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幼馴染の冒険者パーティーをクビになったけど、このままでは終わらなかった話

作者: 昼型熊

14作目になります。

よくある追放物の導入ですが、特にざまぁはありません。


誤字報告ありがとうございます。

おかげで助かります。

「クビって……どういう事なんだよ!」


 とある冒険者の宿の一室にて、あるパーティーがメンバーの一人をクビにしようとしていた。


「言った通りの意味だよ、マート。もう俺達のパーティーに、お前は必要ない」


 パーティーのリーダーである、戦士のリドルは抑揚のない声でマートにそう告げた。

周りのパーティーメンバーである、黒魔法士のメイアと回復役の白魔法士のホウミも、リドルに追随する。


「何でだよ……僕達、今までやって来ただろ!? 何で急に、こんな……」


 彼等は同じ故郷から成り上がる為に冒険者となった、幼馴染であった。


「急に……ね」


 マートの言葉に、メイアは呆れたように呟く。


「前々から言ってただろう。お前はこのままじゃ駄目だと。一度だけじゃない、何度もそう忠告していた……」


 リドルの言葉の意味を、マートは理解出来なかった。

確かにこの所、戦力的に置いて行かれてると自覚はしていた。

マートは付与術士……所謂仲間達の強化をメインとしたジョブだ。


 ジョブとは冒険者が各々の適性に合わせて習得する役職名である。

前衛職として代表的なのは戦士である。

他に後衛職として、魔法による攻撃をメインとした、黒魔法士とパーティーの回復役である白魔法士がメジャー所である。

付与術士は後衛職で、味方を強化するジョブである。

十分な技量を持った付与術士は、パーティーの生存率を一気に上げる重要なジョブとなるのだが……。


 マートの能力は現状そこまで高くなく、今ではリドル達の自己強化能力の方が有用であった。

自身の力不足を自覚したマートは、それを埋めるべくパーティーの雑務やら何やらを引き受けていた。

こうする事で、少しでも皆の役に立とうとしていたからだ。

だが、肝心のパーティーメンバーはそこの所を、あまり評価してくれなかった。


「俺達に、他のパーティーからクラン結成の話が来ている」


 クランとは複数のパーティーが徒党を組む事である。

大所帯だが、クランの中で流動的にメンバーを組み替える事で、より高難易度の依頼や、ダンジョン制覇を目指せる利点がある。


「相手はあの『栄光の翼』と、『自由の剣』だ」


 『栄光の翼』と『自由の剣』……冒険者ギルドの中でもスゴ腕で有名な超A級パーティーである。

マート達のパーティーも、それなりに名前が売れて来た新鋭パーティーだが、まさかそんな大物から声が掛かるとはマートは思ってもみなかった。


「クラン加入の条件として、一定の能力が必要となる。俺達は既にその条件をクリアしているから、直接声を掛けられたが、お前の場合はそうじゃあなかった」

 

