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異世界における革命軍の創り方  作者: 吉本ヒロ
1章 5歳、革命決意
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出会い

どうにも短すぎる気がしたので、もう一話だけ投稿させてもらいます^^;

「ッつ!」



 頬を掠めながら、鈍い鉄の塊が顔の横を通り過ぎる。

 それは単に、見切ったからではなくギリギリで回避が間に合ったというだけだ。此方の精一杯を嘲笑うかのように、剣を振るう相手は余裕の笑みを浮かべている。


「こんなものですか?」


「っ、なめるなッ!!」


 偶然とはいえ、ギリギリの回避が成功したのだ。つまり、それは此方がその分有利になったと言う事。たとえ相手が未だに力を温存していようと、生じた隙を、この僅かなチャンスを生かさない手はない。

 子供の力で扱える武器など知れている。

 一般的な西洋剣や日本刀に憧れはあるが、それに振り回されるようでは素手の方がマシだ。だから刃渡り20センチ程のナイフを選んだし、それ以上となると未だ満足に扱いきれない。



 大人と子供の勝負。

 単純な体格も、扱う武器のリーチも圧倒的な差がある。持久力も技術も経験も、あらゆるものが負けているだろう。そんな、此方の間合いの外から一方的に剣を振るう相手が初めて見せた隙を逃さず、一気に距離を詰める。


「あぁぁああアアああ!!」


 此方の間合いに捉えた瞬間、相手が引いて戻した剣が再度振るわれる。

 相手の武器は片手でも両手でも扱える、一般的な長さのロングソード。それを、此方が間合いを詰めた事でやや窮屈そうに、しかし顔を目掛けて再び鋭い刺突を放つ。


 もらった。


 頭は急所である半面、他の場所を狙われるよりも回避が容易い。

 剣先だけに集中すれば、この距離とて何とかかわせる。頭を傾けて避け、この隙に短剣を相手に突きかけて終わりだ。そう確信した直後、地面から抉るような衝撃が腹部を襲う。


「っが……はっ!?」



 静止した時間。

 

 宙に浮く体。

 

全てがスローモーションに感じる時間の中で唯一早く動く視界が捉えたのは、自分の体にのめり込んでいる爪先。



 回避することだけに囚われ、剣先ばかりに集中し、足元が御留守になった結果だった。

 数メートル先まで飛ばされ、更に地面を数メートル程転がった所でようやく止まる。


「あ……かはっ!」


 込み上げてくる嘔吐感を必死で抑え、片膝立ちになりながらも辛うじて離さなかったナイフを構えて急ぎ迎撃態勢を整える。


「相変わらず、五歳児とは思えませんな。さすがはイザーク様」


 だが、とりあえずはここで終わりと、腹を蹴られてえずくイザークに茶化しながらも感心した風に告げた。


 スタートが早く、意識も大人だったから出来るだけだ。何も出来ない赤ちゃんの頃から、暇つぶしの代わりにずっと剣を振るう者達の姿を見続けてきたのだ。動きを知り、対処法を知り、イメージは完璧だった。あとはそれを体に馴染ませる訓練だけを積んできた。窓から見える光景がそれだけだったから。

 だからこの程度の成果もないと逆にへこむところだ。


「……クレイこそ五歳児に容赦なく蹴りをかますあたり、大の大人で品行方正な騎士様とは思えないな」


 清廉潔白だとか正々堂々のイメージが強いから、この足くせの悪さはいただけない。もっとも、今日びそんな騎士は絶滅危惧種だし、当然目の前に立つこの騎士もそんな理想とは程遠い。



 今できる唯一の反撃としてジト目で見るも、肩をすくめ、ささやかな反撃をあっさりと受け流す。

 とはいえこれが実戦では役に立つのだから、もしやめると言ってもやめさせるつもりはないのだが。

 ボサボサ頭にくすんだ茶髪。うだつのあがらない中年サラリーマンのような風采をしながら、その腕は他の騎士と比べてもかなり上位にあたる。加えて型を重視した騎士と違い、その教えは実戦的だった。



