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異世界における革命軍の創り方  作者: 吉本ヒロ
3章 12歳、学園編
83/112

フィランデール大森林

お、お久しぶりです(震小声)



いや、ほんと投稿遅れて申し訳ないです。

日課だった執筆が一か月以上できなかったので、今頃になりました。

話せば長く?かどうかはともかくアレなので、まあ色々あったと思って暖かい目で見てやってください。

今は少しずつ以前のモチベ取り戻してますが、まだ完全には戻って来てませんので、最悪次話も一か月以上かかるかもしれませんが、遅くとも年内には遅れた分とは別にプラスa書こうとは思ってますので、ご容赦を。




王国領の西、大陸の西端。


そう呼ばれる場所に、太古の時代よりそれは君臨していた。



実際の所、そこが本当に西端なのかどうかは誰も知らない。ただ陸沿いに船で海を進むと海は姿を変えたように大いに荒れ、そのような場所に潜む魔物は船よりも巨大で荒々しく、どのような船であろうと沈没させてしまう魔の海域として恐れられた。ならば陸路で西の果てへ行くと言ってこの森に入った者は、誰一人として帰ってこなかったからこそ、そこはいつしかそう呼ばれるようになった。

若い木々が生い茂る生に満ち溢れた入口と違い、奥は樹海とも呼ぶべき老木の群生帯、そして一筋縄ではいかない生物の蠢く人外魔境だ。



そこから先は人類にとって未踏の地。

いついかなる時も侵入を拒む大自然であり、それを承知で智勇備えた勇者が挑むも、その挑戦をあざ笑うかの如く誰も帰ってこない。



この森について分かっているのは強力な魔物に加え多種多様な毒虫等、人が立ち入るべき環境ではないという事。森に対する造詣の深い、森の住人と呼ばれたエルフでさえ、決して奥へは決して立ち入ろうとしなかった。

フィランデール大森林。別名、双貌の森。

そう呼ばれる森に、人間による奴隷狩りの難を逃れたエルフ達が集まって出来た集落の中でも最大規模のものがある。



人間の目を逃れるために可能な限り奥へ入り込んだ結果、数十人掛かりでようやく倒せる魔物も時折出現するこの危険地帯が、しかしそここそが今のエルフやダークエルフにとって最後の砦であった。








「――いたぞ! エルフだ!!」



この身と仲間達は間違いなく危機にあった。

生きる宝石などと呼ばれるほど、今やエルフの価値は人間にとって高いらしい。そこに意志の疎通が可能な、言葉の通じる同じ生き物としての視点はない。今や、エルフとは単なる人間の私欲を満たすだけの存在で、言葉も心も通じることはないのだ。



接近を察知したのは、間違いなく自分達の方が早い。

森に住む事に特化した体は、たとえ相手が見えていなくてもどこにいるのか分かるように聴力が発達している。

接近に気付いたその瞬間、採れる選択肢は二つに一つ。即ち逃げるか、それとも隠れるか。決して戦うという選択肢がないわけではなかったが、相手はかなりの人数で、自分達三人だけで太刀打ち出来るはずもない。

不幸にも、索敵班の形成する警戒網を彼らは偶然にもくぐり抜け、狩猟班に属している自分達では戦闘に不安があり、人間は対エルフに特化した装備に身を固めているため、同数以上との戦闘は避けるべきだった。



この森に複数存在する、前線基地のような集落。



それは人間に発見される可能性を高めたとしても、しかしこの森に逃げ込む同胞たるエルフを少しでも早く救出したいがため、苦渋の末に出した決断。

そこに志願した自分達は、勿論リスクも織り込み済みだった。



――その、つもりだった。



ここは、自分達が拠点としている集落からそれほど離れていない。

段々と人間の捜索範囲が集落に近づいているというのは分かっていたが、それにしても侵攻速度が早過ぎる。甘い予測からなる油断、そしてどうするべきか迷ってしまったのもまた、仕方がなかった。



だが、そのツケは仕方がないで済まされるものではない。

その迷いのせいで隠れるのが数秒遅れ、半端な隠行はしかし目ざとい人間に見つかってしまったのだ。結果、集落のある、来た道を引き返すわけにもいかないために、無理をして逃亡には向かない道へ逃げるしかなく、エルフの長所である森の中を縦横無尽に動き回る立体機動を上手く発揮できず、足止めのために飛んで来る矢をかわすために相手の狙い通りだろうとわざわざ身を隠さねばならず、付かず離れずの追いかけっこをしてしまう羽目に陥った。



此方が放った矢は精彩を欠き、それも前面のほとんど全身を矢に強い皮鎧に身を固めた男達には大した効果も見込めない。



「逃がすんじゃねえぞ、囲え!!」



背後で怒声が響くのを、身が竦むような思いで聞く。

捕まったら最後、どんな末路になるのかは嫌というほど理解している。自決用の短剣は持ち歩いている。だが、最悪、自決した方が良いのは分かっていても、簡単に自決出来るなら誰も苦労しないだろう。