 確かに、マートからすればクランの話は寝耳に水だった。

つまり、クラン加入の為に自分を切り捨てたのかと、マートは思った。


「そうか……僕は邪魔なんだな」


 怒りとも悲しみともつかない声で、マートは呟く。


「……そうだな」


 それに対し、リドルは一切の感情を感じさせない乾いた声で返す。


「メイアとホウミもそう思ってたのか?」


 残りの幼馴染の少女達にも問うが、返ってきた言葉は冷たい言葉だった。


「そうね。少なくとも足手纏いは必要ないわ」


「ごめんなさい。私もみんなと同じ意見」


 メイアは兎も角、恋人のように仲の良かったホウミからもそう言われたマートの心は折れた。


「わかったよ……。僕は出ていく」


 そう言って踵を返すマート。


「まぁ、待て。今までパーティーで貯めて来た資金を退職金として渡す。装備もそのまま持っていけ」


 そう言って、リドルは資金の入った革袋を差し出した。


「……有難く受け取っていくよ」


 革袋の中身を確認してマートは出て行った。

重苦しい雰囲気の中、一人が大きく息を吐いた。


「やっぱ、こうなっちまったか……」


 リドルはやるせないような気持ちで呟く。


「仕方が無いわ。どちらにしろ、アイツに先があったとは思えないもん」


 少しの怒気を含ませ、メイアは吐き捨てた。


「……マート」


 村を出て、恋人同然だったホウミは悲しそうにマートの名を呟く。


「はいはい。辛気臭いのはやめやめ! 今までも散々話し合ったんだし、もう終わったんだから、今後の事を話合いましょう」


 メイアがサッと話題を変えた。

こういう切り替えの早さが、コイツの強みだなと、リドルは思った。


「そうだな。これからはあの実力派パーティーと一緒にやっていくんだ。いつまでもグダグダ悩んだって仕方が無い。ホウミも、もう割り切れ」


「……うん」


 もう終わった事、そう思って三人はこれからの事に目を向けたのだった。


 実の所、クラン加入の話が出た際、マートは除外すると伝えられた時、三人はそれに反対した。

マートはまだ燻っているだけで、本当はもっとやれる男だと力説した。

それを受けて、上位パーティーはリドル達にある条件を付けた。

クラン結成にも多少の時間は掛かる為、その間にマートがクランメンバーに相応しい力を身に付けるかどうかというものである。

実力者を求めているクランである、能力さえ基準を満たせれば、リドル達のメンバーであることからも加入に問題は無いだろうとの事だ。


 ただし、クラン入りについては伝えない事という注文は付いたが。

これはあまり大っぴらにクラン結成を広めたくないからだ。

あまり話が広がると、有象無象さえ引き付けてしまう。

クランはあくまで実力者や将来有望な人材を得たいという考えだった。


 こうしてリドル達は、マートが強くなれる様にあらゆる手を尽くした。

短期間で色々な依頼を受けたり、鍛錬の時間を増やしたり、様々な助言をするなど、彼の成長を促すように努めた。

だが、マートは自身の力不足を嘆き、鍛錬よりもパーティーの雑務に力を入れる等、明後日の方向に努力してしまった。

何度も軌道修正を図ろうとしたが、その度に『僕なんて……』と自分を卑下し、リドル達の忠告に耳を傾けなかった。


 流石にそういう態度を取られると、リドル達も愛想を尽かしてきた。

今までの幼馴染の冒険者パーティーとしてなら兎も角、これからは超一流の冒険者と共にさらに上を目指そうと頑張ってるのに、マートだけ下を見ているのだ。

時に叱咤激励し、マートの成長を願って来たが、遂にタイムアウトとなった。

近々盛大にクラン結成を成すという事を告知する所で、リドル達はマートと決別する事を選択した。


 幼馴染としての情はあるし、これまで通りやっていくという考えも無かったわけではない。

だが、彼等は日増しに強くなっていく自分を意識し、この力が何処まで通用するのか知りたいと思った。

実に冒険者らしい考え方であった。


 結局の所、幼馴染の情よりも冒険者としての在り方を彼等は選んだ。

その先に待つのは栄光か、破滅かはわからない。

ただ、自分の成すべきことを成す為に、前を向いて歩くという選択をしたに過ぎなかった。


 一方でパーティーをクビになったマートは荒れていた。

自身の力不足は認めていた。

彼は戦闘において、自分の強化術よりも味方の自己強化の方が優秀な事もあり、存在意義を見失ってた。

だからこそ、パーティーの雑務など、戦闘以外の所で頑張る事で、帳尻を合わせようと必死であった。


 だが、それは否定されパーティーを思うならもっと自分を磨けと言われた。

勿論それについても努力しているつもりだった。

それじゃあ足りないから、他の所を頑張っていたというのに。

自分の努力を認められず、そして自分を置いて上に上がる元幼馴染達に怒りを募らせていた。


 マートの怒りはハッキリ言うとズレたものであった。

そもそも、付与術士の一番のセールスポイントは味方の強化である。

身体能力、魔力出力の強化に加え、戦士なら属性付与によって攻撃力や防御力を上げる事も出来る。

魔法使いに対しても、身体能力強化をする事で機動力を上げることが出来れば、危険の回避や魔法の命中率だって上がる。


 本来の役割を十全に発揮できれば、付与術士は正にパーティーの要となれるのだ。

クランがリドル達の言葉に耳を傾けたのも、マートが付与術士としてそれなりに力を付ければ、れっきとした戦力になるかもしれないという期待があったからだ。

だが、マートは劣等感に苛まれ、自分の成長から目を背けて別の事に傾倒してしまった。

結果、リドル達の望む成長も出来なかった上に、愛想まで尽かされたのだ。


 リドル達が将来有望な俊英である事は間違いないが、マートとてそこまで出来の悪い才無しという訳でも無い。

