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異世界における革命軍の創り方  作者: 吉本ヒロ
3章 12歳、学園編
95/112

リヴィアの決意

すみません、すごい短いです。

前話投稿時に、次は二週間後くらいかな、とか思ってたのに一か月。時が経つのは早いですなあ・・・(遠い目)


あ、このまま次話投稿するのでご容赦を。




「なあシリル。……我が儘を言っていいか?」



ぽつりと、リヴィアが呟いた。


冬も最盛期になれば、室内を暖めてくれている暖炉の火もどこか弱々しく感じる。

覗く窓からは雪がしんしんと降っているが、うっすらと積もる程度でしかなく、故郷の冬には到底及ばない。



それでも、あと二ヶ月でこの学園を去る事になる身としては、あらゆる意味で春を待ち望んでいた。

普段の闊達さは形を潜めているが、それにしてもその姿はどこか儚いものを感じさせる。

それはまるで今積もっている雪のようで、消え行く己の運命を知っているみたいに思えた。



「……なに、かしら?」



だからこそ、シリルの返事がぎこちなくなったのも無理はないのかもしれない。

あの日、イザークとの関係がおかしくなってから早くも一年が経過しようとしていた。何もないように振舞いながらもそれとなく接触を絶ち、最低限の寒々しい会話が続くだけの日々だった。

それは言われるまでもなく本人達が一番理解しているだろうし、同時にそうせざるを得ないにしても、望んだ事でもある。



だからこそ、何も言えなかった。

エイグルの能天気な空気の読めない発言がなければ、それこそ空虚な雰囲気が浮き彫りになっていただろう。

そんなリヴィアがこんな形で言いだす事なら、きっとイザークの事なのだろう。

だからこそ、聞いてあげたいと同時に聞きたくないという想いもあった。



「卒業パーティーのドレスを選ぶのを手伝ってほしい。それと当日、どうしてもしておきたい事がある」

「……………………。そう言えば、そんな頼み事は初めてね。いつもは訓練の延長ばかりだったのに」



そんな気持ちのせいか、リヴィアへの答えは中途半端なもの。

否はない。

立場など抜きにしても、応えてあげたいという気持ちは今も一番強い。だけど、それでも、どうして傷つく必要がないのに傷つくと分かっていながら、それでも頑張れなどと言えるだろうか。やはりどうあっても、シリルはイザークの考えを肯定する事は出来ない。



「……そうだな。ああ、そうだった」



あの頃の事を、リヴィアも懐かしむ。

思わず懐かしんでしまうほど、遠くに来た。そして大きく変わった。

そんな日々を過ごした懐かしい故郷に帰れるというのに、未だ心は虚ろだった。



「シリル、私は逃げたくないのだ。卒業してしまえば顔を合わせる事も難しくなる。だけど弱い私は、未だにアイツと正面から顔を合わせる事も出来ないのだ。だから頼む。その勇気を、切っ掛けを、私にくれないか?」

「…………ズルイ、ズルイわ。そんな言い方されたら、私に断れるはずがないじゃない」



リヴィアは真っ直ぐにシリルの目を見て、真摯な瞳でそう告げる。

身分や立場を抜きにしても、それだけでたいていの者は聞いてあげたくなるお願い。

初対面の者にさえ信じ込ませるほどの誠実な面を出されるから、心底困るのだ。



「ねえ……失敗、するかもしれないわよ?」

「ああ、そうだな。きっと、そんな気がする……。きっとまだ、アイツの心に踏み込む事をアイツは許さないだろう。だが、逃げるだけでは何も掴めない。きっとここで何もしなければ、私はそれこそ一生後悔してしまう。一言で済む問題をここまで引き摺って来ただけで、既に逃げなのだ。……まったく、あの男のせいで私はどんどん弱くなってしまうなあ」



そんな事を、苦笑気味に語るリヴィアの余裕とも言えない何か。

自身の言う弱さを受け入れているその姿を見ればやはり、イザークのせいでここへ来る前とは大きく変わってしまったのだと嫌でも理解させられる。

失敗の可能性はあまりに大きく、そしてリヴィア自身もそれを悟っているというのにそれでも尚、行くと言うのならばもうシリルにはどうしようもない。



ならばもう、それでいい。


ただしあの男に忘れられない記憶を刻んでやる。


それだけが今のシリルに出来る最大の援護射撃で、あの男に出来る最大の嫌がらせで、それがリヴィアの背中を押す大きな一助になれと、ただ、そう思うのだ。





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