サメちゃん
うちのクラスには一匹のサメが生息している。しかも恐ろしいことに、人食いザメだ。
「ガブッ」
「痛ぁ!」
「ムシャムシャ」
「もう食われてるじゃん!! 死んだ!!」
「ゴックン。オイシカッタヨ」
「えー…っと。どういたしまして? お粗末様でした?」
この通り、俺はまたしても食われた。席が隣だからしかたない。被害域を食い止めるには、誰か一人を生贄に捧げなければ。
「イツマデコノチャバンニ、ツキアワナキャイケナイノ?」
「?」
『イチモツを茶漬けにしてイけないの?』、だって?
今確かにそう言ったよね。いつも上半身ばかりだから、次は下半身を食らいたいということか。
生憎だが、俺のは包茎だしちっちゃいから、そんなに実は詰まってない。お望み通りとはならないんだ、サメちゃん。
「イ・ツ・マ・デ・コ・ノ・チ・ャ・バ・ン・ニ、ツ・キ・ア・ワ・ナ・キ・ャ・イ・ケ・ナ・イ・ノ?」
「あ、なるほど」
『いつまでこの茶番に、付き合わなきゃいけないの?』と言ってるのか。
「おいおい。もっとゆっくり喋ってもらわないと、俺の脳内翻訳機が訳せないんだよ。ただでさえ、サメちゃんはギザギザ歯なんだからさ」
「リョ」
「軽いな」
サメちゃんのジト目がさらにジトーっとなる。つられて俺の目もジトーとなるが、サメちゃんと違って俺の場合は目が細くなるだけだと思う。
「オマエハ、ボクノコトイジメテル。シクシク」
「え、いやいや!! 別にいじめてはないぞ。男同士の交流じゃんか。ちょっと変わってるけど」
まさかサメちゃんから、いじめ認定される日が来るとは。覚悟していただけに、そんなに驚かないな。振り返ってみても、身に覚えがありすぎるから、逆に今までよく耐えたとさえ思うよ。
ただし、先生なんかにチクられたらやばい(色んな意味で)。
「ナンテネ。ジョーダン」
「なんだって!! 親父にも冗談つかれたことないのに!!!! サメちゃん、お仕置きだ!!!!!!」
さぁ、尻を出せ。その女子みたいに柔らかい尻を揉みしだいてやる。
もみもみ。
通販で買ったオ◯ホより、柔らかくて気持ちいい気がする。もしやお前のア◯ルはオ◯ホ超えの高性能精子搾取機なんじゃないか。
くそ、思わず叩きたくなる。しかたない。バック感覚で、一叩き。
「ア、アァン」
「……」
待て待て、相手はサメちゃん(男)だぞ。変な気を起こすな俺。
平常心を持てってばよ。
「ヘンタイ」
「ぐはっ!!」
刺さる。壁に刺さる。
ここで変態とでてくるワードセンス。サメちゃん、君は罵る才能があるね。次はドを付けてド変態と言ってみてくれないか。
「ドヘンタイ、キモチワルイ」
「通じた!!!! もう我慢できん!!!!!! フ◯ラしてもらえませんか?? 股間がパンパンっす」
あ。だがしかし、忘れていた。
サメちゃんの歯はギザギザだから、ヤられたらめっちゃ痛いわ多分。血が出て、一生勃起できなくなるかも。
「アノネ、ボ・ク・ダ・カ・ラ・ユ・ル・サ・レ・ル・ケ・ド、ホ・カ・ノ・ヒ・ト・二・オ・ン・ナジ・セ・リ・フ・イ・ッ・テ・ミ? グ・ー
・パ・ン・モ・ン・ダ・ヨ。ワ・カ・ッ・テ・ル?
ボ・ク・ダ・ッ・テ、ソ・ン・ナ・コ・ト
・イ・ワ・レ・タ・ラ・キ・ズ・ツ・ク・シ、ハ・ラ・タ・ツ」
「…………はい、すいませんでした」
少々というか、だいぶ悪ふざけが過ぎたようだ。サメちゃんが怒っている。
俺は清く土下座をする。公共の面前(さっきまで下品な言葉を連発していた男が言えたことではない)で見苦しい姿を晒すことになるが、どうか視界に入る者よ、耐えてくれ。
この際、もう打ち明けよう。サメちゃんに日頃の謝罪を込めて、俺の気持ちも伝える。
そして俺は木っ端微塵に弾け飛ぶ。
サメちゃんにめちゃくちゃ嫌われて、明日から不登校になる。こんな素晴らしい友達をなくすのは、本当にマジで人生終了を意味してしまう特記事項だ。
「ム、ソレハナンカ、ヒキョウダ。ギャクニ、モットオコリタクナル」
「いや、違うよ。この土下座には、他の意味もある。俺サメちゃんに酷いセクハラまがいを日々やってしまってるけど、あれには深い想いがあって……その好きな子をいじめたくなる心理が働くあれみたいな………………そう俺は、もうサメちゃんが大大大大好きなんだ!!!!!!!!!! 勿論、恋愛感情の方で!!」
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ハ? ゴメン、コロスヨ。キモチワルスギル」
…やっぱり、そう上手く相手が「私も好きでした」展開はこないか。
しくしく。