新人募集
遅くなりましたが、あけおめことよろです。
はい、めちゃ遅いです。すみません。
2点ほど質問があるので、もしよろしければ感想かこれから書く活動報告の方に答えをあげていただけると助かります。
ご協力をよろしくお願いします。
・トレジャーハンター物で秀逸なタイトル
・また、映画、漫画、小説、ゲーム等、ジャンル問わずおもしろい作品
一つだけでも答えていただけると幸いです。
「……なあ、エミリオ。受験者、何人だっけ?」
「……百人はいたはずだぞ」
横に居るエミリオに確認する。
今最も勢いのある、それも侯爵家に仕えるチャンスという事もあって、受験者は多い。
前世で言えば歴史のある一流企業が、更に大きく飛躍しているようなものだ。
一念発起した者や、現在の立場に満足していない者が多く押し寄せてきた。
それも、これで第一陣だ。今後まだまだ増えるだろう事は予想に難くない。
「今目の前にいる受験者、何人だ?」
「5人だ」
……否、多かった。
否定して欲しかったのだが、どうやらこれが現実らしい。
「なあ、俺、難しい問題出したか?」
「難しかったんじゃね?」
たった一度の質問で、百人以上が脱落した。
記念すべき一回目とあって直々に見定めてくれよう、なんて少々張り切り過ぎたというわけではない。
「平民を上司に持つのはそれほどまでに嫌らしいな」
初めはジョークのような反応を示し、次はブラックジョーク扱い。最後に本気だと悟るや否や、ほとんどの者が憤慨しながらここから立ち去った。
「「ハハハハハ……」」
今やエミリオと二人渇いた笑いしかでない、まさにブラックジョークを体現された形だ。
下級貴族の少年時代は平民相手にガキ大将として君臨した記憶があるとはいえ、言い換えれば平民とも慣れ親しんだはずなのだが。
「二割くらいは残ると思ってたんだがな……」
「俺も、一割は固いと踏んでた……」
エミリオと揃って盛大な溜め息を吐く。
これが現実だ。
とは言え、いつまでも黄昏ているわけにもいかない。
目の前にはまだ、残ってくれた受験者もいるのだ。
「まあいい。改めて確認だ。残った者の中で、平民の上司にこき使われて耐えられない奴はいないな!」
まばらに間隔を空けて立つ受験者全員が周囲を窺いながらおずおずと、だけど皆が首を縦に振った。
「読み書き計算が出来ない奴はいるか?」
そして今度は首を横に。
「よし、ならいい。諸君は合格だ!」
「「「「「…………え?」」」」」
それなら最低限の雑用くらいは出来るだろう。
誰もがきょとんとした表情だが、それだけ出来れば仕事は幾らでもある。
「衣食住、給与面でも、それなりの額は保障する。人格さえまともなら文句は言わない。また、成果によってはボーナスも支給しよう。それじゃエミリオ。一人はお前が貰ってもいい。後は適当に、足りない部署に回してやれ」
「りょーかい」
「任せたぞ」
「おう」
「お、お待ちを!」
後はエミリオに丸投げして、自分の仕事を片付けるために帰ろうとした時、背後から声が掛かる。
「なんだ?」
「その、私は確かに最低限の読み書き計算も出来ますが、その……あまり得意ではなく、そのため武官志望です! よろしければ、そちらの方面で雇って頂ければと!」
見れば残った受験者の中では一番大柄な男が、膝をついて懇願していた。
不敬罪に値しかねない行為をする度胸は大したものだが、声が僅かに震えている。
「立て」
「はっ!」
精悍な顔で、体格も悪くない。
「……エミリオ」
「おう」
軽やかに動いたエミリオが、男の体に拳を繰り出す。
「……は?」
そして拳を男の目前で止めた。
「うわっ!?」
そしてようやく、男がのけぞった。
「駄目だな。今の挨拶代わりすら反応出来ていない」
「武官はやめて、文官に転換した方が幸せかもしれないぞ?」
「……い、いえ、お願いします! 武官にさせてください!!」
「…………」
信頼できない武官を置くわけにはいかない立場だ。
昔からいる騎士団は現状仕方がないにしても、新規で入れるには少々抵抗があるのだが。
「まあ待てって、イザーク。平民の指示に従っても構わないって良い奴だし、こういう真面目な奴が俺達にゃ少ない。案外、優秀な下士官になるかもだぜ?」
「…………いいだろう」
そうやって迷っている背中をエミリオが押した。
それに文官武官、どちらを選んでもデスマーチなら、本人の希望を叶えた方がまだ踏ん張る可能性は高くなる。
「それじゃエミリオ。騎士団に案内してやれ。ああ、それとお前の配下枠はそいつに決定だ。つまり、文官の補充は当分ない」
「…………は?」
「当然だ。ただでさえ思った以上に少なく、当てが外れたんだ。貴重な一人を失ったのなら、お前の所から補充するのが妥当だろう?」
「……やっぱなしで」
「お前、希望を持たせて地獄に落とすとか最低だな?」
ゴツイ男が捨てられたチワワみたいなうる目で見てくる、気持ち悪い絵面が完成したから。やめてほしいのだが
「……言ってみただけだ、馬鹿」
「馬鹿はお前だよ」
「……だな」
この状況でエミリオは無駄な抵抗をやめた。
「ほら、全員ついて来い。案内するから」
そんなエミリオを励ます様に、武官になる男がお礼と共に頑張りますからと宣言している。
だけど哀愁漂う背中は最後までそのままだった。
今回と次回の話しは短いので、明日も投稿させて頂きます。




