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異世界における革命軍の創り方  作者: 吉本ヒロ
4章 15歳、王国内乱編
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お邪魔虫

月日が経つのは早いですねえ(しみじみ)

最近?恒例化している気がしますが本当にごめんなさい。

新人賞用の作品ばかり書いてたり、スランプに陥ったりして色々と濃い時間を過ごしてました。

遅れを取り戻したい気持ちがある一方で、ここ数年感じていた壁を越える手がかりみたいな物を掴みかけている気がします。そのためにもまだ新人賞用の作品に集中していたいというのが本音ですので、今すぐというのは難しいです。

今回の話もそれ以前に書いてたやつで、生存報告程度に投降したものですので、しばらく更新はありません。

改めて本当に申し訳ありません。。。






いつになく優しいまどろみの中、ゆっくりと覚醒していった。

窓から覗く陽はいつもと比べてかなり高く、随分と長く寝ていたのだと理解する。

よほどの事がなければ決まった時間に起きる自分にしては珍しいと他人事みたいに思いながら、すぐにその原因に思い至った。


隣には布団にくるまるアーシェスがいて、その姿は明らかに服を着ていないのが分かる。何せ、現実逃避ぎみに逸らした視線の先にいつも着ているはずのその服が放り出されているのだから。

ちらちらと掛け布団の隙間から覗く肌が非常に生々しく、かつ艶めかしいので、昨夜の事が鮮明に思い出されるのもまた必然で。



……どう考えても、明晰夢以上に明晰夢染みて、間違いなく覚醒していると断言できる程はっきりと現実染みた今が夢でない限り、自分はアーシェスとやることやったのだろう。

そして、頬をつねらなくてもここまで意識がはっきりしているのだから、これが現実の事なのだと分かる。



「あー……」

「…………ん……」



相手もいないというのに間をつなぐために出した声に反応した、どこか艶めかしい声。身じろぎした無防備な体、温かい体温。

それらを意識したせいで急速に劣情が高まり、このままでは夜討ちをしたばかりだというのに朝駆けまでしてしまいそうなる。それはよろしくないと慌てて着替え、部屋を後にした。








もしあの部屋に独りきりなら、間違いなく奇声をあげて床を転げ回った事になっただろう。

こうして正気に戻った今、色々と恥ずかしい言葉を次々に言ってしまったのだと思い起こしてしまったからだ。

それを思いとどまったのは、単にアーシェスを起こしてしまってはどんな顔をすればいいのか分からないからに他ならない。そして、今ここで奇声を発しないのは他人の目をきにしているからだ。



「んふふ~、イザークおっはよー」

「…………何の用だ」



他人の目。つまり、申し訳なさそうに来るエミリオの事だ。そしてエミリオを引っ張り、にやにやと、ご機嫌そうにいやらしい笑みを隠そうともせずに接近してきたリーズ。その姿によくない予感は覚えつつも、平然を装って対応する。



「まったまた~、これでも相談に乗ってあげた身。アーシェスとどうなったか気になっちゃってね」

「……どうもなにも、お陰さまで仲直りは出来たな。それにしても、何にも役に立っていない藁の分際で、よく相談に乗ったと言えるな」

「へえ、そうなんだ。それは良かったね。でも、話すだけでも楽になれることだってあるじゃん?」



リーズは更にその笑みを深くする。

思わずキツい、ぶっきらぼうで突き放すような言い方をしてしまったから、よろしくない可能性が高くなってきた。何せリーズはまるで何かを確信しているかのような笑みで、態度も普段通りとは言えない。

