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異世界における革命軍の創り方  作者: 吉本ヒロ
2章 10歳、王都へ行く
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未来へ向けて

タイトルが難産だった。

なんか終わりっぽくて今でもまだ納得できていない。。。


短めの話が続くため、一時間後にもう一話投稿します。

「明日、俺は領地に帰る。ここの指揮は今まで通りエミリオに任せる。二年後から実戦に投入するからそのつもりでいてくれ。その時にまた指示を出すから、俺が学園に入学する一ヶ月前までには帰ってきてほしい。だから今の内に訓練をしっかり積んでおくように」


「そうか……分かった」


 エミリオ達が住んでいる拠点へ行き、ここにいる全員に明日帰る事を伝えた。

 とは言え、大した反応はない。

 最初から一、二ヶ月滞在すれば帰るという事を知っているからだ。

 エミリオは決意も覚悟もとっくに済んでいると言わんばかりに、真剣な表情で頷く。


「レイスさんも、エミリオ達の事をよろしくお願いします」

「任せとけよ、坊主。それで、当然ながら手当ては……」

「ええ、今まで通り支給しますよ」

「おっしゃ、それなら文句はない」


 我が意を得たりとばかりに手を叩き、軽快に口笛を一吹き。

 この様子なら問題はないだろう。


「あら、それは残念ね。でも当然、私も連れて行ってくれるのよね?」


 が、ターニャはそうでもないようだ。

 どうせその辺りも分かっているのにからかってくる辺り、やはり性質が悪い。


「ターニャさんはここでエミリオ達の教育をお願いします。どうせ二年後には王都へ来るので、僅かですよ」


 そうは言ったものの、学園生活を送るから、どの道顔を合わせる事はそうそうないが。


「二年もよ。まだまだ女心に関する修行が足りないわね。その辺に関して、明日の朝まで一晩中二人っきりでレッスンでもする?」


 そう言って、ターニャが流し目を送ってくる。

 狙ってやっていると言う事くらいは分かっているのに、未だに慣れないせいで一瞬ドキッと心臓が高鳴った。


「女心のなんたるかは妾が教えるので結構じゃ」


 アーシェスがとられまいとするかのように腕をとり、その胸に強く抱く。


「子供心じゃなくて?」


 その瞬間、ピキッ、と空気がひび割れるような音が聞こえた気がした。

 腕をとられているから、アーシェスの体が硬直したのが良く分かる。


「ふ、ふふふ……」

「アーシェス落ちつけ。ターニャさん相手に一々ムキになっても勝てないぞ」

「む……うむ。そうじゃの」


 ふう、と一息つき、辛うじて落ち着きを取り戻す。


「やっぱり子供ね」


「もう許さんのじゃー!!」


 コロコロと表情や態度が変わる様を揶揄したのだろう。

 その言葉を受けて、アーシェスはターニャに飛びかかろうとする所を、すんでの所で止める。


「いいから落ちつけ。ターニャさんも、これ以上からかわないでください」

「あら、ごめんなさい。とても可愛らしかったからついね」


 反省の素振りは一切見せずとも、今はこれ以上からかう様子もないようだ。


「アーシェス、安心しろ。そもそも、俺がターニャさんに靡くことがあると思っているのか?」

「む……いや、じゃがの……、相手はその…………大きいし……」


 ちらちらと視線を向けた先あるのは、二つの山。

 腕を組んでそこを強調する辺り、ターニャも容赦がない。


「外見以上に中身を大事にする。それとも、俺とお前の仲はその程度なのか?」

「そんなはずはないのじゃ!」

「だったら、そういうことだ」

「む……うむ!」


 ひとまず、アーシェスはこれで大丈夫だろう。


「あと、エミリオ達は全員大通りにいる大道芸人から手品を習っておいてくれ。俺が直接交渉する時間がなかったからあれだが、この王都で手品をしない事の約束と金を払えば問題ないと思う。余興程度に覚えておきたいとでも言えばいいだろう」

「……手品?」


「ああ、それに関しては、覚えておいて損はないと思うからな」

「分かった。お金はいつも通り、ベルトランさんからもらっておけばいいな?」

「ああ。それと最後にエミリオ達に重要な事を言っておく。いつ狙われるか、探られるか分からない。常に警戒を怠るな。そして、警戒している事を悟られないようにしろ、己以外の誰も信じるな。仲間を信じろ。しかし最後の一欠片は疑え」


「お前……」


 自分で言っておいて矛盾だということくらいは分かっているし、エミリオ達の中枢に根差す考えを否定している事も分かっている。


 だが、これが全てだと思ってもいるのだ。


 仲間を信じなければやっていけない。だが同時に、常に全てを疑うくらいの心構えでなければ生きていけないとも。


 それに、身近にはターニャという信用は出来ない存在がいる。


 授業の一環で、エミリオ達から情報を引きだす可能性もあるのだ。それらを考慮し、知られたら致命的な情報は与えていないが、それでもターニャなら、エミリオ達が握っている情報だけでも、かなり真相に近づくことが出来るだろう。


「誰かを人質にとられ、仕方なく味方を騙していたら? 他の誰かが任務で失敗し、情報が漏れていたら? 他にも、考えられる可能性ならいくらでもある。だからこそ、常に最悪の状況を考えておけ」


「……分かった」


 まだ不満な顔はしているものの、一応は納得したのだろう。

 尤も、万が一そのような事態になった時の為のサインは実戦の前には決めておくつもりだが。


 これはささやかな警告だ。

 まだ本番が始まったわけではないから油断しているだろうけど。


 いつか、本番である実戦の前に身をもって思い知ってもらうとしよう。そして臆病なまでの慎重さと予防策の大切さについて身をもって味わってもらわなければならない。


「まぁ、言うべき事はこんなものか……」


 伝え忘れがないか脳内でチェックし、漏れがないか確認する。

 しばらく別れるとあって少々名残惜しいが、王都での活動はこんなものだろう。


「それじゃ、元気でな」


「お前、なんでこのタイミングでそんな黒い笑顔なんだ!?」

「ああ、気のせいだ。ただ単に、お前達が返って来た時の歓迎パーティーをどうするか考えていてな」

「嫌な予感しかしねぇ!?」

「ちゃんと景品も用意しておくから楽しみにしておけよ」


 再会した時の事を楽しみにして、背後で騒ぐエミリオ達としばしの別れを告げた。





本当はあと一話予定していたんですが、二章はこれで終わりです。

次は二年後の三章に突入です。

読者の皆様はこれからもよろしくお願いします。

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