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異世界における革命軍の創り方  作者: 吉本ヒロ
3章 12歳、学園編
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帰還

本日二話目です。


 とうとうこの日がやってきた。

 今ここにいる十人全員が平静を装いながらも僅かながら緊張に身を固くしている。



 あれから二年。



 その間、どうしたってイザークのあの笑顔がチラついて、この日が近づく程に安眠なんて到底できやしなかった。


 二年ぶりに見る故郷は確かにあの日よりも廃れた雰囲気ではあったが、それでも大きな変化はなく懐かしさを感じる。

 自分達がいない間にみんなどれだけ成長したのか。

 そんな楽しみもあるし、わくわくしているのも本当だ。

 だが、一歩一歩近づくごとに、期待と同じくらいに不安も高まっていく。


 警戒しながら拠点へと歩を進め、時に罠がないかと立ち止まり、そして時には一気に駆け抜ける。


 だが、そんな警戒をあざ笑うかのように何事もなく懐かしい古巣へと到着した。

 顔ぶれは当然ながら変わっておらず、しかしその顔には二年分の時が刻まれている。


 訓練場にいる者たちもまた、此方に気付いてざわめくのを感じる。


 そしてその中心にはあの悪魔(イザーク)の姿が……。


 今すぐにでも駆け寄りたい気持ちはある。だが、ここで油断はしない。イザークの事だ。下手をすれば彼らに奇襲をかけさせることくらいやってのけそうだった。

近づいてくる彼らに悟られない程度に身構える。


 家族と言っても差支えない彼らを疑う事には心が痛むが、その背後で笑うイザークがいる限りはそうも言ってられないのだ。


「エミリオにーちゃん、お帰りー」

「待ってたぜ、エミリオ。王都はどうだった?」

「お、おう。ただいま」


 普通だ。


 年下の子供たちや同年代の者達が次々と集まってきて声を掛けてくるが、その姿があまりにも普通すぎて拍子抜けしてしまった。


「エミリオ、長旅で疲れただろう。今日はもう訓練も終わりにしよう。みんなと話すなり、休んだり好きにしてくれ」


 そんな中、数十人が詰めかけているにも関わらず、その中に決して埋もれることなく声を掛けてきたのはイザーク。

 だが、その言葉にもまた意表を突かれて、本当にイザークかと一瞬疑ってしまった。


「い、いや、俺達なら大丈夫だ。ああ、それほど疲れてはないな」

「まあ鍛えているし、それほどヤワじゃあないか。それじゃあ早速、それぞれ個別に成果を聞きたい。一人ずつ順番に俺の所へ来てくれ」


 早速背を向けて、イザークは屋内へと歩き去る。

 誰から行くかとエミリオが目配せするが、その視線は全員がエミリオを向いていた。


 え、オレ? と言わんばかりに自分を指差したエミリオは、全員が一斉に頷くのを見て項垂れながら、イザークの待つ室内へと足を向けた。




「それで、成果って言うか、お前と別れた後の事を話せばいいのか?」

「まあそれに近いかな。とりあえずは大まかに何があったかという流れと、後は自己評価、それにエミリオが抱く他の奴に対する評価を聞きたい」

「りょーかい。ええと、まずは――」




 そのまま一人ずつがイザークの元へと言って話をしたが、特に変わった様子はない。

 本当に何もないかと思い始めたとき、最後の一人と一緒に出てきたイザークがここにいる十人に告げる。


「さて、それじゃ今度こそ本当に今日くらいはぐっすり眠っても大丈夫だぞ。明日に向けて英気を養ってくれ」


 そう言ったイザークの表情は、あの時と同じ腹黒い笑み。

 何か企んでいることは確実で、当然ながらここにいる十人全員が、浅い眠りで何度も夜中に目が覚めたのは言うまでもない。




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