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異世界における革命軍の創り方  作者: 吉本ヒロ
3章 12歳、学園編
78/112

デート

・・・あ、あけましておめでとうございます(震小声)


いえ、ほんと投稿遅れて申し訳ない。

当初の予定では、年末年始に数話まとめて、こちらと新作の両方を投稿する予定だったのですが・・・

12月上旬にはいつでも投稿できたはずの新作の方で問題が出てきまして・・・


ああ、たしかにおもしろいけど、ここ、こうしたらもっと面白くなりそうじゃね? 新作の方でデビュー狙ってるんだろ? だったらちょっとでも質上げるほうが、直した方がよくね? との言葉を友人Aから頂戴しましたよチクショウクソ野郎めありがとう!

おかげで半分以上の5万時字分書き直しだよ!!


ええ、以上の経緯から、ストックが必要になりましたので、まとめての投稿はなしに、&そっちにかまかけてたらずいぶんと遅れてしまいました。

もう一話近日中に上げさせていただきますのでご容赦を。


本当に申し訳ないですm(_ _)m



まあそんな作者ですが、よろしければ本年もお付き合いのほど、よろしくお願いします。


 フィオナとのデートに対してリヴィアに頼んで妨害してもらう案や、ダブルデートと称してフォローに回れる人間を傍に配置する事も考えた。だが、結局その手段を使えばデートは中止、つまり、聞きたい事も聞けないという本末転倒な事態に陥る可能性も充分に考えられる。

 と言うより間違いなくそうするだろう。



 本当に偶然何かが起こったのならともかく、此方が仕組んだあからさまな妨害を見逃す程甘くはない。むしろ、そういった部分を予測したからこそ、頼み事はデート中に聞く、なんて事を言ったのだろうし。



 身一つでどう切り抜けられるかが試されている。



 そういった前提条件を明確にした上で、幾通りものプランを考え、用意周到準備万端に整えた。前日という事もあって本来ならあれこれと考えて不安になり、眠れなかっただろうが、万全を期するために睡眠薬を使用してまで早めに眠りに就いた。






 そして当日。



 朝食を終え、身だしなみを整え、デートプランを完全に叩きこんだ事を確認してから屋敷を出る。

 メインストリートは朝早くから活気に溢れ、様々な人が行き交っていた。

 一番早くに開く店はパンや食材等、主婦を相手にしたもの。自分のようにデートで回るような店は開店時間がやや遅いため、このくらいの時間が丁度良かった。



 そんな活気の合間を縫い、待ち合わせ場所に指定されていた広場の中央に佇む銅像の下に、先輩の姿はあった。



 赤を基調としたワンピースが、その紅い髪とマッチしていた。

 上質な生地だからこそ出せる独特の深み。一見シンプルに見えるが、細部にまで拘っている装飾。

 そして、いつもはしていない白い髪留めが、その鮮烈な紅色の髪に良く映える。


 だから当然、その美貌と派手な服が相まって道行く人は例外なくフィオナを見ながら通り過ぎていく。中には足を止め、見惚れている者さえいるほどだ。

 だが恐らくこの人ごみの中でただ一人、イザークだけが完全武装で戦場に立つ戦士を目にしたかのような錯覚を覚えた。




 柔和な笑みを湛えながらもその目は紛れもなく戦地に立つ戦士の顔であり、確実に標的を射止めんとする狩人の目でもある。

 だがしかし、それはもとより覚悟の上。

 気を引き締め直し、イザークは歩を進める。




「お待たせしました、先輩」

「…………んー、10点」

「いきなり辛口ですね……」



 尤も、ある程度は言いたい事も理解している。

 ただ、いつも通りを御所望なのか、デートという事で女の子扱いの方がいいのか分からなかったから、とりあえずは普段通りにしたに過ぎない。

 それに、今日はご機嫌を損ねるわけにもいかないのだ。毒を食らわば皿まで。いつもとは違う自分を演じる事にしよう。



「失礼、フィオナさん。お待たせして申し訳ないです。お詫びに、今日の代金は全部僕が持たせて頂きます」



 一応指定時刻の十分前には着いたのだから、幾ら待たせたとはいえ、フィオナもその点に関してはそれほど強くは言えない。

 そして何より、早く着きすぎればそれだけデートが長引くという中間のグレーゾーンを意識しての事だ。



「うーん……、悪くはないのよ? でもなんか鳥肌立っちゃいそうにもなったから、やっぱりキミはいつも通りでいいわ。あ、でも名前を呼ぶ時はフィオナって呼び捨てでね。ただし親しみを込めて」

