1.永遠の眠り
刀身を月明かりが照らす。1人の老人を悪漢達が囲う、老人はなんとか斬り結んでいるが彼の勝色の羽織りと濡羽色の着物を赤く染める。
「おい、爺さんさっさと諦めてくれ」「悪いが、如何様な理由があろうとも、儂は此処を退くわけにはいかぬのだ」
一刻程の時が経ったのだろうか。老人は悪漢を斬り捨てふらつく足である場所に向かう傷口からはとめどなく血が流れそれでも彼は足を止めない、視界が霞み手が動かぬとも気力のみで体を動かす。向かう先に二つの墓石があった。それは十年以上前に作られた物のように見えたが丁寧に掃除され墓の主はとても大切にされていたのだと見受けられる。老人は墓石の近くに腰を落とす、そして、手毬に似た白い花を一輪摘み、花弁を握る。震えながらも握る拳を額に当てる「すまぬ。儂の才が足りぬ故にお主らとの…」だが此処まで耐えてきた体も限界だったのだろうか。額に当てた拳が地面へと落ちる。その体はいずれ熱を失い硬直し腐敗していくだろう。彼は最期に幻を見る。髪を結い上げ勝色の着物を着た淑やかな女性、腰に帯刀した濡羽色の着物を着た少女。老人はその幻に手を伸ばそうとする。だが限界を迎えた彼の体は指一つ動かす事は叶わなかった。
その後からは悔いを残した様な顔で息を引き取る。才が足りぬとも頂を目指した剣客。齢60であった




