創世記
鬼羅とバステノとの戦いが終わってから1日後。
恭介は勉学に追われていた。
「やべぇ、明日中間テストじゃねぇか。」
恭介が唸ってるとき一本の電話がきた。
「こんな時間に誰だ?」
『もしもし。』
「ん?ああ陸奥か、どうした。」
恭介が電話にでると陸奥だった。
『ああ、何時学園長に聞こうかと思ってな。』
「それならテスト終わってからで良いだろ。」
『そうだな、じゃあ明明後日でいいか?』
「おう、そうだな。」
『それじゃテスト頑張ろうな。』
「おう。」
というと電話がきれた。
「あ、テスト勉強・・・。」
恭介はそれを思いだし、テスト前日の夜を全てテスト勉強に捧げた。
*
テストが全て終わり、その日の放課後、カフェに皆で集まって作戦会議を始めた。
「それで明日にでも学園長に聞こうと思うんですが。」
陸奥がいうと狂歌が口を開いた。
『でも学園長室には一般生徒は入れないはずですけど・・・。』
「いや、会長や先生だったら入れる。でも、その人たちに話をつけるしかないよな。」
「ですが、出来るのでしょうか?」
皐月が言うと榛名も続けた。
「そうね、一般生徒は立ち入り禁止というからセキュリティは高いはずよ。」
「でも、こっちは漆黒の騎士団に狙われてるのですよ?もしかしたらもうそれを知っていて、入れるかもしれません。」
「それも一理あるな。」
皆が考え込んでると陸奥が口をひらいた。
「ここで悩んでても意味がない。一応ダメ元でいったほうがいいんじゃないか?」
「まぁ、そうだな。」
『確かにここで悩んでても何も始まりませんしね。』
「それじゃあ明日学園長室にいくという形でいいか?」
陸奥がそう言い皆の顔を見回して聞くと皆頷いた。
「では何時にしますか?」
「そうね、放課後でいいのではないかしら。」
「確かに、放課後ですと皆合流できますね。」
『それに、学園長と長く話しができますし。』
「じゃあ決まりだな。」
そういうと陸奥は紅茶を飲み干した。
「じゃあ今回はこんな感じで終わりか?」
「そうだな。」
『ええ、何も話す事もありませんからね。』
「それでは。」
そういうと皆帰っていった。
陸奥は一人店に残り、紅茶のカップを見つめ呟いた。
「明日、か。俺達はやっと漆黒の騎士団の秘密を知ることができるんだな。」
陸奥はそういいながら、紅茶をおかわりしてカフェからでた。
*
放課後、陸奥達が学園長室に行くため先生を探していると校内放送が流れた。
『一年普通科弥生陸奥、伊賀恭介、アーリー·フロスト·ゼロと一年魔法科Aクラス新藤狂歌、北条皐月、千葉榛名この六名は速やかに職員室前へ来なさい。』
そう校内放送がながれると陸奥は不思議に思いながら職員室前へと一緒にいた恭介、アーリーといった。
職員室前にいくともうついていたのか、狂歌と皐月、榛名がいた。
『あ、弥生さん!』
「新藤さん、もうついてたのですね。それで何かありましたか?」
陸奥が聞くと皐月が答えた。
「いいえ。それが私達三人はついたのですが中に入れさせてくれなくて。」
「北条さん、そうなんですか。」
そう話しをしているといきなり戸が開き冷花と響が出てきた。
「西城先生!」
『如月先生も。』
「話しは後だ。ついてこい。」
そういうと冷花と響は六人を連行するかのように何処かへと連れていった。
「ここは?」
陸奥達がついたのは学園のマップにはのっていなかった所だ。
「学園長室への道です。」
すると響が口をひらいた。
「ああ、そうだ。ここにくるには教師か、生徒会長しかこれない、案内される、と言うのであれば話しは別だがな。」
陸奥はそう聞くと驚愕のあまり大きな声をだしてしまった。
「本当ですか!」
「!そうだと言ってるだろ。」
冷花は少し吃驚したが、体勢を取り戻した。
『でもどうして学園長が?』
「なんでもお前らに用があるらしい。」
「へぇ、いく手間が省けたぜ。」
「学園長に用でもあったのですか?」
響が頭を傾げてると榛名が答えた。
「ええ、ちょっと聞きたいことがあったのよ。」
「ほう、そうか。それは丁度良かったな。」
そう話してると陸奥達の前に大きな扉がでた。
「ここが学園長室だ。くれぐれも失礼のないように。」
そう言うと冷花達は戻ろうとした。
「あ、あの学園長室には入らないんですか?」
「ええ、私達はここまでと言われてるので・・・。」
「そうなんですか。」
そう言うと二人はどこかへと消えていった。
『それじゃあ入りますか。』
六人は学園長室の扉を開けたするとそこには一人のお爺さんがいた。
「し、失礼します。」
