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異世界における革命軍の創り方  作者: 吉本ヒロ
3章 12歳、学園編
75/112

毒婦の遺伝4

はい、またタイトル詐欺ですね。

まあ理由は前回の通り、引き続きと言うことです。

安心してください、次話からはちゃんと先輩出てきます。むしろお姉さまも出てきてサンドイッチです。



て言うか今更気づいたんですが、この小説連載開始してからとっくに一年過ぎちゃいましたね。はい、ほんと今更ですが。

ええ、歩きもしない亀な気もしますが、きっと周囲が早すぎてそう見えるだけです。相対性理論です。

まあようやくある程度の書き溜めもできてきたので、ほんのちょっとはペース上げるかもですが。(あくまでほんのちょっとです。新作等の準備もあるため、ペースの方はそれほど期待はしないでください)






「ほら、行くぞ!」

「引っ張らなくても分かってるって」



 力強く手を引かれるがままに、そんな後ろ姿を眺める。

 まるで本人の機嫌の良さを表現するかのように、一歩一歩ポニーテールが軽やかに跳ねる。

 行く店は色気がないと思いつつも、そっちの方がリヴィアらしいからつい苦笑してしまう。



 そんな調子で歩を進めているといつしか人ごみが形成され、王都の活気に呑まれる形でイザークとリヴィアも溶け込んだ。

 それは同時に、イザークの後を追う者もそうだという事だ。


 間違いなく追跡者はいる。


 さすがにこの人ごみの中で気配は見失ってしまったが、屋敷を出た直後は間違いなく背後に複数人の視線を感じていたのだ。露骨に振り返って探るわけにはいかなかったが、今もいるはず。ならばやはり、当初の予定通り今日はもう大人しくしておくより他にないだろう。



 リヴィアと二人連れだって行ったのは、貴族よりも高位の冒険者達に人気が高い、王都の中でも質の高い武器を置いている店だ。


 店内は清掃が行き届いており、今すぐにカフェにでも転向出来そうなほどに小奇麗だった。武器は種類毎にまとめられ、槍の一本一本、剣の一振り一振りが小さい順に並べられ、きちんと分別されて立て掛けてある。

 確かに高品質だろう。今イザークが帯剣しているものと変わりはないほどだ。

だけどこれで高いと言われるほどなのだから、一般兵の使う武器と言うのはもっと粗末な鋳造品という事でもある。既にドワーフが鍛え上げた品を何度も目にしているため、その差は大きいのが見て取れる。



 現在の革命軍の一兵士、まあ将来的には中核を担う精鋭ではあるが、彼らが使う武器ですら、今イザークが帯剣しているものより僅かながら勝るほどなのだ。


 無論将来的に数が増えればその限りではないが、それでも装備品に手を抜くつもりはない。

 と、思考を巡らせている間にもリヴィアは真剣な面持ちで剣の一本一本を見て、手に取り、そして振るう。



 僅かに長さ等が違う剣を何度か手に取り、しかしやはり納得がいかないのか、カウンターにいる女性店員へと話しかける。



「すまないが、オーダーメイドの剣を一振り作ってほしい」

「はい、いらっしゃいませ。どのような剣を御所望でしょうか?」

「あそこに立てかけてある右から三番目の剣の幅をもう少し狭くした細身の、軽くした片手剣を頼みたい」



 そう言って指差した物は、先程手に取っていた剣の内の一振りだ。

 この手の武器屋では、オーダーメイドものもそう珍しい事ではない。

 少々割高になろうと自らの命を託す武器に一切の妥協をしないのは、戦士としては当然だからだ。



「畏まりました。それと、代金の方は前払いになりますがよろしいですか?」

「ああ……あ、急だったから今はそれほど持ち合わせが――」

「これで大丈夫ですか?」



 剣は決して安くない。まして鍛造のオーダーメイドで、素材にもこだわっているのが商品からも見て取れる。


 そこらの散歩に出掛ける程度の状態でそれほどの金額を持ち合わせるなど、普通はないだろう。



 だが時として貴族の身分を隠して行動しなければならないイザークとしては、平時は勿論緊急時にも効力を発揮し、初対面の人間ともほぼ確実にお友達になれる金貨を常に十枚は持ち歩くようにしていた。


