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第3話:北方の管制官(平泉の再会)

 1180年。奥州、平泉。  黄金の都と称されるその地は、京の喧騒から隔絶された、静謐な「独立国」の趣を湛えていた。広大な屋敷の奥、一人の老人が、庭に咲く桜を見つめていた。

 奥州の覇者、藤原秀衡ふじわらの ひでひら。だがその眼差しは、老境のそれではない。幾千の作戦図を引き、若き才能を見出しては空へ送り出してきた、冷徹かつ情熱的な「指揮官」の光を宿していた。

「……九郎か。ようやく到着したようだな」

 秀衡が呟くと同時に、障子が開いた。入ってきたのは、小柄ながら全身から火の出るような闘気を放つ少年――菅野(義経)。そして、その後ろに影のように控える巨躯の僧、弁慶だ。

 三人の間に、爆音のような沈黙が流れる。  菅野は、目の前の老人の姿に、かつて厚木の基地で自分をどやしつけ、同時に誰よりも高く評価してくれた、あの男の面影を瞬時に見て取った。

「……おい、爺さん。いや、あんた……」  菅野が言葉を発しようとした時、秀衡が短く手を挙げた。

「九郎。……高度プライドを落とすな。ここは、お前の『基地ベース』だ」

 その一言で、菅野の全身に鳥肌が立った。「高度」という言葉。この平安の世で、そんな概念を知る者がいるはずがない。秀衡――前世で三四三空を創設した源田実げんだ みのるは、ふっと口角を上げた。

「お前が墜ちたと聞いた時、私は確信した。お前のようなデストロイヤーが、たかだか重力ごときに負けるはずがないとな。……案の定、お前はここで、新しい機体からだを手に入れてやがった」

 秀衡は立ち上がり、菅野の肩に手を置いた。 「いいか。頼朝は『政治』という名の地上戦しか知らん。だが、これからの世には『空』の視点が必要だ。一騎打ちで誉れを競うような古い戦法は、私がすべて塗り替えてやる。……そのための『翼』が、お前だ」

 背後で控えていた弁慶が、堪えきれずに嗚咽を漏らした。 「……司令。……やはり、司令でありましたか……!」

「庄一か。……お前が二番機を務めているなら、安心だ。この九郎は、目を離すとすぐに単機ピンで突っ込みたがるからな」

 秀衡は笑い、棚から一振りの太刀と、最高級の馬の血統図を取り出した。 「お前たちがここに揃ったのは、偶然ではない。……既存の武士道を根底から破壊し、新しい編隊戦術による勝利を歴史に刻む。……そのための『必然』だ。九郎、庄一。……ここ平泉の資源はすべて、お前たちの『燃料』として使え。……頼朝に見せてやれ。デストロイヤーが描く、新しい時代の『軌跡』をな」

 菅野は、不敵に吊り上がった笑みを浮かべ、腰の太刀の柄を操縦桿のように握りしめた。

「……了解したぜ、司令。……高度、よし。視界、良好。……義経隊、これより全機……離陸テイクオフだッ!」



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