陸奥が緊張のあまりがっちがっちになって入るとそのお爺さんは笑った。
「そう、かしこまらなくてもよい。儂が逆に気をつかってしまうわい。」
「そう、ですか。」
学園長が言うと陸奥は少し和らいでいった。
「そうじゃな。まず自己紹介をするとしよう。儂の名前はジェネシスじゃ。」
「え?」
『どういうことですか?』
陸奥たちは驚きのあまり聞き返した。
「なに、名字や名前が無いのはよくあることじゃろ。」
「でも、それは創世記のことではないんですか?」
皐月がそう聞くと学園長もといジェネシスは頷きこう言った。
「うむ、そうじゃ。儂はある時から・・・いや生まれた時からかもしれぬジェネシスという名に創世記になったのじゃ。お主らが勘づいてるようにな。」
「そうだったのか。でも創世記は宇宙の誕生の時から書かれていたのではないのか?」
恭介が聞くとジェネシスはそうじゃ、といった。
「儂はその時からこの世に生をうけたのじゃ、いや正確には儂という物、が生まれたというべきか。」
「では、その時から学園長はその姿だったのですか?」
「いいや、違う。この姿は儂が人の子として生を受けたときのものじゃ、最初は儂が創世記というのは知らんかった。だがそれから成長していき漆黒の騎士団なるものが現れた。そやつらを追い払いこの学園をたてた。その時に儂が創世記というのに気づいたのじゃ。そしてその時儂はジェネシスとなった。」
「そんなことが・・・。」
「ああ、そうじゃ。」
すると皐月がもうたまらないとばかりに口を開いた。
「あの、消された歴史について何か知りませんか?」
皐月はずっと聞きたかった事を聞いた。
「ふむ消された歴史、か。心当たりならあるがそれは儂が漆黒の騎士団と戦ってたときに奪われた物かもしれぬ。」
「そう、ですか。ではこれは知ってますか?暁の晩の時の魔物の襲来なのですが。」
「なるほど、北条君、それが奪われた情報かもしれぬ。」
「そうですか。」
皐月はいきなり名を呼ばれ吃驚したがそのあとの言葉で元気をなくした。
「だが情報を手に入れることは出来る。それに漆黒の騎士団との戦いだって援護だってするわい。もう二度とあんなことは起こさないためにもな。伊賀君、千葉君のためにもだ。」
二人はそう聞くと拳を握りしめた。
『それでその情報はどうやって手に入れるのですか?』
「それは、世界樹ユグドラシルの根元にある生命の泉ウルダルブルンヌルの水源にある洞窟に住んでるノルン三姉妹に聞くのじゃ。」
「そこは何処なんだ?」
恭介がきくとジェネシスは首を横にふった。
「場所なんて知らなくてよい。何故なら今からいくのじゃからな。」
「「「「「『え?』」」」」」
ジェネシスがそういうと皆驚いたように首をかしげた。
するとずっと持っていた杖を床に一叩きすると、場所がいきなりかわりそこには大きな樹と泉、洞窟があった。
「ここは?」
「世界樹ユグドラシルじゃ。」
陸奥がそう聞くとジェネシスがこたえた。
「それじゃあ。あの洞窟に住んでるというのか?ノルン三姉妹は。」
恭介が聞いたらジェネシスはここで待ってるよう手振りをした。
「ちょっとあいつらは変わっててな。人には敏感なんじゃ。だからここで待っててくれ。」
『わかりました。』
そう言うとジェネシスは洞窟の方へと歩いていった。
「だれか来る!」
「ええ。」
「また敵だったらどうしよう・・・」
「その時は追い返せばいいのよ。」
ノルン三姉妹・・・長女のウルド次女のヴェルダンディ三女のスクルドが警戒してると、洞窟の入り口からジェネシスが顔をだした。
「なんだ創世記のじいちゃんかよ。」
ウルドがそう強気で言うとジェネシスが返した。
「悪かったのう創世記のじいちゃんで。」
「うぅ。おねぇちゃん。駄目だよジェネシスさんだよ?」
「なんだよ。別にいいじゃん。」
「でもぉ。」
「なんか文句ある?」
ウルドがスクルドを威嚇していると、黙っていたヴェルダンディが口を開いた。
「ねぇさん。スクルドも客が来てるのです。やめてください。」
「はいぃ。」
「ち、わかったよ。」
ヴェルダンディがそう言うとウルドはスクルドに何もいわなくなった。
「はっはっはっは。いつ見てもお主らは面白いのう。」
「面白くなんかねぇよ。」
ジェネシスが大きく笑ってるとウルドがそれを否定した。
「それで、ジェネシス殿。どの様なご用件で?」
「ああ、そうじゃ。儂の学生を六人ここに案内しようと思ってな。」
「ジェネシス殿の学生というと・・・。」
「ああ、人が五人、エルフが一じゃよ。」
「これまた、どの様なご用件で。」