そもそも、付与術士自体がそれなりにレアなジョブなのである。

戦うメンバーがローコストで強化されるのだ、それだけで十分な価値はある。

自己強化は、強力であるがその分消耗も大きい。

自身の魔力で強化しつつ戦うのだ。

常に魔力と体力を消耗するので、長期戦には向かない。

そこで、付与術士による強化が役に立つ。

体力以外の魔力消費は無いし、強化によって戦闘もスムーズとなり、結果的に消耗が少なくなるからだ。


 マートにとって不幸だったのは、リドル達は強化無しでも強く、更に生半可な付与術士を必要としない程に強力な自己強化を行える所にあった。

自己強化と付与術士による強化は基本的に共存出来ない。

強い方が優先され、弱い方の効果は弾かれてしまう。

マートの強化よりもリドル達の自己強化の方が、出力という面で優秀だった。


 長い目でみれば、普段はマートの強化を使い、強敵相手には自己強化で対処するという方が安定するのだが、リドル達が優秀過ぎた。

基本弱い敵には強化無しで勝ててしまうし、強敵相手は自己強化で時間を掛けずに速攻で倒すという方法を採っていた。

マートが存在意義を見出せなかったのも、無理はなかったかもしれない。


 それでも必死に鍛錬を行い、実力を身に付ければ、クランのサブパーティーでバッファーとして重宝されてた未来も十分にあった。

結局の所、マートの弱さが今の事態を招いたのだった。


 メイン通りから少し離れた酒場でマートは酒を飲んでいた。

退職金として受け取った金額はかなりの額であり、これと冒険者としてのそこそこの稼ぎがあれば、十分生活していける。

冒険者としては勝ち組に近い所にいるが、それでも幼馴染達に見捨てられた事は、マートにとって辛い事であった。

どちらかと言うと、自分なりに頑張っていたのに、その努力が認められなかった事が悔しいというのもある。

そうやって管を巻いていた所、後ろの席から騒がしい声が聞こえて来た。


「あ~、もう! やってられないわッ!」

 

 若い黒魔法士の女だ。

かなりハイペースで飲んでいるらしく、空のビンが数本テーブルに転がっていた。

大分荒れているようで、酒を注文しては次々と飲み干している。

マートは変に絡まれても面倒だと、女を無視して会計を済ませようとしたところ、


「な~にがクランよ! 馬鹿馬鹿しい。そんなに早死にしたいならすれば良いのよッ!」

 

 吐き捨てる様に騒ぐ女のクランという言葉が耳に入り、マートは思わず振り向き、女と目が合った。


「……何? 何か文句でもあるの?」


 ギロリと目を剥く女に内心ビビリつつも、マートはクランについて聞く事にした。


「いや……そのクランってもしかして『栄光の翼』と『自由の剣』の事か?」


「そうよ。アンタも知ってるって事は、情報はもう解禁されたのね」


 そういうや否や、外から号外の声が響く。

あの実力派パーティーが手を組んで、新しくクランを結成するという。

既に二人にとっては既知の情報だったが、それを聞いた冒険者達は色めきだった。

情報解禁はついさっきの出来事で、その前からそれを知り、こうして管を巻いているという事は……。


「どうやら君も僕と同じような目に遭ったんだね」


「君もって事は、アンタもしかして?」

 

「うん、少し前にね。元パーティーメンバーから、戦力外って事で辞めさせられたんだよ」


 実力不足により、パーティーから追い出された二人が此処で出会う。





「……でね、アタシの力が足りないからクランには入れないって……。そんでアイツ等はアタシをクビにしたのよッッッ!!!!」


 黒魔法士の女、ウィンキーはマートと同じく実力不足でクランのお眼鏡に適わず、結果的に元のパーティーから追い出されたとの事だ。

彼女の才能自体は非常に高く、努力すればクランにスカウトされてもおかしくなかった。

だが、才能があるが故にある程度のレベルまで簡単に到達してしまった彼女は、そこから先の努力を怠り、程々の所で落ち着いてしまった。

パーティーメンバーはもっと頑張れば上に行けると思っていたが、彼女はそれなりに稼げる今の温い状況に満足してしまい、メンバーと溝が出来ていた。


 そこに降ってわいたクランの話に、ウィンキー以外のパーティーメンバーはチャンスとばかりに飛び付いたが、彼女は乗り気では無かった。

結果、クラン加入を目指したパーティーから追い出されたのであった。

そして今に至る。


 才能が有りながら、それを伸ばそうとしなかったウィンキーに思う所はあるものの、同じく追い出された者としてのシンパシーや、追い出した者達への反発から、マートはウィンキーに肩入れした。

そして二人で元パーティーの愚痴を言い合っていた所に、一人の戦士が酒場にやって来た。


 戦士の男、ローガンは冒険者として、20年以上のキャリアを持つベテランだった。

パーティー結成時のメンバーは、膝に矢を受けたり、冒険者として限界を感じた為、他の職業に就いたりしていた中で、ローガンは常に第一線を走っていた。


 何度かパーティーを結成したり、解散したりを繰り返してきた20年のキャリアの中で、3年ちょっと前に才能ある若者の面倒を見るようになってた。

まだまだルーキーであったが、ローガンがこれまで見て来た冒険者の中でも断トツの才能があった。

これまでのメンバーの殆どは、途中で脱落していた。

これはローガンの指導が悪いというよりは、冒険者を目指す大体の人間がそういう者ばかりだったという事がある。


 冒険者を目指す多くの者は、成り上がる夢を持っているが、殆どの者は過酷な現実に夢破れる。

リスクとリターンが合わな過ぎるのだ。

物語に伝えられる英雄的活躍をする冒険者なんて一握りであり、殆どの冒険者は命懸けの過酷な戦いをしても、ほどほどの報酬を得るのが精一杯か、安全ながらも実入りの少ない仕事で糊口を凌いでいるかだった。