 持つべき物は友だと言う人間もいるくらいだ。

 その友達を作るための道具なら、持ち歩く事に拒否感などあるはずもない。



 その中から、売り場の剣の代金より高めに見積もって金貨3枚を支払う。



「ええ、大丈夫ですよ」

「だがこれは――」



 と、店員は納得したものの、案の定お固い騎士様は納得しなかったようだ。

 だが、それも予想通り。



「実際、前の剣がダメになった理由は俺のせいでもある。盾の代金はリヴィア持ちで丁度いいだろ。だからこのくらいはさせてくれ」

「…………」



 だから納得させるための論理を数パターンは用意していたが、リヴィアはなぜかそこで少し驚いたような表情を浮かべる。



「ああ、わかった。それでは頼む」



 そしてその表情を柔和な笑みに変え、ごねる事もなくあっさりと納得した。

 正直、こんな形で借りを作りたがらないイメージを持っていたから、あっさりと納得した事に此方としても驚きを覚えたのだが、すんなりいって良かったと思うべきだろうか。



 その間にも、店員が店の奥から鍛冶師を呼び出し、リヴィアの手のサイズ等を図りながら要望の詳細を詰める。

 そんな姿を、イザークはただ一歩引いた位置からずっと眺めていた。







「助かった」

「金の事ならいいよ」

「そうじゃないさ」



 武器屋を出てすぐ、リヴィアが告げた言葉に対する返答は、的を外してしまったようだ。

 柔らかい笑みを浮かべながら違うと首を振るリヴィアは、なぜか大人びた余裕を感じさせる。



 少なくともあの事件の前ならば、代金を払うという言葉を意地になっても拒んだだろう。仮に受けたとして、今もまだ金銭の事を引き摺るはずだ。



 だけど、今は違う。



 あの事件の後で俺を認めたという事が、或いは他の何かが少女を大きく成長させた。



「それも感謝はしている。だが、正直こんな時に武器を新調する羽目になるとは思ってなかったから、しばらくは予備の量産品を使う事になると思っていたのだ。お前のお陰で、思った以上に早く新調する事が出来た」

「だから、それは俺にも半分は責任があるからだ。別に礼を言う必要はない」

「そうだな」



 だからだろうか。

 いつもと違うリヴィアに押されるように、そんなリヴィアとは逆に少々意固地になってしまったイザークに対し、リヴィアはそれに関しては分かっているはずなのに何も言わない。



 どうにもリヴィアに精神的余裕があるように見え、いつもと逆になったような立場にどうにも背中が痒くなるような変な気持ちを感じてしまう。

 だけど上手く言葉に出来ないが、それも決して嫌なものではない。

 とは言え、こういう精神的にもどかしい状況をいつまでも味わっていたくもなかったので、どうにか空気を変えようとちょうど通りがかった喫茶店に立ち寄る事にした。



 どの道、半日は時間を潰さなければならないのだ。

 リヴィアは武器屋での買い物を思った以上に早く終わらせたために、他にこれといってやる事がないからとも言える。



 注文をとりに来たウェイトレスに手早く軽食と紅茶二人分を注文し、運ばれてきた紅茶をゆっくり飲んで気を落ち着ける。

 そして軽食を摘まみながら、リヴィアといつも通りの会話を始めた――。






「――そしてエイグルがゴブリンの群れに突撃してな。シリルがいたから良かったものの、エイグルは昔からああなんだ」

「なるほど、やっぱアイツ昔からバカなんだな」

「……ま、まあそう、だな」



 と、あの二人との思い出話をリヴィアが喋るのを聞き役に徹しながら、時折相槌を打つ。

 はっきりとバカと言った事に対し、やや歯切れは悪いもののそこはリヴィアも否定しきれていない。

 尤も、イザークからすればそこはリヴィアも五十歩百歩だが、言わぬが花だろう。



 元々余計な情報を喋らないよう、そして僅かでも情報を得られるよう聞き役に回る事は多いが、リヴィアとの会話はそこを意識せずとも良かったし、そもそもそういう裏を考えなくて良い。




