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異世界における革命軍の創り方  作者: 吉本ヒロ
4章 15歳、王国内乱編
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開戦2

私事になるのですが、現在転職活動中です。

転職先が決まっても新しい職場に慣れるまでの間、なかなか執筆活動の時間が確保出来るか怪しい感じになりそうなので、しばらくなろうにアクセス出来ないかもしれません。

数話ほど予約投稿しておりますが、その後の更新はまた空く可能性があります。

ご容赦ください。


また、カクヨムにアップしていた新作をこちらにもアップします。

細かい部分の修正版で、カクヨムでは更新を止めていますが、それ以降の話もアップします。

こちらは数ヶ月ほどは毎日更新(予約投稿済み)しますので、よろしければ読んでやってください。

ジャンルとしてはアドベンチャーですがなろうにはないので、適当にやりました。

インディジョーンズやルパンのラノベ板?的な感じの作品に興味があれば是非。




多くの者がこの瞬間を待ち構えていた。

物資を蓄え、兵を募り、調練をする。

半信半疑ながら、各々がその時に備えていた。

しかし、それが明日なのか、それとも半年後なのか。刻一刻と近づいていることを感じつつも、しかし明確な時がわからなかった。



だが、そんな状況下でスタートの抜きん出た者達がいた。



ヒューゲル公爵は王都以西を瞬く間に掌握。自らが軍勢を率い、既に10万に達しようかという軍勢は更に勢力を増しつつ東へ向けて侵攻を開始する。



王国北部は比較的混乱が少ない。


教国に対しての備えという名目で、ジェラルド侯爵を中心に多くは中立を表明していたため、この事態を静観する者が多かった。小領主が近隣の領主を攻める機会を与えないため、北部では第一王子、第二王子派に属している者でさえ、互いが迂闊に手が出せないためだ。



東部は一触即発の空気が充満している中での小康状態を保っていた。


第一王子派であり、東部に領土を持つメディン侯爵。

内乱に乗じようと虎視眈々と機を伺っていた帝国。

そして、これに挟まれたロザン公爵。



ロザンがどちらかへ動けば残った方が攻める。動かなければその場に釘付けにしてヒューゲル公爵の到着を待つ。


帝国側に内通し、協力体制を整えたメディン侯爵の描いた通りに事は運ぶ。

帝国と協力しながら、しかしどのタイミングで出し抜いて国境の街、パーシーモークを取るか。

ヒューゲル公爵の部隊が到着する前に陥落させたいが、帝国単独でそれが出来れば苦労はしないだろう。少なくとも、ロザンさえいなくなればなんとでもなるという考えの下での軍事行動。

そんな思惑の中で、小競り合いが続く。

そして南部は――








ヴェルナス暗殺未遂事件から貴族間での緊張が高まる一方、物価はウナギ登りに上昇し、平民が貧困にあえぎ、貴族ですら借金ばかりが増えて行く。


無理やり農民や商人から徴発し、反感を買う者も少なくない。


そんな状況において、イザークの領地は比較的まともな方だった。



一連の流れがフィオナの筋書き通りであり、既に充分な物資を蓄えていたため影響は少ない。

この時のために新たな政策は中断し、人員にも余裕が出ていたため戦争の準備にも対応出来た。

更には徴兵や摘発を行う事なく、物資を領外に出す事を禁じ、領内だけで経済を回すように徹底した事等も大きかったためだ。



ただ、ここまでは事前準備の差で優位に立てているが、本当の勝負はこれからだった。

いつ戦争に移行するか分からない。そんな小康状態を保ちながらその時を待ちに待って、遂にその時は来た。


エシュトルのヴェルナス討伐令発布。


王都から発せられたその知らせを受け取った領地の者から、順次近隣の領地へ戦争を開始する。

フィオナからの情報に加え、伝書鳩で情報の裏付けを行い、迅速に動いた。



弱い領地は同じ陣営の者同士で徒党を組み、新たな領地を獲得せんと敵対陣営に攻め込み、或いはその攻め込んだ隙をついてまた別の者が手薄な領地に攻め込む。

そんな混戦状態の中、周囲を纏めるのはやはり強大な力を持つ高位貴族だった。

元々、高位貴族の周辺に領地を持つ者は恩恵を受けるために従ってきた歴史を持つ。

故に領地を接する者やそれに近い者をまとめ上げるのは高位貴族の役目であり、周囲の者達を巻き込むのも彼らだった。



そしてその勢力は3つに分かれる。



様子見を決め込む中立派。


しかしこれは、どの陣営も戦力を欲しがっているために、辺境かつ弱小の領地を持つ領主が多い。あとは高位貴族等、無理やり引き入れるのが難しいほどの力を持つ者しか許されない派閥であり、合わせて全体の一割程度だ。