これ以上相手にするのは良くないと誰に言われなくとも分かる。



昨夜(ゆうべ)はお楽しみだったね」

「…………何の事だ」



だからだろう。

辛うじて、本当に辛うじてながら、その言葉にも動揺を見せる事もなく対応出来た。



「だって、あの状態のアーシェスと仲直りだなんて、進展する以外にあり得ないじゃん」

「いくらなんでも、進展させすぎじゃないか?」

「もう、そんなとぼけちゃって。ここまできて進展なんて、もうそれしかないじゃない」

「…………一応言っておくが、俺はアーシェスとキスしたのも帰って来てからが初めてだぞ」

「うそっ!? イザークの事だからとっくの昔にしてたと思ってたのに、キスすらしてなかったの!?」

「……………………」



どうもリーズの中で自分はどんなキャラなのか聞いてみたい気がしなくもないが、ある程度誤魔化すことは出来ただろう。

実際、嘘は言っていない。



「ねえねえ、それじゃあ二人は一気に最後まで進んじゃったの!?」



と、思ったのだが、どうやらそう簡単にはいかないらしい。



「お前だって、どうせエミリオとやることやってるだろ……」

「それこそ今更じゃん。いつだって新鮮なニュースを女の子は求めてるの!」

「……なるほど、オバサンってのはそんなもんだな」

「ちょ、誰がオバサン!? 言っとくけど、これは女の子の総意なんだから、そんな事言ってどうなってもしんないんだからね!」

「実際、知らないしな。俺に直接こんなくだらない事を言えるのは、お前くらいだよ」



呆れ9割称賛1割の視線を送るが、やはりその辺りに気付けないからこそ、図々しくもこんな事を聞いてくるのだろう。



「で、話しが逸れる前に聞きたいんだけど、実際どうなの?」

「くどいぞ」

「いや~、あのイザークが照れる所なんて、滅多にないしね。攻めるなら今の内に……なんてね」



どうやらリーズ相手ならばすぐに誤魔化せると思っていたのは自分だけだったようだ。

ならば方向性を変えるしかない。実際、これは演技などではないのだから容易に行える。



「…………なるほど。どうやら、俺の施した訓練(ちょうきょう)は随分と温かったようだな」

「…………な、なんちゃって」

「さて、何が良いかな。リーズ以外全員を鬼に見立てた実戦形式の鬼ごっこか、それとも捕虜になって拷問を受ける際の訓練か……」



さて、どれにするか本気で迷う。



「……あ、あはははは。イザーク、こわいよ?」



ようやく、自らが立ち入ってはならない場所に踏み込んで、虎の尾を踏んだのだと理解したようだが、もう遅い。



「ああ、本気だからな。どうやらあの程度の訓練(ちょうきょう)では足りなかったようだから、覚悟しろよ? リーズには特別に、精神も体力も極限まで追い詰められるような再特訓課題をだしてやろう。幻覚(ゆめ)を見れるといいな」

「あ、あわわわわわ……」



皆を鍛え上げる際は、命令だけでなく自分自身も実践した。

それは士気を高める意味もあるし、連帯感や忠誠心を育むためでもあった。だからこそ、限界まで鍛え上げると同時に、しかし手加減があったのも事実。

だが今、リーズを相手に前世で世界に名立たるシールズの登竜門たるヘルウィークを現実のものとするのも吝かではあるまい。

ドキュメンタリーかなにかで見たうろ覚えだが、ようするにリーズが死ぬ一歩手前まで追い込んでやれば良いだけなのだから簡単な事だ。

脱兎のごとく逃げ出そうとしたリーズだが、その行動は予測済みだった。



「ぎゃああああああ!! イザーク、痛い痛い! ゆび、指めり込んでるから!!」

「ああ、まずは痛みに耐える訓練なんだ。俺一人で申し訳ないが、それは皆を集めるまで待ってくれ。それに、痛くなかったら訓練にならないだろう?」

「あたま! 頭割れちゃうううぅぅ!!」

「リーズの頭にちゃんと脳みそが詰まっているか確認してやろうと思ってな。感謝しろよ?」



女にあるまじき悲鳴をあげるが、そんなことはどうでもいい。

いまはただ全力でアイアンクローをかまし、ただ指先に力を込める事だけに集中する。もはやリーズに対して容赦をするつもりなど毛頭ないのだから、遠慮はいらない。



「このドS! 鬼畜変態! アタシの頭、ちゃんとあるに決まってるでしょうが!」

「どうやらまだまだ元気があり余っているようだな。それじゃあ今度は本格的に耐拷問訓練でも始めてみるか?」



真っ赤になっていた顔が一気に青くなる。

これは本気だと、ここへ来てようやく悟ってくれたようで何よりだ。



「エミリオ、助けて!」

「…………」



ここへ来てからずっと黙りこみ、事態の推移を見守っていたエミリオが、まさかのタイミングで注目されて逡巡する。

今のエミリオの心情は単純でもあり、複雑でもあると誰もが推察できた。まがりなりにも恋人を見捨てる事はしたくないと思いつつも、不用意な発言をし、とばっちりは受けたくないといった感情だ。