「なんかいいな」



「……………………は?」




 なんと言うか分かりやす過ぎて助かると言うか、真っ直ぐすぎて謀略なんて言葉が必要ない相手だから、変に気負わなくても良いのだ。あの人と会った後は、とくにそれが強く感じられる。



「いや、なんかリヴィアと一緒にいると落ち着くなあって」

「ふあ!?」



 奇声をあげ、まるで錆び付いた機械を連想させるような、今にもぎぎぎという音が聞こえてきそうなほどあまりにもぎこちない動きで首を左右に回す。

 その仕草はまるで、ドッキリの看板を持った人間が近くにいないのかを確認するかのよう。



 そして正面を向いたその表情は嬉しいような恥ずかしいような怒っているような、どうとでも読み取れるからこそ分からない、何とも形容し難い表情をしていた。



「な、なっ、お、お前は突然何を言ってるんだ!?」

「ん? ああ、別にそのままの意味で、変な意味はないぞ?」

「あ、当たり前だ! だ、だが先の物言いはまるで……その……め、めおと……みたいじゃないか……」



 尻すぼみになっていたから後半はあまり聞き取れなかったが、この反応……まさか?


 いやでもこういうのって予想を外すと凄い恥ずかしいしなあ。そんなつもりはなくとも自意識過剰みたいでどうにもな。…………とは言え、相手はリヴィアだ。

 ちょっと探るくらいならどうとでも誤魔化しが利くはず……。


 とにかく、物は試しだ。




「なんだ、もしかしてリヴィア、俺の事が好きなのか? な――」



「なっ、あ、〰〰〰〰っ! ばっ、ばかな事言うな、ばか! どうして私がお前の事など好いている事になるのだばか! まったくもう、ばかじゃないのか本当に……このばか者め」



「――なんちゃ、って……」



 冗談半分の言葉に、まるで図星を突かれたかのような慌てようを見せ、早口に言いきったせいで、冗談めかした言葉が尻すぼみに消えて行く。

 たしかにリヴィアから一定の信頼を得たとは思っていたが、まだ不審な点を残さざるを得なかったから、そこがしこりとなって燻っているはず。だからリヴィアの性格上、恐らくそこまでいくとは思えないが……。



 いや、まあ実際、たとえその気持ちはなくとも突然こんな事言い出されれば焦る気持ちもないわけじゃない……はず。まして堅物のリヴィアだ。きっとそっち方面の冗談に慣れていないから照れたようなもの。気のせい、或いは勘違いというやつだろう。そうだ、さすがにそんな事あるはずがない。



 と言うかもしそれが判明したとして、そもそも俺はどうするつもりだったのだろうか。実際にそう聞かれると、答えに窮してしまうのもまた事実。



「いや、ただの冗談だろ。そんなムキになるなよ」

「む、ムキになんてなってない! お前が突然変なこと言いだすから、何をばかな事をと怒っているのだ。そうだ、全部お前が悪い!」

「ああ、そうだな。俺が悪いよ」



 これ以上考えると泥沼にはまってしまいそうで、全部なかった事にするのが賢明だろう。

 こんな調子で一日お茶をしたお陰か、先輩のせいで色々と考えすぎてオーバーヒート気味の頭をいい意味でリラックス出来た。

 明日からの日々を思えば胃によろしくないが、今日は進展らしい進展こそないものの、休日らしい休日が過ごせたのだから。


これで子供デート編は終了。お次?かどうかはともかく、数話先にはお待ちかね大人デート編です。

年上女性にリードされ、夜中二人で一つのベッドを使って一夜を過ごす、なんてピーな展開もあるかも・・・

(注)この小説は健全なものです。

お腹真っ黒な人物や人殺しシーンや何やら出てきますが、きっと健全です。


・・・健全って、なんだろうね。。。


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