カスカラ_03
かくして僕は、今日も牽制に出撃している。
――反乱が勃発して、三週間以上。僕が派遣されてきて二週間以上が経ったな……
漠然な思考をしていた時、周囲がザワめく。僕も釣られて、そっちを向いた。
――あ、あれは……
僕たちの隊が進むちょっと右手に、目を惹く人が立っている。
確か、グリューンって人だ。ちょっとした知り合い。僕がここに派遣されてきた時、ほんの二日ばかり上官だった。
職業軍人で、センス良く整ったお顔と奇麗に鍛えた長身。「やあ」と笑った貌は性格良さそうで同性から見ても好感度高め。なにより、少し年上なだけなのに余裕があって〝大人〟な感じ。何ていうか、規格外すぎて僕等一般人はもう嫉妬心も湧かず「ああいう人が上官で、良かったな」と言い合った人だ。
その矢先に、グリューンさんは〝特別任務〟とかで僕たちの前から去って行ったけど。
改めて観察すると、グリューンさんは、同類の装い二人と佇んでいる。その二人も、職業軍人なんだろう。戦場姿が板に付いているから。
でも、三人は僕ら召集兵の指揮を執ってる職業軍人とは違う感じだ。部下を率いてないし。軍装も、ちょっと違うし。何より、武器が違った。
僕には剣や槍のことは、よく解らないけれど。三人の主武器は、どれも凝った装飾が施されている。武器なんて壊れる物で、つまり消耗品なのに? あんな飾り立ててあるって、どういう事情だろう?
グリューンさんを含めた三人は、彼方に目を遣っている。僕も、視線の先を追ってみた。この荒れ地は、なだらかな隆起の繰り返しだ。植物はせいぜい灌木まで。だから、場所によってはけっこう先まで見通せる。
反乱軍と派遣軍が対峙しているのが、小さーく、辛うじて見えた。
パッと、遠目にも砂煙が上がったのが判る。誰かが威力のある魔法を使ったのだ。
「ママレートちゃん頑張ってるな」
――え?!
すぐ側の呟きに、ビックリして振り返る。グリューンさんの傍らを過ぎるところだ。
今の、確かにグリューンさんの声だったよな? でも〝ちゃん〟って、すっごく印象とそぐわないけど……それに、ママレートって誰?
考えている内に、グリューンさんを通り過ぎた。