ジェネシスがいうとヴェルダンディは聞いた。
「ああ、漆黒の騎士団がまた現れてのう。そいつらの被害者でありそいつらを潰そうと思ってるものたちじゃ。それでお主たちの力を貸してほしい。」
ジェネシスがいうとヴェルダンディは目を細めた。
「ほう。」
「おいおい。そりゃ、まじかよ。それじゃあこの前現れた奴らは漆黒の騎士団だったのか?」
ウルドがそう言うとジェネシスはきき逃さなかった。
「何か心当たりでもあるのか?」
ジェネシスが聞くとウルドが答えた。
「ああ、この前いつも通り暮らしてたら謎の集団が現れてユグドラシルを切り落とそうとしたんだ。それは私たちで止めたんだが結構強くてよ。」
「ふむそうか。確かに時期が被ってるのう。」
「あ、あの。それでここに人が来るのですか?」
するとスクルドが弱気に言った。
「ん、まぁ。お主らがいいというのであればな。」
「私はいいですが。」
「ああ、私もいいぞ。」
二人はそう言いながらスクルドの方をみた。
「わ、私は二人がいいのならぃぃけどぉ。」
とスクルドは弱気にいった。
「いい、らしいです。」
それをヴェルダンディが代弁した。
「そうか、ではつれてくるわい。」
ジェネシスはそういうと杖を地面に一叩きすると、突如として六人が現れた。
「うお!」
『ここは?』
「ひっ!」
スクルドは六人がいきなり現れて失神しそうになったがなんとか持ちこたえた。
「ここは私たちの住処である洞窟です。まず自己紹介をしましょう。私は次女のヴェルダンディ。」
「私は長女のウルドだ。」
「わわわ、私はさささ三女ののす、すスクルドですぅ。」
三人思い思いに自己紹介をしすると、6人は状況を理解して陸奥達も自己紹介をする。
「俺は弥生陸奥です。」
『私は新藤狂歌です。』
「俺は伊賀恭介だ。」
「私は北条皐月と申します。」
「私は千葉榛名よ。」
「私はアーリー·フロスト·ゼロと申します。」
六人も思い思いに自己紹介をした。
「そうですか。ではそこへ座ってください。」
「はい。」
「うむ、儂からは漆黒の騎士団の事しか言っておらん。そのあとの事はお主らが話すのが筋と言うものであろう。」
「はい、わかりました。」
そう言い陸奥は今までの事を包み隠さず話した。
「成る程そんなことが。それではその暁の晩の消された歴史について知りたいのですね。」
ねぇさん、とヴェルダンディが続けるとウルドはめんどくさそうに言った。
「ああ、分かってるよ。お前らはそこのじいさんからなんか聞いてるか?」
とウルドが聞くと六人は首を傾げた。
「ち、私達の能力の事だよ。」
ウルドは舌打ちをしていった。
「ああ、それは何も聞いてませんが・・・。」
陸奥がそう言うとウルドはさもめんどくさそうにいった。
「そうかい、はぁ。私達はな運命の三姉妹とも言われてる。それがなぜだかわかるか?」
ウルドが聞くと六人は首を横にふった。
「それはな、私が過去を司って、」
「私が現在を、」
「わわわ、私がみみみみ、未来を司ってるからです。」
スクルドは少しテンパりながらもだんだんよ普通に喋るようになった。
「てことは・・・。」
「はい、私の姉がその消された歴史について分かるかも知れないということです。」
「本当ですか!」
陸奥たちはそう聞くと心臓が飛び跳ねるくらい喜んだ。
「まぁ、その為にお主らをここに連れてきたのだがな。」
「そう、だったんですか。」
『でも、それではどうしてその事を言わなかったのですか?』
「それは、自ら情報を手に入れるというの一種の勉強じゃ。儂はこれでも教師なんでな。」
まぁ生徒に授業をさせるというのは他の者たちに任せてるが、と続けジェネシスはおおらかに笑った。
「ああ、もうごちゃごちゃうるせぇな。もう始めるから静かにしとけ。」
ウルドはそう言うと目を閉じた。
「は、はい。」
陸奥たちはその雰囲気に呑まれ黙った。
-この世の中心地世界樹ユグドラシルよ我に与えられし過去を司る能力を今ここに発動せん!さぁここに眠りし歴史を甦れ!
そうウルドが唱えるとウルドの周りに光りの粒子が集まった。
「っ!成る程。おい北条とやら、お前の勘は当たったらしい。」
「え。」
ウルドが少し疲れた顔をして皐月を指差した。
「どういう事だ?」
恭介が聞くとウルドは頷いていった。
「ああ、その晩の歴史は確かに消されてた。漆黒の騎士団にな。」
「やはり、か。」
その言葉に陸奥は驚きではなく呆れを覚えた。
「お前驚かないのか?」
「ああ予想出来てたからな。」
「そうかそれじゃ今からその内容を話すからな。」
そう言うと皆ウルドに集中した。




