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第十四話 魔法師団長の想いとお守りの奇跡

王都南方の魔力異常調査を目的に始まった遠征も、十日が経過し、ようやく終息の兆しが見えていた。魔法師団長イザーク・ローヴェンハーツは、地脈の変化によって地上に姿を現した巨大な魔石を見下ろしながら、思考を巡らせていた。


「……地中の圧力が変化し、自然に露出したものだろうな」


師団の見解としては、地脈の動きにより地下深くにあった魔石が突き出したというもので、そこに魔力を感じ取った魔獣たちが集まり始めたのだ。普段ならば王都近郊では見られない上位種の魔獣が現れ、討伐は困難を極めたが、王立騎士団の協力によって事態は好転した。


魔石の発掘と封印処理も終わり、魔獣を引き寄せる力が遮断された今、誰もがひとまず安堵していた。


しかし——


突如、空を裂くような一声が響いた。現れたのは、伝説級とされる上位種、ホワイトグリフォンだった。


白銀の翼を広げ、地を揺るがす風を巻き起こすその姿に、一同は固唾を呑んだ。


「全員退避! 散開しろ!」


指示を飛ばしつつ、イザーク自身は前線に立ち、全力で迎え撃つ覚悟を決める。だが、戦いの最中、グリフォンの瞳が静かに彼を捉えた瞬間——突如として攻撃の動きを止めた。


「……何だ?」


それは敵意でも恐怖でもなく、まるで何かを感じ取ったかのように、ゆっくりと頭を垂れ、従う仕草を見せた。


「まさか……」


胸元に手をやり、外套の中から取り出したのは、クラリスから贈られた小さな手作りのお守り袋だった。


袋の隙間から、微かに紫の光が漏れていた。お守りをホワイトグリフォンに近づけると、グリフォンはすり寄るようにその額を布に擦り付けた。


「やはり……クラリスか」


彼女が魔石に込めた魔力と祈りが、ホワイトグリフォンに影響を与えたのだろう。驚きと共に、彼女への想いがこみ上げてくる。


そっとお守り袋を開くと、そこには彼女の丁寧な刺繍と、折りたたまれた小さな手紙が入っていた。


《団長様がご無事でありますように。どうか怪我をせず、心も身体も健やかに戻られますように。——クラリス》


その言葉に、イザークの心が揺れた。


——ああ、会いたい。


気づけば夜空を仰いでいた。星の瞬きの向こうに、あの儚げで、真っ直ぐで、まるで光そのもののような少女の姿が浮かぶ。


彼女の願いが届いたのなら、自分の想いもきっと届いているはずだと信じたくなった。


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