 そんな訳で冒険者は危険な仕事を避け、安全な仕事についてダラダラ生きるか、一か八かの闘いの中で命を散らすか、見切りを付けて辞めるかに分かれる。


 ローガンが今まで組んでいた者達は、辞めるかダラダラ生きるかのどちらかだった。

そんな中で、才能ある若者を発見したローガンは喜んだ。

彼等には、生き抜くための才能と戦い抜く気概がある。

自分の20年の間に培った知識を叩き込めば、上を目指せる。

ローガンはそう思っていた。


 若者達もローガンの薫陶を受け、メキメキと実力を伸ばして行った。

そんな中、彼等はクランからの勧誘を受けた。

但し勧誘を受けたのは若者達だけで、ローガンには話は無かった。

ローガンが無能という訳ではない。

ただ単に、『栄光の翼』と『自由の剣』にはローガン以上のベテランで、経験と実力が遥かに上な完全上位互換の存在がいるという話だった。


 若者達は冒険者デビュー当時から、面倒を見てくれたローガンに義理立てしていた。

だからこそ、ローガンは決意した。

若者達が更に上に行くには、クランに加入する方が絶対に良いと。

そうしてパーティーを解散し、若者達をクランへと送った。

ローガンなりの意地と、若者達の更なる飛躍を望んだ大人の対応だと言えよう。


 だが、それはそれとして悔しいものはやはり悔しいのだ。

漸く見つけた金の卵を上位陣に持っていかれた上に、自分はそれに選ばれなかったのだ。

20年以上の歳月を冒険者として生きて来たローガンにとって、それは屈辱であった。


 だが、同時に理解もしていた。

『栄光の翼』にしろ『自由の剣』にしろ、自分がどう頑張っても届かなかった領域に至った、化物連中である事を。

所詮自分はそこそこの仕事で、20年生き延びていたに過ぎない事を。


 納得とそうではない感情で情緒がグチャグチャだったローガンは、酒を飲みに来た。

兎に角飲んで飲みまくって、全て忘れてやろうと。

そんな中、かなりの量の酒を飲んでいる二人の男女の姿が目に映った。

愚痴を言いまくっているが、内容を吟味するとクランにパーティーメンバーを持っていかれて、自分達はクビになったという内容だった。

正に自分と似た様な境遇の二人に共感したローガンは、話題に乗っかり、三人で飲み明かしたのだった。


 翌朝、二日酔いで痛む頭を押さえながら、マートは目を覚ます。

酒場は冒険者宿も兼任しているので、しこたま飲んだ後、部屋を取りそこでも飲んで寝たのだった。

真昼間から夜中まで飲んで愚痴り合ったウィンキーは別の部屋に泊まり、ローガンとは相部屋だったようだ。

退職金の殆どはギルドに預け、憂さ晴らしの為のお金だけは残していたが、全部使ってしまったようだ。

どれだけ飲んだんだろうと思ったが、言いたい事をブチ撒け、溜め込んだストレスを発散した為か、気分はスッキリしていた。


 顔を洗い、二日酔いも幾分収まった所で食事の為に下に降りる。

食堂にはウィンキーの姿があった。

自分よりも相当飲んでいたハズなのに、全然平気そうな顔をしている。

挨拶をし、軽めの食事を注文した所で、ローガンも下りて来た。

こっちは大分昨日の酒が効いている様だった。


 食事を終え、少し落ち着いた所でマートが口を開いた。


「ねえ、君達はこれで良いと思っている?」


 マートの問いに、ウィンキーもローガンも応える。


「正直、このままだと負けたようで気分が悪いわね!」


「同感だな。俺とて伊達に長くはやっていない。このまま終わりたくない」


「僕もそうさ。情けない奴と思われたままいるのは嫌だ。せめてアイツ等を、後悔させてやりたい。見返してやりたい!」


「見返すか……だがどうするんだ? 悔しいが奴等は一流の面子だ。それに若くて才能ある者達も取り込んでいる。対して俺達ではそんな有望株を取り込むのは難しいぞ?」


「そうだね。確かに普通にやろうとしても彼等にはどうやっても敵わないだろう」


 マートも勝てないのは分かっている。

だが、別に勝つ必要などないのだ。


「要はさ、彼等が選ばなかった者達が、冒険者として大成する。そうすれば彼等も自分達の見通しの甘さを痛感するだろう?」


 そう、勝てないなら別の事で彼等に認めさせるのだ、彼等が見捨てた自分達が、此処までやれるんだぞ、と。


「なるほど、奴らが選ばなかった事を後悔させるって訳か。ささやかではあるが、悪くない」


 自分達の力を認めさせる……冒険者としての矜持を見せつけるという考えにローガンは賛同した。


「ウィンキー、君はどう思う?」

 