 勝つため、生き残るために使えるものはなんでも使う、全力を尽くすそのスタイルが気にいったのだ。他の騎士たちには蔑まれているが、殺し合いの場でキレイだの汚いだのはないだろう。

 その事実が、今までにかなりの経験を積んできたのが窺い知れる。


「いやはや、少しだけ驚きましたよ。どれだけ上手くかわせても掠らせるくらいのつもりだったんですが、完璧にかわされるとなると次はもう少し厳しくする必要がありそうですなぁ。しかし常に相手の全体を視界に収めるのが基本だと言ったはずですけどね。それに、多少の痛みがないと訓練にならないと言ったのはイザーク様でしょう?」


「……言ってみただけだろ。その辺りに関して一番遠慮がないお前を指南役に選んだんだ。他の奴らは身分を恐れて、言っても聞かないからな」



 一応その辺りはキチンと説明したつもりなのだが、それでもコイツ以外は皆、腫れものを扱うように接してくる。かすり傷ひとつつけてしまう事で文字通り首が飛ぶ事を心配しているのであろうが、その理屈でいけば目の前に佇む不良騎士の首は、軽く3桁を超える程に飛ばされているだろう。


 尤も、殺しても死にそうにないし、いざとなれば逃げるんだろうけど。


「…………さて、休憩は終わり。クレイ、もう一本だ」


 なんとか回復した体を、再び酷使するために立ち上がる。


「おっと、残念ですがここまでのようですな」


 が、クレイが顎をしゃくって示した先にいたのは、肩口まで伸ばした明るい茶髪を片側だけ横で括っている、美人というよりは可愛らしい雰囲気のメイド、ヘレナが立っていた。


「イザーク様、ライル様がお呼びです。剣術の稽古はそこまでにして、ついて来ていただけますか?」

「あ、ええと……あと一回だけ。最後だから見逃してくれないかな……?」

「探しだすまでの時間を考えれば、既にその1回分以上の時間がかかっております。申し訳ございませんが、これ以上ライル様をお待たせするわけにはまいりません」

「今日のパーティーの主役なんだから、我慢したらどうです?」

「お前は楽がしたいだけだろ」

「そういう面があることも否定しませんけどね」



 悪びれる風もなく言っているが、どうせクレイのことだからそれが百二十パーセントを占めるだろう。

 大の大人が二人掛かりで、こんな純粋な子供を捕まえて言いくるめようとは実に大人げない。



「ああもう、分かった分かった。ただし、今日は諦めるけど、明日こそ負かしてやるから覚悟しとけ」

「楽しみにしておきます。……ああ、それと。5歳の誕生日、おめでとうございます」

「……なんだ、まあ、あれだ。その……ありがとう」



 それでもまあ、精神的には大人なのだから、素直に引っかかってあげるけど。

決して照れ隠しとかじゃないんだから、ヘレナとかまるで全部分かってます、みたいに微笑むなよな。




 この世界に転生してから今日で5年が経つ。

 中世のヨーロッパに近い文明だと判断するまでに、そう長い時間はかからなかった。



 始めは日本に暮らしていたころの知識を活かし、発明家や商売人として名を残すことなども考えた。だがそれは違うのだ。多少の試行錯誤は伴うだろうが、ゼロから何かを開発するわけではないのだから、きっと熱中できない。

