少女の学園生活始まる。
私はあの怖い監査官と分かれた後、式場の会場に戻ってきた。フミちゃんからもの凄く心配されたが、特に問題ないと伝えた。
そして予定通り式が始まった。最初に入学試験を主席1位で突破した生徒からの口上や抱負が述べられる。注意深く見ていると、その壇上に上がった生徒と、式場の最前列に座っている生徒で騒動があったらしい。
「おい、なんでこんな位が低い奴に口上の書いた魔道紙を読ませるんだよ。おかしいだろ。」
「そうだそうだ。このお方こそ口上を述べるのに相応しい。とっとと壇上を開けろ!」
「なんで私が開けなきゃいけないの?ちゃんと入学試験で測定したでしょう?それに、私は主席じゃないよ。」
「はあ?どういうことだ!」
「本当の主席が人前で読みたくないって言うから、私にお鉢が回ってきたの。」
「じゃあ、そいつはとんでもない臆病者だな。それか、この学園で目立ちたくない大人しい根暗か。」
私はその時、この会話に横槍を入れたくなかった。だけど、壇上に立っている頬がふっくらとして、目鼻立ちが通っている可愛い生徒のことが小声でこういった時に私は何故か体が動いていた。
「主席のことを悪くいわないでよ。貴方たちは会ったこともいや、その性格だったら、会うことも出来ないんだから。」
「それ以上は止めにしていただけるか?観客が待ちくたびれているのでね。」
「あ?何だ?おめえは、平民の分際でしゃしゃり出てくんじゃねぇよ。聞いて驚け。このお方は、」
「知っている。社交界で実力主義でのし上がり、今の地位を築き上げ領民からの信頼も厚いライゼン候のドラ息子だろ?実力主義と謳われるこの学園によく入れたな?ああ、そもそも入学試験を受けていなかったのか。親のコネをツテにして。他の生徒達は自分で実力を勝ち取ってここに入学したと言うのに、自分だけ楽をした腑抜け共。そんなことが許されると思うな。」
「何だてめぇ。聞いてればしゃくに障る事をツラツラと、」
「主席、私の為にありがとうございます。」「はあ?こいつが?」
「おい、よく見ろよ。あいつの胸の紋章。」「トライデントを持った英雄に跨がられているグリフォン、まさかお前・・・・・・」
「ああ、お前たちの言う通りだ。この意味が分かるな?」
「ちっ、ここは大人しく退場するぞ。」
「待って下さい、兄貴~。」
そして彼らは、脱兎の如く去って行った。まあ、可愛いウサギと醜いあいつらを一緒にして貰っても困るが。
彼らが去った後、会場から拍手が沸き起こった。
「主席、この場を収めて頂いて誠にありがとうございます。」
「大した事じゃないよ。それじや、席に戻ろうかな。」
「それでは、式を続行します。」
席に戻ると、開口一番にマキちゃんが目をキラキラさせて、こう言った。
「ミサちゃん凄いね。」
「別に大した事じゃないよ。」
「それでも、あの出来損ないを追い払っちゃうなんて凄い。あの人達の噂は城下町にまで届いているからね。」
「まあ、普通に考えたら、あの人の息子が放火なんてしたらそれこそ一大事だな。」
「そういえば、ミサちゃんの胸ポケットに付いてるそれって王家の紋章だよね。」
「何で付いてるの?」
「私の家族が王家の親戚なんだ。ことあるごとに私を毛嫌いしていてね。それでとうとう愛想を尽かされて、離縁されたんだ。」
「それは酷いね。」
「何でそう思ったの?」
「だって、ミサちゃんは・・・・・・ううん、やっぱり他の家族の事情に口出しするべきじゃないよ。」
「そっか。なら、仲良くなったら聞かせて。」「分かった。そういえば、後もう一つ聞きたいことがあったんだけど。」
「何?」
「ミサちゃんって怒った時に口調が変わるの?」
「親しい人や、仲がいい人もしくは恋人やパートナーだったら、口調は変わらないと思うけど、私がどうしても許せない言葉や行動をした時、あるいは相手が罪人か罪を犯した事がある奴らか今正に罪を犯そうとする奴ら、人の道から外れたような事をする輩に対しては口調が360°変わるねぇ。」
「それは、何も変わってないと思うよ。」
「いや、一周回ってるから変わるんじゃないか?」
「アハハハ。」
そんな楽しい会話を続けていると、赤色のローブを着た監査官から、
「そこ、周りの人が羨ましくなる位、賑やかに話さないの。」
と諭されてしまった。
そして、それからは何事もなく式が穏やかに続くかと思われたが、そうもいかなかった。
なぜなのか。それはクラス分けが原因だった。この学園のクラス分けはどうやら水晶で行うらしい。他の学園は実力や知識でクラスを分けるらしいが、なんとも単純だ。どうやらこの水晶で自分や他人のステータスが見れるらしい。普段は保管庫に厳重に管理しているらしいが、大事な式典や大がかりな学園祭の時はあの水晶を出すのだという。これは私の憶測だが、昔通っていた学園の生徒が水晶を遊びで壊したのではないか。だから、この時は厳重に閉まっているのだと思っていた。
そうこうしている内に、私のクラスを知る番が来た。そこには、クラス コウモリと書かれてあった。コウモリといったら、上から3番目すなわち普通のクラスである。フミちゃんも一緒だった。
「ミサちゃん、一緒のクラスだね。これから宜しくね。」
「うん、沢山話そう。」
そんな事を話している内に式が終わり、それぞれのクラスの学び舎(現実世界の教室みたいな場所)で新入生同士の交流会が開かれる事になった。