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蟻とキリギリス

作者: 働きアリ

あるところに毎日遊ぶことに夢中なキリギリスと、それを横目にセコセコと働くアリ達がおりました。

キリギリスは毎日楽しく、充実した日々を送っていました。キリギリスは刹那的な思考の持ち主で、毎日を辛そうに生きるアリ達を、嘲笑い、憐れんでいました。

一方で、アリ達は臆病で、世間体を気にし、計画的な生き方を何よりも重視していました。アリ達は、季節が巡り、やがて冬が訪れると、食料が採れなくなることを知っており、夏から既に備え始めていました。

アリ達はキリギリスの思考を理解できません。先のことが不安で仕方ないのです。アリ達は今を犠牲に、必死に働きました。


やがて、冬が近づき秋が訪れると、キリギリスはようやく冬が近いことを悟ります。しかし、食べ物は既にギリギリ。備えに回す分なんてありません。これは困ったと、キリギリスは途方に暮れました。

ふと、何気なく、キリギリスは、久しく見ていなかったアリ達のことが気になりました。

あんなに備えていたのだから、もしかしたら少し食料を分ける余裕があるのかもしれない…

一縷の望みをかけ、キリギリスはアリ達の巣に訪れました。


キリギリスは虫がいい話だと自覚しつつも、その負い目を振り払うように、大きな声で呼びかけました。

「アリさん、お久しぶりです。少し話しませんかー!」


返事はありません


キリギリスは少し焦りつつ、ややへりくだって尋ねます

「ほんの少しでいいのです。食料を分けてください。この借りは後で返しますので!」


返事はありません


キリギリスは取り繕う余裕もなく、語尾を荒げてアリの巣に上がり込みます


ところが、おや?

ここまでしても反応がありません

ようやくキリギリスは、この状況の不自然さに気づきました。

キリギリスは恐る恐る、部屋を確認していきます。


巣の奥で、キリギリスがようやく目にしたアリ達は…否、たった一人残ったアリは、備蓄した食料に囲まれながら、苦しげに事切れていました。




キリギリスはやや後ろめたさと引け目を感じながら、食料を持って自分の巣へと足を向けました。

アリの分まで楽しく生きようと誓いながら。



キリギリスは数日のうちに、大切に、アリの巣から得た食料を食べきりました。キリギリスは食料を貯め込みません。貯め方をしりません。


果たして、冬を越せたものはいたのかどうか。冬を越せたアリがいたとしたら、そのアリは果たして幸福になれたでしょうか?


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