「そうね……。悪くないわ。寧ろ彼方から、どうかクランに入って下さいって頭を下げさせるのも面白いかもね!」


 ウィンキーもやる気になったようである。


「よし、じゃあまずはパーティーを結成しよう。僕達と似た様な状況の人達を集めて、力を付けるんだ。その後燻っている者達も取り込んで、クラン結成を果たす」


「フッ、長い事冒険者をやって来たが、中々楽しい事になりそうだな!」


「そうね。やってやるわよ!」


 こうして後に二大クランの一角として台頭する、もう一つの伝説が生まれる事になった。







「やってみて分かる事ってあるもんだね……」


 マートはボヤいた。

クラン結成の為、各地を駆け回り同士を呼び込んでパーティーを結成してから早3年。

色々と問題が発生してきた。

有力パーティーが組んだ事で発足したクラン、『栄光の剣』は一流の能力を持った冒険者と、将来有望な若者を取り込み、その力を拡大していた。

対して、マート達は『栄光の剣』に選ばれなかった者達に声を掛け、勢力の拡大を狙っていた。

そして、自分達の力を認めさせようと躍起になっていた。


 最初から組織立てようとしても、掛かる経費やその他の纏まりなどで問題発生は避けられないので、まずは複数のパーティーを作り、その中で皆切磋琢磨し、力を付けていく。

合同依頼などを受け、パーティー毎に連携を取れるようにし、メンバーの絆を深めていくのだ。

皆が同じ気持ちで一つの目標に向かって走る……そうすれば良い関係を築けるだろうと思っていたのだが、現実はそう上手く行かない。


「そうだな。俺も改めてそう思う」


「あー、うん、アタシも今になってアイツ等の気持ちが分かっちゃたわ……」


 複数のパーティーを組み、皆で力を合わせそれぞれやっていこうとしていたが、意識の差というものは個人によって違うんだと改めて思い知らされた三人だった。


『栄光の剣』に選ばれなかった者達にも、頑張って見返してやるとモチベーションの高い者もいれば、ひたすらネガティブで、それによってやる気のある者達と意識の違いで揉めてたりする。