捕まった時の絶望と、まだ捕まっていないという希望。そのバランス、最適解は経験不足のエルフには分からない。


生きていたい。


そう、ただ真っ当に生きていたい。


ただそれだけの、そんな当たり前の渇望が、思わず握りしめた短剣の動きを鈍らせてしまったのも仕方のないことだった。

まだエルフの中でも若い自分達三人は、その手の覚悟を決めきれるほど大人ではなかったのだ。



「きゃっ!?」



だから一人目が投網に囚われてしまった時、思わず自決の事など頭から離れ、助けようと動いた事は運の尽きだったのかどうか――






それは後になって振り返り、ようやく分かるものだった。









まだどこか遠く、人間の耳では到底捉えられない距離から、しかし確かに誰かが争う音が木々の合間から聞こえてきたと同時、二人は駆け出した。

それに遅れて三人、護衛として付いて来た者もまた、見る者が思わず目を見張る見事な疾走を見せる。



先陣を切ったのは、エルフとダークエルフの二人。

ならばこそ、その組み合わせもさることながら、その疾走に遅れることなく付き従う人間の三人は異様だった。



そして彼らの前に姿を現す。



「どうやら、最初は貴方のようね」

「そのようじゃの」



そうルツィアの呟く声に、アーシェスも答える。

五人の視線の先には今まさに、奴隷狩りをしていた人間、計十人が三人のエルフを捕らえていた。

エルフ一人につき二人掛かりで押さえつけ、武装解除をした後でエルフを捕らえていた投網から慎重に外し、後ろ手に縛って拘束し直している最中だ。

気配を隠す事もなく突然姿を現した闖入者に、奴隷狩りの男達も捕らわれていたエルフ達も思わず注目する。



「「「…………ぁ」」」



そして誰もが言葉を失った。

今まで数えるほどながら自らエルフを捕獲したし、職業柄幾度となくエルフは見馴れている。だがそんな彼らをして、その圧倒的な美は思わずたじろいでしまうほどの衝撃だった。



木々の間から差し込む陽光がプラチナブロンドを宝石のように輝かせ、深く澄んだ、エメラルドを嵌めこんだような意志の強い瞳はまっすぐに自分達を見据える。今まで見たどのエルフよりも美しい容貌は、同族をして思わず声を失わせる。

だがエルフが声を失った理由は単にそれだけではない。

アーシェスが今は見掛けることのなくなったハイエルフだと気付いたからだ。そして、その横にいるのがダークエルフという事に対しても。

銀髪に褐色肌、紫水晶の瞳は、どれもダークエルフ特有のものだ。

だがしかし、洗練された立ち振舞いは熟練の戦士のようでもあり、そして貴族のように高貴さを感じさせる。

何より、その後ろにいるのは人間なのか? そんな疑問が、ここにいる誰の目にも明らかだった。

だがしかし、どれだけ異色であろうと、彼ら奴隷狩りの男達にとって大切なのは見目麗しいかどうか、ただその一点。



「へっ、テメエら、絶対に逃がすんじゃねえぞ!!」

「あったりめえよ!」



だからこそ、気を取り直した彼らの顔に浮かぶのは下卑た笑みのみ。

対峙するアーシェス達にも、何を考えているのかはそれだけで充分に理解出来る。



「まったく、売ればスゲエ金になるんだろうが、思わず楽しみたくなっちまう。売り払うのが惜しくなるぜ」



ましてそれをわざわざ口に出して視姦されようものなら、思わず怖気が走るのも仕方がない。彼ら奴隷狩りの中で獣欲と金銭欲がせめぎ合っているのはすぐに分かる。



「そのような薄汚い目で妾を見るな、反吐が出るのじゃ。それに生憎と、妾の総てはあの男のものじゃ。触れて良い男もまた、の」



森という事でいつもの大弓ではなく短弓ではあるが、かといって扱いなら充分に

熟知している。


矢を抜き、構えるとほとんど同時に番え、放つ。


それら一連の動作を一秒にも満たないほど一瞬でやってのけたアーシェスが、先制の矢を放った。



ここ数年、エルフだけを相手にしてきた彼ら奴隷狩り一味でさえ、今まで経験した事のない凄まじいまでの早撃ち。

意表を突かれるのも仕方がないだろう。ましてそれは、一度だけではない。

それも、嫌になるほど狙いは精確だった。



構造上、というより人間という種の性質上必ず確保しなければならない視界、そして鎧の継ぎ目を的確に射抜き、意表を突かれた二人目までは碌に盾を構える事も出来なかった。



それを合図に、皆が一斉に動き出す。

予想外が連続し、動揺している男達とは正反対にその動きは機敏。ルツィアは真っ直ぐにリーダー格の男へ走り寄り、残る三人はそれぞれ捕虜となっているエルフを人質にされないよう疾走し、木を足場にした三角跳びや、中にはそのまま真っ直ぐ上へと立ちふさがる敵をただ跳躍し、飛び越える。