「……自業自得だ。頑張ってくれ」

「酷い! エミリオはアタシを見捨てるのね!」

「しょうがねえだろ! 元の原因はお前にあるっぽいし、何よりイザークの目が更なる八つ当たり相手を探してるって雄弁に語ってるんだよ!!」



長い付き合いだ。お互い、相手の事はよく分かるらしい。エミリオとて、餓えた獣の前にみすみす自分自身と言う肉を提供してやるほど愚かではない。



「ぐぬぬぬぬ……」

「さて、無駄な足搔きはこれで終わりか? どうする、他の誰かに助けを求めてみるか?叫べば暗殺防止のために置いているメイド達には届くか? まあ友情だのなんだのと甘い事を言っていられるのは今の内だと、すぐに思い知らせてやろう。ないようなら、俺からのプレゼントを受け取ってくれ」



いや、実際感謝してるよ。

お陰で気兼ねなく八つ当たり出来るのだから。



「かくなる上は……アーシェス助けて! イザークに犯されるー!!」

「なっ!?」

「はっ!?」

「お前何口走ったか理解してんのか、このバカ!!」

「ふふーん、アタシだって伊達にターニャさんの下で訓練してきたんだから、舐めないでよね!」



涙目になりながらも強気な視線で必死に睨みつけるリーズ。

どうやら助かりたい為と言うよりは、地獄への道連れをエミリオから俺へと切り替えたようだ。



「このおバカ! 分かった今すぐ死にたいんだな。エミリオには悪いが今すぐ物理的に首にしてやる!」



屋敷中に響き渡るような大声は、間違いなく誤解を招く事になるだろう。

尤もそれは、昔からこの屋敷に努める真っ当なメイド達で、暗殺対策や防諜のために置いた物騒なメイド達ではないが。

ああ、これからどんな顔して朝食の席に向かえば良いのだろうか。

あの無駄に広い空間で、無駄な人数を待機させての静かな朝食は元々苦手だったが、今日はいつも以上の沈黙と無言の中に含まれる質問が凄い事になりそうだ。



「お主は……一体何をしておるのじゃ……」



そんな悩みと戦っている時、アーシェスが呆れながら姿を現す。

幸い下手な誤解はないものの、顔を合わせてしまう事そのものを避けていただけにやはり来て欲しくないという思いは強い。



「いや……あれだ……リーズがいつものバカやったから説教しただけだ」



何とか日常会話の形を保てている事に内心で安堵しつつ、アーシェスの出方を窺う。

寝起きという事もあってか、僅かながらも服装が乱れている。

アーシェスの事を見馴れているエミリオさえ、直視出来ていない。

俺は俺でやはり昨夜の事を思い出し、つい目を逸らしてしまう。



「ああ、とりあえずこのバカ黙らせるのを手伝ってくれ」

「知らぬ」

「…………え?」



だから最初、その言葉の意味が理解できなかった。


……おかしい。


昨夜の件で、二人の仲は割と……と言うより、控え目に言ってもかなり進展したと思った。だが、今のアーシェスはあからさまに不機嫌そうだ。

それにこの反応は昨夜に何もないままの状態で、昨日の続きと言わんばかりだ。



「ねえ、なんかアーシェスが不機嫌なんだけど、イザークまた何かしたの? それともさっき言ったのはウソだったり?」

「…………いや、今度こそそんな覚えはないんだが……」



うん、わからん。

ぷるぷると震えるアーシェスは、俯き気味の顔を上げ、キッと睨みつける。



「なぜ妾が目覚めるのを待っておらんかったのじゃ!」

「…………は?」

「朝はキスで起こすのが男のマナーじゃろ!」

「いやなんだそれ知らないぞ!」



キス以上の事をしそうで割と危うかったが。



「と言うか、それ別に男じゃなくてもいいんじゃ……」

「妾が先に起きておったらそうして……っ!!」



自分が勢いで何を口走っていたのかようやく理解したのだろう。



「女の口からこのような事を言わせるでない!」



アーシェスは急速に顔を真っ赤に染め、捨て台詞を残して走り去る。



「……なんか、アタシまで照れるんだけど」

「……言うな」



俺もなんかどうしようもなく照れるから。



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