更に実力差も結構離れていたりするので、足並みが揃わなかったり、やっぱり自分はダメな奴だと更にやる気を失う者も出てくるなどで、中々上手く行かない。


 新しく入ったメンバーには、マートと同じ付与術士のパーシィという少女がいた。

彼女は嘗てのマートと同じだった。

更にマートよりも知識も経験も劣る為、マート以上に自信が無かった。


 そんな彼女が力を入れたのは、パーティーの雑用係だった。

戦闘では役に立たない分、それ以外の事で役に立ちたいというパーシィだったが、マートからするとそれは違うだろと言った所であった。


 雑用とは言っても、基本的に身の周りの事は自分でするのが冒険者だ。

いざという時に、回復薬やその他諸々を把握するには、他人任せでは危険だからである。

そもそも、役に立ちたいのだったら、少しでも実力を上げた方が貢献度は高い。


 人の振り見て我が振り直せという言葉があるが、マートはパーシィの姿を見てそれを痛感していた。

何度考え直すように言っても、自信の持てないパーシィは聞いてくれない。

それしか出来ないとばかりに、あまり意味の無い雑用に力を入れている。


 マートは元パーティーの気持ちが理解出来た。

求めているもの、やるべき事とは違う方向に努力をしているパーシィの姿に、嘗ての自分を重ねて頭を抱える。


 マートは『栄光の剣』を見返す為、自身の付与術士としての力を高める努力をした。

出力の増加に体への負担の軽減、長時間の効果の発揮と、以前よりも比べ物にならない位に実力を上げていた。

今の実力なら、リドル達と肩を並べることが出来たかもしれない……そう思える程であったが、今更もう遅い。

だからこそ、新しいパーティーのメンバーであるパーシィにも、頑張ればきっとモノに成ると発破をかけているのだが……。


「彼女に足りないのはとにかく自信だよな……」


 付与術士としての彼女は前のパーティーではお荷物だった。

単純に実力不足というのもあったが、元々引っ込み思案な気質も相まってかなり煮詰まっていた。

そして彼女は昔のマートと同じく、別の作業に逃げたのだった。


「はぁ、どうしたものかな……」


 マートも以前は同じ事をしていたが、元パーティーを見返してやりたいという執念で、実力を付けた。

だが、彼女の場合はマート程の執念は無く、完全に自信を喪失している。

相手を見返すよりも、自分がダメダメなんだから悪いんだと思い込んでいるのだ。


 マートが思い悩んでいる横で、ローガンも悩んでいた。

彼が面倒を見ている冒険者達……やる気もあってそれは良いのだが、やはり才能という面で見ると嘗ての若者達と比べて、凡庸だなという印象だった。

考えてみれば、彼等は20年以上のキャリアの中で初めて出会った人材だ。

それ以前に出会っていた冒険者達は、良くも悪くも普通だった。

麒麟児なんてそうそう出会えるものではないという訳だ。


「やる気もあるし、飲み込みも悪くない……だが、やはりあいつ等と比べると、どうしてもな……」


 比較しても良い事は無いのに、どうしてもそういう目で見てしまう。

ローガンは溜息を付いた。


 マートとローガンの横で、ウィンキーも項垂れていた。

自分が面倒を見ている黒魔法士の事で、だ。


 シェスターという黒魔法士は、ウィンキーの目から見ても才気溢れる男だった。

才能だけ見れば、正直何で『栄光の剣』に選ばれなかったのか不思議でならない。

だが、実際指導の為に接してみると、その理由は理解出来た。

彼は典型的な、才能に胡坐をかく男だったのだ。

つまり、以前のウィンキーそのものである。


 ウィンキーもマート同様元パーティーメンバーに吠え面をかかせてやると、本気で努力した。

その結果、以前なら確実に『栄光の剣』へとスカウトされる程の力を付けていた。

元々才能はピカイチだった為、新パーティー内ではずば抜けた実力者となったウィンキーは、嘗てのメンバーに生まれ変わった自分を見せつけてやろうと、『栄光の剣』の本部へと足を運んだ。

そこでウィンキーは現実を思い知らされた。


 再会した元メンバーと、今現在組んでいる黒魔法士のメイアという女は、明らかに自分よりも一段上の力を持っていたのだ。

努力によって力を付けたウィンキーは、皮肉にもそれによって相手の実力を正確に把握出来るようになっていた。


 『栄光の剣』のメンバーは僅かな期間の中で、更なる飛躍を遂げていた。

知識と経験、あらゆる物が上のベテラン達の指導に加え、同じ位の同期との切磋琢磨、未知のダンジョンや強力なモンスターとの戦闘など、『栄光の剣』を取り巻く環境は現状最高レベルであった。

そんな中で揉まれていれば、嫌でも実力は上がる。

更に将来性を見出された、伸びしろ十分な面子である。

その伸びは凄まじく、幾ら才能があったとはいえ、基本独学で環境もそこまで揃ってもいないウィンキーの成長を、遥かに超えていた。


 元メンバー達は、ウィンキーが努力して以前よりずっと強くなった事を評価していたが、ウィンキーにとっては屈辱だった。

何せウィンキーを褒める彼等は、彼女よりも遥かに強くなっているのだから。

努力によって強くなったウィンキーは、その力を元メンバーに見せつけてやるつもりだったが、相手はそれ以上の格上になってたのだ。

その日、ウィンキーは久しぶりにやけ酒をした。


 そして改めて現実を直視したウィンキーは、嘗ての自分そっくりのシェスターを本気で鍛えていた。

自分に匹敵しうるシェスターを鍛える事で、自分自身も更なる高みへと上る算段もあったが、何よりもずば抜けた才能を生かそうとしないシェスターの才を、惜しんだというのもある。


