった。

 ここにもあった階段を上り、ついたところには、ある人物がいた。

「久しぶりだな。恭介」

そこにいたのは、白夜だった。

「兄貴、」

恭介は目を見開いた。

 それもそうだろう。別の場所にいるはずの兄がいたのだから。

「簡単なことだ。ここも扉で繋がっているんだよ」

恭介は白夜の言った言葉に納得した。

「それにしても、強くなったな。ここまで来たと言うことはあの二体を倒してきたのだろう?」

恭介は白夜の問いかけに頷いた。

「まぁ、いい。それじゃあ。お前が今一番気になっていることを教えてやろう」

恭介は白夜の言葉に耳を傾けた。

「俺が何故漆黒の騎士団と結託しているか、それはな近くに起きるであろう。大戦の為だよ」

白夜の言葉に恭介は疑問を抱いた。

「どういうことだ?」

大戦、なら歴史上では何回も起きているがその為だけにとは考えにくい、恭介はそう思ったのだ。

「それはな、魔界の進行だよ」

「魔界!?」

恭介は白夜の答えに思わず声を荒げてしまった。

「ああ、魔界さ。この世界の秩序を保つためにある三つの世界、一つは俺たちの住んでいる現界、もう一つは月読様たちが住んでいた天界、最後に魔物が無限に住んでいる魔界だ。そして、その魔界の統治者である者が俺たちの住んでいる現界に進行しようとしているんだ。」

その説明に恭介は息をのんだ。

 魔界、そう魔界が襲おうとしている。

「これは誰にも言うなよ。お前の友人にも、だ。なんせお前に伝えるのだって結構苦労したからな」

そう白夜が苦笑していった。

「ああ、分かってるよ」

恭介がそう冷や汗を浮かべながら、答えた。

「そうか、じゃあもう帰るといい」

そう白夜が言うと恭介はいつの間にか白夜の部屋へと戻っていた。

 恭介はそのまま部屋を出て京子と寅丸に帰ると伝えた。

 すると

「若、帰るのですか!でしたらその前にこの書rぷべっ」

恭介が帰ろうとしたとき久美がある書類とペンを持ちながら走ってきたが最後まで言葉を発する前にベテランの使用人に叩かれてしまったが。最後に別れの挨拶だけはしようとした。

「うぅー。ですがまた来てくださいね!私それまで貞操は守ってますから。ずっと待ってますからぁ!」

そう久美が叫ぶと恭介は苦笑しながら扉をあけて帰っていった。


京子は帰っていく我が子をみて杞憂だった、と思ったが、どこか腑に落ちない部分があった。


*

恭介が家に帰ると、すぐ陸奥にメールした。

 そうすると恭介は眠りに落ちた。


*

伊賀白夜は恭介に伝えていないことがあった。  

 いや伊賀白夜としては情報を伝えて、夜叉としては何も伝えなかった。


 伊賀白夜はもう伊賀白夜ではなく夜叉だ。


 だから恭介に情報を伝えたが、伊賀白夜として知っている情報しか伝えなかった。

 


伊賀白夜は伊賀白夜として話すとき白夜と称されますが、夜叉として話す時は夜叉と称されます。

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