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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

黒の焦点

作者: 愛石世界

熱でうなされてるとき、それは唐突に舞い降りた。

頭がぐわんぐわんと

金になってしまったのではないかと訝しむほどに痛みを訴えていたというのに

舞い降りたそれはその激痛を快楽に変えてしまった。

くらくらとする頭痛が気持ちいい。

微睡みのなかに堕ちていくような。


それは、そのときに限ったことじゃなかった。


部活で限界まで走り続けたときのことだ。

急に足が軽くなって陽射しも風も何もかもが心地よかった。

全てを取り込んで走り続けたくなった。

頭のなかはその時もくらくらと、海面を揺蕩うようだった。


お酒に酔っても、煙草にとらわれても

その快楽は簡単には得られなかった。


あれはなんだろう。

アドレナリン?脳内麻薬?


だとしたら残酷なものだ。

苦しい時、辛い時にしか得られない心地よさ。


しかしある時それを手に入れられることを知った。

それはとても偶然でやはりいつものように唐突だった。


路地裏で不良に絡まれ暴行を受けたときだった。

殴られ続け、蹴られ続け、引きずり回され、滅茶苦茶に暴力を受けたとき。

それはやってきた。

赤い鮮血のどろりとした視界のなか、拳を降り下ろされるその瞬間。

ぱちっと脳内で音がしたかと思うと途端快楽の闇に突き落とされた。

とろとろとろとろ。

くらくらくらくら。

歯が折れた。

あばらも折れた。

骨が砕ける音、肉が裂ける音。

どのオーケストラも敵わない。

どんなセックスにも訪れない。

絶頂の瞬間。


笑みを溢してしまったからか、不良達は気持ち悪がり逃げてしまったが

求めていたものはこれだと知った。


暴行を受けることを癖にしてしまった。


それもやはり、苦しいもの、辛いもの、痛いものという三拍子の揃った稀有な得難いものと言えば得難いものであるが

いつ、どこで訪れるかわからない不確かなものより確実だ。

暴行を受ければまたあの快楽に酔いしれる。


いつかそのなかで命を落としてもいい。

あんなに素晴らしい微睡みのなかで死ねるのなら本望だ。

美しい死体となって絶命しよう。


そんな不純な想いを抱いて、今夜も夜の町を歩き続ける。


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