 今、真面目に鍛えれば『栄光の剣』のメンバーにだって負けないレベルになれるのだ。

なのに肝心のシェスターのやる気は薄い。

今のままでも稼ぐには十分だし、なんでそこまで必死に頑張るか理解出来ないとの事だ。

シェスターの気持ちも分からないでもない。

自分もそうだったのだから。


 だがその結果、仲間達に見捨てられ、『栄光の剣』からも声を掛けられずに終わった。

そして自分以外の面子は、新天地で更なる飛躍を遂げている。

あの時、仲間達の忠告を真面目に聞いて努力していれば……と、何度思った事か。

だからこそ、シェスターには自分と同じ轍を踏まずにいて欲しいと思って、厳しく指導していた。

見事に暖簾に腕押しだったが。


「はぁ……ホント、どうすれば良いのかしら……」 


 今の立場になって、改めて元メンバーの苦悩が理解出来たウィンキーだった。


 それから暫くしたある日、街に激震が走る。

『栄光の剣』が、魔竜ゲルティスを討伐したというのだ。


 通常モンスターは種族名で呼ばれている。

成長時期によって大きさや強さに多少の差は出てくるが、モンスターの種族ごとの強さはほぼ横並びだ。

その中で、稀に個体名を付けられる個体が存在する。

ネームドと呼ばれるそれらは、通常のモンスターと比べて、圧倒的な力を持つ特別な個体である。


 子供でも倒せるゴブリンが、ネームドとなると大人複数人で掛かっても返り討ちに遭うほど、強さの次元が違うのである。

故に別格に強いネームドの討伐は偉業として知られる。

それが最強格のモンスターである竜種となれば、それこそ大騒ぎになる。

途轍もない偉業を『栄光の剣』は成し得たのだった。


 マート達は凱旋を行っている街の広場に来ていた。

そこでマート達は見た。

凱旋しているメンバーに、嘗てのパーティーメンバーの姿がある事に。

リドル、メイア、ホウミの姿をマートは捉えた。

ローガンとウィンキーも嘗ての仲間達を確認している。

皆、圧倒的なまでの差を見せつけられていた。


 魔竜ゲルティスは、嘗てとある国の軍隊を、たった一体で壊滅させた恐るべきモンスターである。

その強さから生物災害と目されたゲルティスは、討伐対象とされながらも、どの冒険者も軍隊も手を出せなかった。

それが今日、討伐されたのである。

『栄光の剣』はこの日、英雄として称えられたのだった。


 凱旋する元幼馴染達をマートは眩しそうに見る。

以前は自分を追い出した彼等を恨んだりもしたが、パーシィの面倒を見る事で自分がどれだけ彼等を失望させて来たのか理解出来た。


 勿論マートはパーシィを見捨てる気は無いが、それでもネガティブな彼女に見切りを付けたくなった事は少なくなかった。

今なら彼等の気持ちは分かるし、あの時ちゃんと忠告を聞いていれば、あの場には自分もいたのかも知れなかった。

そう思うとやるせない気持ちになる。


 ウィンキーもマートと同じ気持ちだった。

あの時もっと頑張っていれば、と。

今更そう思っても、もう遅かった。


 ローガンもまた、この光景を見ている。

自分がどんなに努力してもたどり着けない領域を。


 街の喧騒を他所に、マート達はメイン通りから離れた寂れた酒場で飲んでいた。

嘗ては自分達を捨てた事に対する不満をぶち撒けたものだが、今はお通夜の状態だった。

見返してやると息巻いたあの頃と違い、どうやっても覆せない、圧倒的な差に彼等は折れていた。


 パーシィとシェスターはそんな彼等の姿を見て、各自思う所があるようだった。

パーシィは元々献身的な性格であった。

そういう意味では補助がメインの付与術士とは相性が良かった。

しかしながら同時に引っ込み思案な性格でもあったので、強く自分を出すことは出来ず、付与術士としての強化の腕は今一だった。

結果、パーティーのお荷物とされ、最後にはクビになった。


 途方に暮れていた所で、同じ付与術士であるマートに拾われ、彼から薫陶を受けた。

だが、同じ付与術士でもパーシィよりも二段も三段も上の実力を持つマートに、憧れを持つと共に劣等感も抱いた。

頑張ってもマートのように上手く行かない。

自身の実力不足を嘆いたパーシィは、雑用などの業務をこなすことで出来ない分を補おうとしていた。

だがそれはマートに否定される。

足りない分を他で補おうとするパーシィからすると、どうすれば分からなかった。

答えはシンプルに付与術士として力を付ける、ただそれだけの話だった。


 伸び悩んでいるパーシィに、マートは過去の自分の話をする。

話を聞いたパーシィは驚いた。

自分にとっては雲の上のような存在のマートが、今の自分とそっくりな状況に陥っていた事に。

そこから努力し力を付けた事を教えられたパーシィは、まずは自分の限界を決めずにやれる所から頑張ろうと、少しだけ前向きに成れた。


 そんなパーシィの目の前でマートが落ち込んでいた。

マートは以前組んでいた幼馴染達の姿を見て、余りの差に打ちのめされていたのだ。

パーシィはそんな彼の姿を見て居た堪れなくなった。

自分が教えを乞う者として、もっとちゃんとした結果を出せていれば、マートも此処まで凹んでいなかったかもしれないからだ。


 事実、パーシィが『栄光の剣』は無理としても、付与術士として一人前になっていれば、マートももう少し前向きになっていただろう。

例え幼馴染達に及ばなくても、一人の人間を育て上げた実績があれば、これはこれで自分の果たした事に対して誇りを持てただろう。


 だが、パーシィの成長も促せず、以前の自分と同じことをさせてしまった事と、幼馴染達に自分がどれほど苦労を掛けていたのかという事実に、自身の無能さを再確認させられた。