「なんですかそれ。人がせっかく頑張ったというのに……。それに年上に対する敬称は必要でしょう。まあでも、今日くらいはそれで構いませんよ。今日くらいはね」

「あらそう。でもキミがよければ、明日以降もそのままで構わないわよ」

「あはは、それはないのでご安心を」

「やっぱり腹立つわね、キミ」



 笑顔のままカチンときたとばかりに、少々ムキになる。

 が、それも一瞬。すぐに切り替えた。



「ま、それはそうと、今日はどこへ行くのかしら? 一応私の方でプランは考えてあるのだけど、それでいいかしら?」

「デートは男がエスコートするものでしょう? 僕もこの日の為にデートプランを練ってきましたので、今日一日リードしますよ」



 と言う方便の下、計画に沿って、無難な場所を、最後まで主導権を握ったまま終えるための言葉。

 無論プランは無数に用意し、臨機応変に行動出来るだけの候補もストックしてある。



「でもお姉さんがリードするのもアリだと思うの」

「年下が背伸びしているんです。男としてカッコつけさせてくれるのもいい女の条件だと思いますけど?」

「あら、それって中々の殺し文句ね。思わずオーケーしちゃいたくなっちゃった。いいわ、それじゃ今日はキミにリードしてもらおうかしら」



 戦いの趨勢を決定付ける程に重要な前哨戦に勝利した余裕からか、フィオナからはいつも以上の余裕が感じられる。

 だから、此方の要望を呑んだのだ。



 この程度は所詮前座。最後に笑うのは自分だと確信しているから、どう足掻くか高みから俯瞰しているにすぎない。

 そんな強大な敵に勝つ弱者の戦法など、油断している隙を突くより他にない事をイザークは充分に理解していた。








 とは言え、娯楽の少ないこの世界でのデートコースなど知れている。

 結局のところ、デートなどというものは時代どころか世界も問わず、娯楽に頼らずとも傍にいて楽しいかどうかが最大の鍵で、会話で楽しませるのが一番なのだ。

 無論気心の知れた仲ならば傍にいるだけで満足という場合もあるが、少なくともこの相手はそういう類の人間ではない。



 だから大通りでやっている大道芸を冷やかしながらゆっくりと歩き、気になる店があれば立ち寄って冷やかしながら時間を潰す。

 時折かさばらない小物を買う事はあるが、特別高級な品を買うことはなかった。



 それどころか、それなり程度の値段の物を買う際に褒められるくらいだ。



「そういう細かいお金もちゃんと持ってきて、待たせない所も好感度高いわね」

「このくらいはマナーのようなものでしょう」

「それが、金貨ばかり持ち歩いて釣銭受け取るのに苦労するって事も割とあるらしいのよね。中には見栄を張って従者も連れずに出た挙げ句、貴族である自分が金貨以外持ち歩けるか、なんて言って、おつりを受け取らないのよ。そのくせ、普段は使わないようなお店を色々見て回って、ただ冷やかすのもプライドが邪魔して無理だから、一々買い物してお金が足りなくなった人もいるらしいわよ? まあ私もデートは初めてだから、あくまで聞いた話だけど」

「それはまた……」



 もはや何も言えない程に愚かしい。

 無論全ての貴族がそうというわけではないのだが、それは大なり小なり、ほとんどの貴族が持ち合わせている性分なのだ。

 その無駄に肥大化した自尊心は付け入る隙になるとはいえ、もはや別種の生物なのではと思えてしまうのも仕方がないだろう。



 フィオナはある意味予想通りと言うべきか、貴族らしい振る舞いは好んでいなかった。

 戦場にも出たことのある人間だ。

 畏まった裕福な層の使うレストランよりも、庶民の食堂や立ち食いできるファストフードのような類のものを好んで食べた。



 今だけは駆け引きなど忘れ、年相応の少女のようにデートを楽しんでる風にさえ見える。

 尤も、この人がそんなことをするはずなどないだろうが。

 油断は禁物ということは、この人と知り合って何度も学ばされたのだ。

 決して気を抜くつもりはない。



「あ、キミ、こぼれそうよ?」



 言われて気づくが、焼いた羊肉を薄く焼いた小麦で巻いている、クレープに似た軽食を食べている時に、肉汁やタレが零れそうになっていた。

 ずっとフィオナに気を払っていたせいだ。



「ふふ、意外とかわいいのね?」

「誰が……」



思わず毒づいた俺に対し、仕方のない弟を見るような、この人にしては珍しくもやさしい目に、一度だけ心臓が高鳴った。





 どうにもデートらしくないそんな調子のままに昼のデートを終え、自宅に帰った。

 尤も、出た時には一人だったのが、帰った時には二人になってしまったのはこれいかに。

 まあ拍子抜けするほどデートがあっさり終わろうと、夕食もフィオナとの歓談を楽しめようと、それら全て前菜のようなものなのだ。



 フィオナが泊まる客室に案内し、そこで用意されていた紅茶を片手に最後の歓談を始める。

 本番が近付いている事は、二人とも否応なく感じていた。

 だからだろう。

 フィオナもまた、最後の懸念事項を終わらせにきたのだ。



「さて、それじゃそろそろ、キミのお願いも聞いておこうかしら。だって、心残りを抱えたままじゃこれから先、キミも集中出来ないでしょ?」



 と、フィオナが余裕を保てたのはこの時までだった。



「さて、これから先に何が起きるのかは知らないですが、まあそういう事ならお願いします。あなたの叔父、ロザン公爵に関してフィオナが知り得る限り、あらゆる情報を知りたい。そして可能なら、本人との面会もです」