 それじゃあダメだ。もっと本気になれるものを可能な限り早い段階で決め、ゼロから始めて頂点に立つ。

 前世では特に部活をしていたわけではないが、運動は得意な方だった。そして何より、我ながら単純であると自覚しているとは言え憧れでもあったのだ。


 だから剣を選んだ。


 この世界で生きるために、危険な事に首を突っ込む。一見矛盾しているだろうが、貴族の息子という立場を活かして、可能な限り安全で、完璧に近い環境で取り組める。

 素直に貴族位を継ぐつもりはないが、今はまだか弱い子供なのだ。

 この立場なら衣食住に加えて教師役もついてくるので、それまで利用できる物は全部利用していくつもりだ。





 この屋敷の中でも一際豪華な扉をヘレナがノックし、クレイといる時や二人っきりの時とは違い事務的に、淡々と告げる。


「ヘレナです。イザーク様をお連れしました」

「入れ」


 それに対して、ただ一言。

 その横柄な口調にその言葉。それだけで部屋の主の傲慢な性格が窺える。


「失礼します」


 ヘレナを部屋の外に置き去りにし、他人行儀ともとれる程に礼儀正しく頭を下げる。


 ヘレナを始めとし、この家の若い女性陣はなるべくこの部屋の主である父親と関わろうとしない。偶々その時に限って父親がその気になれば、犯される可能性があり、その挙句に子供が出来れば捨てられるからだ。

 当然ながら使用人である彼女たちに拒否権などなく、ただされるがままに身を委ねる他ないし、ここの給金が良いのも事実。

 誰しもお金に余裕がないのだから、事実上他に選択肢などなかった。


 顔を上げた視線の先、意匠をこらした椅子に座っているのは暴食を重ね、醜い豚のように肥え太ったしまりのない体躯をした父親、ライルだった。

 随分と温い人生を送って来たのだろう。



 当然ながら今までに何度も顔を合わせてきたが、未だに慣れることもなく、存在そのものに虫唾が走る。

 貴族に生まれたというだけで、本来生きる価値もないような人間が幅を利かせる世界。

 中世における平民の生活がいかに悲惨であったかは想像に難くない。そして今のこの身は何の力もない子供で、この豚に不気味がられて万が一にも追い出されたのなら生きていく事さえ出来なくなるだろう。


「近くに寄れ」


「はい、父上」


 だから、顔も合わせたくないような相手であろうと父を慕う子供らしく、唯々諾々と従う他なかった。


「うむ、大きくなったな」


 汗というより油に近い液が渇いたようなベトベトの手で、慣れ慣れしく触れてくるのに対し、嫌悪感を抱きながらそれでも笑みを浮かべる。


「さて、お前をここに来させたのには理由があってな。古来よりの習わしで安定し始めた5歳と成人した15歳の際には盛大に祝うようになっておる。その際に貴族としての常識を学ぶ一環で、今からお前専用の奴隷を一人買いに行こうと思っておる。どの貴族も、貧乏な田舎貴族を除けば5歳になった記念に与えられるものだ。今の内に飼い慣らし方を覚えておけ」


「奴隷……ですか?」


 田舎貴族の部分で、バカにしたような鼻で笑うが、そんなことはどうでもいい。

 強くなる事だけを考えて生きてきたからそれほど興味はなかったが、それでもまったく興味がないというわけでもなかった。



 さわりの部分とはいえ、最低限の歴史や常識はもうすでに勉強していた。その中にエルフやドワーフ、獣人といった、地球上では空想上でしかなかった生き物とも出会えるのだ。

 会ってみたいし話してみたいと思う心もたしかにあった。


「分かりました。すぐに外出のために準備いたしますので少しだけお待ちください」


 だから心なしか早足になったのは、この豚の前から早く立ち去りたいという思いだけでもないだろう。


 ドアの前まで辿り着いた時、背中から声がかけられる。


「それと、供の者をつけることが前提だが、これからは自由にこの家の外へ出ても構わない」


「本当ですか!」


「ああ、好きにしろ。平民の惨めな暮らしを眺めるというのも、たまにはいいものだ」


 一々嫌味な言い回しはいつものことなので気にならない。


 ただ待ち望んでいた時がきたからか、精神的には大人だというのに子供みたいな反応を返してしまった。無理に抑えて不気味がられるのもよくないから悪い事ではないだろうが、精神的には大人のせいか、どうにも恥ずかしく思ってしまう。



