幕間_01
暗い……どうしてここは、こんなに暗いのか。それとも、目まで遣られたのだろうか?
身体の怪我は、たぶん、酷い。全身が痛む……のか、痛まないのか。もう、曖昧だ。さっきまで感じていた岩肌の感触さえ、不明瞭だ。
なんとか、意識を込める。掌に握り込んだ物に。……硬い肌触り。それに、ああ、まだ暖かい。あの人は事切れたけれど、熱は残っている。
――まだ、死ねない……託されたのだし……
瞬間の衝撃は凄かった。身体が、自覚した試しがないほど極小単位で叩かれた痛打。何もかも去って静かになってから、〝壊される〟と感じた。
それから、どれだけ経ったのか……そもそも、ここはどこなのか……
ほとんど動かない指を蠢かし、硬い肌触りを確かめる。同じ場所に投げ出された、もう一人。あの人は、「これを頼むから、あなたは生き残りなさい」と。まるで生命力まで移譲するように、渡された。
――誰、なんだろう……死に臨んで高潔。知性と教養もあった――師匠に似ていたな……本当なら、死を丁寧に扱われるべき人物なのだろう……ともかく、声を掛けてもらって助かった……
息を潜め、体力を温存する。生き意地が戻るのを待つ。
――まだ、まだ死ねない。姫様……姫様……姫様は、無事ですか?