次に第一王子派の陣営。



これは戦力で言えばおよそ15万を越す兵力を誇る。ヒューゲル公爵を筆頭に、その右腕と目されるリンクバル侯爵といった名高き名家が幾つも名を連ねる。



そして第二王子派の陣営。



こちらはおよそ8万5千。

数の上では負けているが、王国最強と名高いロザン公爵を筆頭に、名実ともにその右腕であるフィオナもいる。

それに加え、この隙を突かんと帝国に動きがあるため、ロザンもフィオナも兵力を二分しなければならない。



これが現状、開戦直後の戦力比となる。

とはいえ集結出来ていない戦力も多いため、両陣営最大戦力にはまだ届いていないが。



「いいな、我らは攻める必要がない。遠巻きに囲み、手を出すな」



イザークは、第一王子派に属す身である。

地政学上中立が許されないために、どちらかの陣営に属す必要があるのが悲しいところだ。

周囲をまとめ上げ、戦力を集中させた後の手頃な相手としては、ここより南方に位置する第二王子派に属するラジ伯爵の領土を攻めるべきだろう。



だがラジ伯爵は籠城の構えをとっている。

いくら兵力に差はあっても、攻城戦を行えるほどではない。

かと言ってこれを無視して北上し、王都にてヒューゲル公爵の勢力に合流しようとすればこれ幸いと攻めてくるだろう。



それに、攻城戦など行えばそれこそ無為に互いに兵を減らすだけだ。

内乱である以上、余計な犠牲はお互いに避けなければならないために、暗黙の了解がある。

それ故の膠着状態。

そして、この場合は調略しか手がない。

誰が見ても、ラジ伯爵が籠城をやめない限り、早期の決着は難しい状況だった。



「イザーク様。早く王都にて合流するようにとヒューゲル公爵から催促の手紙が届いておりますが?」

「ああ、分かってる」



エミリオの皮肉は受け流す。

やはりこの地にも公爵の配下がいたのだろう。

西と南、そして中央は第一王子派一色に染まる、くらいに考えていたのだろうが、そう簡単にはいかなかった。

南部を上下に二分した際、およそ北の6割強が第一王子派に属するこちらの勢力圏。



そこより南がラジ伯爵を中心とする第二王子派の勢力圏となっている。

幾ら数で勝っていようと下手には攻め込めず、また内乱という事で殺し過ぎるわけにもいかないのだ。



「それで、東はどうなった?」

「今の所音沙汰なし。小競り合いに終始してるみたいだな」

「ちっ、やっぱりあの人は油断できないな……」

「そいつは同感だ。いったい何を考えているんだかな……」



この戦いの趨勢を決定付けるのは結局のところ敵対する王子を確保できるかどうかに掛かっている。

だからこそ、ロザンとしては第一王子派が集結する前に可能な限り各個撃破する方が良いだろう。

幾らロザンとて、あくまで局所的な強さに過ぎない。

数を頼りにロザンがいない場所から攻められれば、ひとたまりもないのだから……


と、そう考えるのは結局のところ凡人の性だ。


ロザンの傍にはあのフィオナがいる以上、そうならないだろうというのもまた本音。

だからこそ、どうなるか分からない。



「出来ればさっさと向こうで蹴りを付けてくれれば助かるんだがな……」



あまりおおっぴらに力を見せるわけにもいかない。

かといって、手を抜いて良いほど楽な状況でもない。



「エミリオ。例の件はどうなってる?」

「アベルを向かわせてある。かなり手薄になってるだろうから、問題はないと思うが?」

「…………ヒューゲル公爵の動向は?」

「今の所は想定通り。ただ、南部の進展がない事に対してそろそろ手紙以外の催促がくるかもな」

「東部次第、だな」

「ああ」



やはりこの戦の主役はフィオナとロザンが握っている。



「これだから英雄は嫌いなんだ」

「同感だ」



エミリオと揃ってため息をつく。

凡人としては手のひらで転がされるのを諾とするより他にないからだ。

そんな時ーー



「イザーク、伝令が来たよ! グンガン伯爵がヒューゲル公爵の軍から離れてこっちへ向かってるって!」



飛び込んできたリーズは開口一番に告げる。



「ついに来たな……」

「まあ、予想出来ていた事だ。ただ、どうにも公爵閣下は随分と気が短いらしい」

「夕暮れ時にはここに着きそうみたいだよ!」



もう少しゆっくり時間をくれれば良かったものを。

伯爵クラスが来るというのも事前の予想通り。

予想を外して侯爵クラスが来てくれれば助かったのだが、それは高望みし過ぎか。



「準備は?」

「万全だ」

「なら歓迎パーティーを開くぞ。たっぷりともてなしてやれ」

「物騒だなおい」



怖い怖いと苦笑交じりにエミリオは背を向け、部屋を出て行く。

グンガン伯爵を迎え入れるために。



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― 新着の感想 ―
頼むから続きを書いてくれー。待ってるぞー。
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