各人指示もなく、しかし役割に忠実に動く完成された動き。

体だけでなく思考まで硬直している彼らに、対応する術はない。



「っ、ぅぉぉおおおおッ!?」



対し、奴隷狩りは対エルフに特化しているとはいえ、仮にも戦う事を業としている者。ここへ来るまでに魔物との戦闘も想定しているだけに、決して実力的に弱いというわけではない。



まして、数は倍。だというのに、あまりにも実力が違い過ぎた。

その疾走、身のこなし。それだけであまりに隔絶した実力を悟ってしまい、ほとんど反射的にルツィアに間合いを詰められた男は打ち合う事なく跳び退り、距離をとる。それが、男に出来た精一杯だった。



予想だにしない奇襲から立ち直った時には人質になりそうなエルフは奪い返され、取り押さえていた男達は呆気なく殺され、既に数は互角。そして、質は圧倒的に劣勢。

十秒にも満たない交戦で、誰もがそう悟るに充分過ぎた。



だからリーダーの指示が出る前に、皆で背を向けて逃げ出した。いっそ見事なまでの思い切りの良さだろう。

まず捕獲されていたエルフの救助に向かったからこそ、抑えつけていた男は殺され、迎え撃った男は生き残った。

不運にも、或いは皮肉にも、リーダー格の男だけはルツィアと対峙していたせいで背を向けることも出来やしない。背を向ければ殺されると悟り、だがこのままでも殺されると分かっていた。

だから今、仲間がいる状態でなんらかの変化を待ち望んでいたというのに、この体たらくには思わず舌打ちしてしまう。

だが、結果を見るならば何も変わらなかった。

全身を覆う鎧というのは存在するが、わざわざ移動を前提としたこの森の中では可能な限りの軽装が好まれていた。だから前面は覆っても、背面に覗くのは麻のシャツであり、防御力など皆無と言っても良い。



元来、彼らの装備、彼らの戦術は集団戦を前提としたものだ。

互いが互いの背面を庇い合う連携を前提としているのだから、こんな形で背中を見せるという事態がそもそも想定外。

そんな無防備な背中をアーシェスが見逃すはずもない。

アーシェスの矢がほとんど同時に三方向へ逃げようと背を向けた男達の背に突き立って倒れた体に追撃をかけた護衛の三人がトドメを刺し、ルツィアのレイピアもまた、ほとんど同時に対峙していた男の喉へ突き刺さった。








「これだから人間は……」



今でも生理的嫌悪が走るのか、倒した男達の死体を見下しながらぶつぶつと呟く。



「あら、それじゃ貴方に触れても良い男っていうのは一体誰の事かしら?」

「む……あ、あ奴は例外じゃ!」

「ま、それもそうね」



ついついからかってしまう心情的には妹にも似たこのハイエルフのお姫様だが、本当に、彼だけは例外だろう。

色々な意味で人間とは思えない。

そんな彼に救われたし、実際、このお姫様のように好意を抱くのも理解出来る。



「さて、ここからが本番よ。頑張って行きましょう」

「うむ、同胞の理解を得られないようで、あ奴の片腕になれるはずもない。まずはこの三人から理解を得ることからじゃ」



未だ捕らわれたことへのショックに震えているエルフ、解放されて放心状態のエルフ、困惑気味のエルフと状態は三者三様だが、当面の恐怖は去ったのだと理解している。だからこそ、そういう反応をするだけの余裕が生まれたのだから。

先の冗談でアーシェスのイラつきも収まったようだし、気を取り直してエルフとの会話を始める。

これからが本番なのだから、万全の状態で行ってもらわねば此方も困る。

ここで躓くようなら先はない。

彼の助力はないが、助言は得た。あとは自分達の力だけで、何が何でも達成せねばならない事案なのだから少々ならずとも緊張しないわけではないが、恐らくアーシェスはなんとかなるだろう。

ハイエルフというのはそれだけ強い影響力がある。返して自分はどうだ。そう考えた時、やはりただの一ダークエルフである以上、アーシェス以上に困難な事になるだろう。



だが、幸先の良い事に、先に出会ったのはエルフだ。エルフを説得し、その後でダークエルフを説得する方がまだマシで楽な展開になるだろうから、ルツィアは内心で密かに安堵の息を吐いた。


どうにも微妙なモチベで書いたせいか、ちゃんと書けてるかどうか。。。

変な部分あったら教えていただけると嬉しいです。

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