 部屋を出た後の早足はすぐにかけ足に変わって、結果、着替えなどもしたのだが父親より早く馬車についてしまった。





 自宅から程近い、上品さを感じさせる奇麗な建物が並ぶ地区の一角で馬車が停止した。

 その邸宅はかなりの大きさで、広さだけならそこらの学校程はあるだろう。

 四頭立ての馬車がすれ違っても尚余裕があるほどの大きな正門の前に、十人以上の人間がわざわざ出迎えのために待っていた。

 そのすぐ近くで馬車を止め、降りるなりこの家の主と思わしき人物が口を開く。


「ようこそおいでくださいました、ライル様。そしてお初にお目にかかります、イザーク様。お話は全て、ライル様から聞かせていただいております。この度は5歳のお誕生日、おめでとうございます。私、奴隷商人のザイカスと申します。以後、お見知りおきを」


「ああ、イザーク=フォン=ジナードだ。こちらこそよろしく頼む」



 父に挨拶をした後で、ザイカスと名乗る商人が此方へと顔を向ける。

 父親と並ぶ姿は、兄弟かと見間違うほどにそっくりな肥え太った豚そのものだった。


「それで、例の物は準備出来ているだろうな?」

「ええ、それは勿論。ライル様でさえ驚かれるような、最高級の品をご用意させていただきました。ご子息様もきっと気に入ると思いますよ。ささ、このような場所で立ち話もなんですから、中へどうぞ」


 そう言って、建物の中へと促す。

 上品な建物や調度品に似合う、静かな空間。

 だというのに、その空間そのものが何かを押し込めて強引に作られたかのような、言い様のない違和感を覚えさせる、一種独特の空気を放っていた。



 自宅から出た事がないから比較対象がないせいかもしれないが、恐らくこの勘はあたっているだろう。絶望や諦観、そして強い欲望。静けさの中にあるのは、強い負の念だ。


 

 そんな中を移動して行き着いた扉の先、満を持すかのような、焦らすように、しかし不快にならない程度にゆっくりと開けられた扉の先に、何よりも輝く宝石があった。


「…………!」

「ほう、これは……」

「どうです。すばらしいでしょう? 希少なハイエルフの子供でございます。恐らくですが現状、子供はこの子以外には存在しませんので、王や公爵クラスの方々でさえ所持していないかと」



 目が肥えているはずの父でさえ感心するほどの少女を前に、思わず息を呑んだ。

背丈は未だ自分とそう変わらない少女の身でありながら、筆舌につくし難い程の美少女だったからだ。



 透き通るような白磁の肌に、プラチナブロンドが窓から差し込む陽光を反射してキラキラと輝いている。

 見馴れないはずの、初めて見る長く、尖った耳も違和感を覚えさせるどころか彼女の美をより際立たせる。

 この世界のことなんてよく知らないけど、彼女は間違いなく、この世の全てに勝る唯一無二の宝石だということが分かる。



 だが、吸い込まれそうになるほどの、一点の穢れもないエメラルドの瞳。その瞳だけが輝きを失って、まるで人形のような無機質さを感じさせる。

 そのガラス細工のような儚さが芸術的な美へと昇華しながら、生きているなら誰からも感じられるはずの生を感じさせないが故に違和感を抱かせる。

 エルフを奴隷とする人間の気持ちが良く分かった。そして同時に、奴隷とされる者達の気持もほんの僅かだけ、解ったような気がした。


「ああ、これほどなら文句のつけようもないな。それに、どうやら息子も気に入ったようだ。よいぞ、買おう」


 言葉を失っていた姿をそう思ったのだろう。

 だが、今はこの豚と一々話す気分にはなれないから何か言うつもりもない。


「ありがとうございます。それでは早速ですが、今から契約魔法の行使を開始したいと思います。イザーク様、今から此方の契約書に血の情報をお願いします」

「……契約書?」

「ええ、奴隷が主に手を出さないための、そして奴隷の所有権を得るための契約魔法です。全て準備は此方で整えさせていただいたので、後は血を垂らして頂ければ血の情報を元に偽造や複製防止のための処置になります。少々痛みますがご容赦願います」


