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オレンジ  作者:
3/5

小学生‐2

5月7日


いつも通りの1日だった。




 島岡君に会った次の日、何も変わりのない生活がまっていた。


「おはよう、美晴ちゃん」


 集団登校で、6年生に手を繋がれている私に、同じクラスの加奈子ちゃんが挨拶をしてきた。私も加奈子ちゃんにおはようって挨拶をした。その後加奈子ちゃんは、同じ班の6年生に手をひかれて、私より先に学校へ向かっていった。

私はただ、無表情で加奈子ちゃんの後ろ姿を見ていた気がする。



 私たち1年生は1階、2年生と3年生は2階だ。お兄ちゃんは3年生だから、当たり前のように2階へ上がっていく。きっと、2階には島岡君もいるんだろう。私は自分の教室に行く時もずっと、階段を見つめていた。

 その時、誰かが私の肩を叩いた。そっとふり向くと、そこには同じクラスの圭がいた。圭は、私にとって1番の友達だ。


「おはよう」


「どうしたの、ずっと階段見て?」


私が笑顔で言うと、圭は挨拶を返さずに、私の痛いトコをついた。


「ううん、何でもないよ」

「じゃ、早く教室行こうよ」

「うん!」


圭が教室に向かってずんずん歩き出した。私もそれに続く。でも、どこか寂しくって後ろを振り向いてしまった。そこには、誰もいなかった。




 午前中の授業が終った。私は席に着いたまま、ため息をつく。疲れたのもあるけど、心の何かが引っかかったのだ。

 圭が、お昼を食べようと声をかけてきた。もちろん私は1人で食べるのは嫌だったから、良いよと答えた。


「美晴、今日給食当番だよ、アンタ」

「え、うそぉ。もしかして…」

「そ、牛乳当番だよ」


 私たちの学校は、給食当番があって、おかずの当番や牛乳当番がある。その中でも牛乳当番は、地下室まで行かなきゃいけないので、とにかくしんどい。しかも牛乳が重いときた。


「牛乳当番の人誰?」


 担任の先生が、教室の中にいっぱい響くように声を張り上げた。その声に、私は静かに手を上げた。他にも3人の子が手を上げていた。


「早く行ってらっしゃいね」

「はぁ〜い」


その中で、誰かがめんどくさそうに返事をした。それにつづいて、私たちは牛乳を取りに廊下に出た。




地下に行くと、そこには給食委員の人が点検をしていた。奥の方にいるから顔はよく見えない。すると、私たちが来たことに気付いた1人がひょっこり顔を出してきた。


「……!」


一瞬、言葉が出なくなった。


「あ、松本の妹じゃん」


それは島岡君だった。


「し、島岡君、給食委員だったんだね」

「うん、で、何組?」

「1組です」

「はい、良いよ、牛乳取ってって」


それから私は、クラスの友達と一緒に重たく冷たい牛乳を持って、クラスに足を向けた。




いつも通りだったけど、島岡君に会ったのだけはすごく嬉しかった。

昨日会ってなかったら、声をかけてくれなかったのかな?

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