少女は『本当の』家族に捨てられる
稚拙な文章ですが、何卒ご容赦をお願いします。
その怖い表情をした監査官に掴まれた時、私は記憶の片隅から抜け落ちていた凄く重要な事を思い出した。
私がこの学園で入学式を迎える前に、通達所(現実世界の合格通知のようなもの)を受け取ったのだ。そこに記載されていた内容は、以下の通りである。1:入学式には、基本的に親を同伴して学園に来ること。2:但し、実の親から虐待されているもしくは議監(現実世界の役所みたいな所)で正式に手続きを完了させて、家族の縁を切られた場合は一人で来ても構わない、という内容である。
そんな内容をぼんやりと思い出していると、突然監査官が
「手荒な真似はしたくないから、俺に大人しくついてこい。ここは、人の目が多いからな」
「分かりました」
仕方がないので、その人に言われるがままについて行った。
暫くして、私達は式場の地下室の横にある少しこじんまりした部屋に連れて行かれた。私は落ち着いた所で、その監査官の顔をよく見てみた。顔は彫刻のように整っていて、瞳はオニキスのような黒色で、髪はトパーズのような黄色がかった濃い茶色である。成る程、私が別室に連れて行かれた時に後ろの列にいた女子生徒が黄色い声を上げていた。あの時は大げさな表現をするなぁと思って、特に気にもとめていなかったが、これならあの女子生徒の気持ちも少しは分かる。
「いきなりで申し訳ないが、お嬢さんに聞きたいことがある」
「はい、何でしょうか」
「何故、お前の両親だけがいない?」
「すいません、私の家族はデビュタントというか、高位の貴族が集まっているお茶会に出席しておりまして」
「なるほど。自分の子供はほったらかしで、目の前の利益や欲を優先する。まるで貴族らしい事をやるな」
「そうですね」
「今すぐに君の両親に連絡して、入学式に来て貰おう。今から、鷹の爪(現実世界の郵便と似た制度)を飛ばすが、何か家族に言いたいことはないか?」
「ありません」
「そうか、なら早速飛ばそう」
そして、2分後鷹が帰って来た。
「手紙には、何と書いてありましたか?」「お前たちの両親からは、議監(現実世界の市役所と似た場所)で手続きを済ませて家族の縁を切った、と書いてあった。お前にとっては複雑な気持ちかもしれんが、これで、入学式に一人で出席してもいい口実が出来たな」
「そうですね。お騒がせしてしまい、申し訳ありませんでした。それでは、失礼します」「一つ伝え忘れていたが、放課後にこの場所に来てくれ。そこでお前を待っている」
「?分かりました」
そういえば、あの監査官の名前を聞いていなかったし、私の名前も伝え忘れていたが、嫌でもこれから会うことになるし、まあ気にする事はないか、と気を取り直したのだった。
読んで下さりありがとうございました。作品のブクマの登録や、星の高評価も宜しくお願い致します。(ゝω・)