 差し出された契約書は、透けるほどに薄らと、二重の円の中に幾何学模様の、魔法陣のようなものが描かれた紙に契約内容――『主に対して絶対服従』を始めとする、人にとって一方的に都合の良い条件が書き連ねられた紙だった。



 既に力ずくで血を流し、契約させられているであろうエルフの少女にとって拒否権などなかったのだろう。


「イザーク様?」

「いや、なんでもない」


 差し出されたナイフの刃に、そっと親指を沿うようにしてゆっくりと押しつける。

 良いナイフなのだろう。一切の抵抗をみせることなくあっさりと指先は傷つき、血が流れ出たのを確認して刃から指を離す。

 そしてゆっくりと、しかし強く印を押した。


「えっ、わ!」


 その瞬間、魔法陣が青白く光り輝く。直後に契約書が一瞬で燃え上がり、そして燃え尽きた。

 手を離す暇もない程の速さだったのだが、不思議と熱は感じなかった。


「驚かれましたか? 契約を完了すると、他の人間に干渉される事のないように一瞬で燃え尽きるものなのです」

「これって解除は出来ないのか?」

「いえ、双方の合意があるか主従どちらかが死んだ場合にのみ、契約は自然と解除されます」

「その人間と契約している事は、見て分かるものなのか?」

「ええ、奴隷の背中に奴隷紋と呼ばれる紋章が刻まれるので、それを見ればすぐに分かります。また、奴隷と言うからには相応の見た目ですので……」

「そうか、手間をとらせたな」

「いえいえ、この程度の事であればいつでもお聞きください」


 亜人種か人間でも明らかに貧乏な服装をし、近くに上等そうな身形をした人間がいれば、それだけですぐに奴隷と分かるのだろう。


「ええと、それで……はじめまして?」

「……………………」


 初対面なのは間違いないのだが、なんと声をかけていいのかわからずに半端な対応になってしまう。が、聞こえていないはずもないのだが、まるで聞こえていないとでもいうかのように完全に無視。


「イザーク様、言う事を聞かない時は命令すれば従いますよ。また、基本的な命令を除いて最初はまっさらな状態ですが、主人が命令すればその命令に関して、主人が訂正するまで今後逆らえなくなります。主人の好みに仕立て上げるのが、奴隷を持つことの醍醐味でもありますから」

「……ああ、分かった」


 含むように笑うザイカスに返事はしたものの、どうにも命令というのが苦手なのだ。

 まして、奴隷契約で相手の意思に関係なく命令するというのは尚更抵抗がある。


「まあ時間はまだまだあるから急ぎませんよ」

「いやはや、イザーク様はお心の広いお方ですな」

「貴族というものは下々に寛容でなければならないですから」

「これはこれは、是非私共のような者にも、そのご寛容なお心でお付き合いいただければと思います。まこと、ライル様はよい後継ぎをお持ちだ。将来が楽しみですな」


 お互いが心にも思ってないことの応酬があまりくだらなくても、顔を見るのが嫌な相手でも、会話の相手をしなければならないのだから苦痛でしかない。

 さっさと邪魔が入らない状態でハイエルフの少女と会話してみたいのだが、親の手前もあり、貴族らしくいなければならないだろう。


「父様、ありがとうございます。色々と話してみたいのですぐに帰りましょう。行くぞ、ついてこい」

「っ!」


 ハイエルフの少女は一瞬だけ悔しそうに顔を歪めるも、何も言わない。

 が、意思に反して体が動くのだろう。出口に向かおうとする俺の後ろをついてくる。


「ああ、しっかり飼いならしておけよ」

「はい」

「それではまた、何か良い奴隷が入った時は連絡しろ」

「いつもありがとうございます。その時が来たら勿論、最優先でお話を通させて頂きますので、今後ともご贔屓に」



 頭を下げたザイカスを背に、行きとは一人増えた状態で馬車へと乗り込んだ。



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