「…………」



 その瞬間、あのフィオナでさえ一瞬表情を強張らせ、逡巡し、沈黙した。



「……一応、というより念の為に忠告はしておいてあげるけど、叔父様と戦うような事態は絶対に回避した方が身のためよ?」

「ご忠告はありがとうございます。ですが、言われるまでもない。正直言って、あらゆる手段、あらゆる状況を想定してもあの人を殺す方法だけは僕には思いつけません」

「そうよね、それは私も同じ。ま、キミはその辺り読み違えて戦いを挑むような子じゃない事くらいは分かっているから、そういう意味での心配はしないわ」



 だけど、ならどうしてそんな事を聞くのか分からないと、フィオナはそう続ける。



「…………キミは何を企んでいるのかしら? 叔父様と会う事で何を得ようとしているの?」

「企みなどと聞こえの悪い。何の事だか分かりませんが、強いて言うなら英雄を知りたいという事くらいです。プロパガンダのように作られた英雄ではなく、正真正銘その高みに立つ人間の強さに興味がある」

「…………。はあ、まあいいわ。」



 探るような視線は一瞬。

 結局何を考えているのか分からないとフィオナは諦めたように溜め息をついて、一度視線を逸らした。



「実際、叔父様の事が気になる気持ちは分かるもの。他の誰でもなく、私が唯一と認めたキミならね。だからそうね……。叔父様なら、早ければ数カ月後、遅くとも半年後には王都に来るはずよ。その時でよければ、面会の口利きくらいなら私がしてあげるわ」

「分かりました。そちらはその方向でお願いします」



 これで一つの目途がついた。

 これだけでもフィオナとデートしただけの価値はあった。



「それで、叔父様の事だけど、本人にとって英雄とは呪いよ。だからあまり口にしない事をお勧めするわ。でないときっと、露骨ではなくとも内心で多少の機嫌を損ねてしまうから――」







「さて、そろそろ夜も深くなる事だし、メインディッシュといこうかしら……」

「何の事ですか?」



 そしてロザンの事を数十分程話し続けた後でフィオナが言う。

 チラリと時計に視線をやれば、確かに良い時間と言えるだろう。

 もう少しで日付が変わる時であり、客間に招いてからもう数時間経つ。



「言ったでしょう? デートは一日中。つまり、恋人であるキミと今は何をしても問題にならないわ」

「一夜の関係で売れるような安い体に興味はないですよ」

「ふふっ、相変わらずナマイキね。でも、そんな言葉を聞くことが出来るのも今日が最後かと思うと感慨深いわ」



 フィオナはその言葉を最後に自ら席を立ち、ベッドに腰掛けて服の胸元を緩め、誘うような視線をやる。

 まるでイザークが逃げの一手を選ばず、自らやってくると確信しているかのような自信に溢れた行動。



 しかし事実、イザークはそうせざるをえない。

 だからイザークも席を立ち、フィオナの傍へ寄る。そしてあと一歩の距離まで近寄って、そこで止まる。



「さあ、いらっしゃい。私の虜にしてあげる」

「さて、残念ながらそれはお断りします」

「……へえ、ここまできて、キミはそんなつまらない足搔きをするのかしら?」

「まさか、そんな事はしませんよ」

「だったら…………あ、あら?」



 一瞬とはいえフラつく体。フィオナは頭に手をやり、直後にキッと睨みつける。が、その視線にいつもの迫力はない。



「っ、まさかキミ……」



 零れたのは、普段の様子とはかけ離れた弱々しい声。

 彼女自身、獲物をあと一歩の所まで追い詰めた事で油断したのだろう。現在の状況への配慮を怠り、未来へばかり視線をやっていたから足元がおろそかになった。

 睡眠薬が入っている物を深く追求せずに飲んだのが、そもそもの間違い。



 あの紅茶に睡眠薬が入っており、それを間違いなく自分も飲んだ。

 即効性はないが無味無臭で深い眠りに誘う、眠っている隣でどれだけ大騒ぎしようと目を覚まさない、薬効確かな睡眠薬だ。



「先輩自身が……言ったでしょう。無駄な、足搔きを……する人間じゃないと……」



 酩酊しているかのようにフラつく体、すぐにでも閉じてしまいそうになる視線。だが、まだ最後の一線を越えるわけにはいかない。



「ぼくの……勝ちです……」



 此方が眠ろうと、相手も眠る。

 つまり心から安心して、安眠出来るという事だ。



「やって……くれたわね……」

「それでは先輩……おやすみなさい」



 勝利、そして敗北を確信した瞬間、一気に襲ってきた眠気に任せて両者同時にベッドに倒れ込んだ。



デートシーンあれこれ考えてちゃんと書こうと思ったら、わりと間延びする割にはしっくりこなかったので削除させていただきました。

べ、べべ別に、実際のデートなんて経験したことないからうまく書けなかったわけじゃないですよ?


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