結局多少力を付けた所で、マートは己は何も成せないのだと、無力感に苛まれていた。


 項垂れるマートの姿を見て、パーシィは決意した。

不甲斐ない自分と決別し、付与術士として立派に成長して見せると。


 シェスターもウィンキーの姿を見て、複雑な思いをする。

自らの才能に絶対の自信を持つシェスターでも、ウィンキーの実力には一目置いていた。

現時点では彼女は自分よりも格上であると。


 そんな彼女が自分の才能を評価し、それを更に伸ばそうとしてくれている。

その事自体は嬉しいが、努力しなくてもそれなりの実力を持ち、それなりに稼ぎがあるシェスターは、現状に満足していた。

本気でやらなくても十分やって行ける、楽に程々良い生活ができればそれで良いと思っていた。

『栄光の剣』が魔竜ゲルティスを討伐し、凱旋をするまでは。


 街は大いに賑わっている。

偉業を成した英雄達が、惜しみない賞賛を受けている。

その輝かしい光景を目にしたシェスターの眼に、元パーティーメンバーの姿があった。

シェスターからすれば、彼は凡庸だった。

才能ある自分と違って、愚直に剣を振るしかない凡夫。

それが覆されたのは何時だったのか。


 『栄光の剣』と言う超一流クランが、自分達をスカウトしに来た時、間違いなく自分が選ばれると思っていた。

しかし、クランが選んだのは彼だった。

徐々に力を付けていたのは分かっていたが、それでも自分に及ばない男が選ばれて、自分は選ばれなかった。

屈辱、とは思わなかった。

別に自分は大して努力なんかしてなかったし、何なら努力が認められた彼におめでとうと言った気持ちだった。

……シェスターは気にしていないつもりだった。


 それからシェスターはウィンキーにスカウトされ、新しくパーティーを組んだ。

ウィンキーが少し煩い事を除けば、居心地が悪い所でも無かった。

シェスターは相変わらずのらりくらりしていた。

必死に努力しなくてもある程度の事は出来るからだ。

ウィンキーはそんなシェスターの才能を惜しんでいたが、シェスターは意に介さなかった。


 ある日、ウィンキーがヤケ酒をしていた。

何でも栄光の剣に居た元パーティーメンバーと会ったらしい。

ウィンキーはそいつらに今の自分の力を見せてやるつもりだったそうだが、それ以上の力を見せつけられたそうだ。

シェスターの目から見てもウィンキーは相当な努力をし、確かな実力を持っていると思っていたが、上には上がいたらしい。

その日からウィンキーの指導が厳しくなったが、シェスターは相変わらずだった。


 そんな彼がその日見た、『栄光の剣』の凱旋。

そこで目にした凡夫であったハズの彼の姿。

英雄として輝く舞台に立つ彼と、大勢の中の一人として埋もれている自分。

モゾリと、彼の中で何かが蠢いた。


 シェスターの知らない……いや、今まで目を背けていたソレが鎌首をもたげて来たのだ。

嫉妬と羨望。

才能があるが故にある程度の事が出来た為、今一つ物事に対して本気に成れなかったシェスターは、愚直に努力を重ねて来た元仲間を内心、見下していた。

だが同時に、自分の足りない所を持つ彼に対して密かな憧れを持っていたのかもしれない。

そんな彼が『栄光の剣』に選ばれた時、シェスターは自覚は薄かったが、嫉妬心を抱いていた。

そこに目を逸らし、表面上は取り繕っていた。


 ウィンキーの過去の話は既に聞いている。

聞いた所で流していたが、今日はその話が意味していた事を、心の底から理解した。

あの時、愚直に努力していたら、ウィンキーとの修行をもっとしっかりやっていれば、こんなにも悔しい思いはしなかっただろうと。


 『栄光の剣』に入っていれば自分もあそこに居たかもしれない、真面目に修行をしていれば、いつかあの場所に立ってやると意気込めたかもしれない。

どちらも成せなかった今は、ひたすら情けなく惨めな思いをするだけであった。

あの時、ああしておけば良かったと。

後悔する。

今更もう遅いと。


「……いや、本当にそうなのか?」


 シェスターは自分の才能に自信を持っている。

そんなシェスターが一目置くウィンキーも優れた才能の持ち主だ。

そんな二人が例え今からでも、修練に励んでいれば、より高い所まで登れるのではないか?

過去に散々ウィンキーが言って来た事だ。

漸くそれを理解出来た。

今更だけど、このまま劣等感だけ抱いて生きていたくは無い。

シェスターは今度こそ、本気でウィンキーと高みを目指す事を決意した。


 それからの彼等は変わった。

それまで積極性に欠けていたパーシィとシェスターがやる気を出したからだ。

落ち込んでいたマートとウィンキーもパーシィ達の熱量に当てられ、再び立ち上がった。

ローガンも色々吹っ切れた様で、才能は今一でもやり様はいくらでもあると思い、指導に力を入れた。


 数年後、マート達のパーティーはクランを結成した。

その名は『立ち上がる者達』。

主に新人冒険者の指導や、己の力に限界を感じた者達の救済組織の様なクランである。

勿論、通常の冒険者としての活動も行っている。


 『立ち上がる者達』が設立されてから、この街の冒険者の死者が減り、成果が上がっているようになった。

冒険者全体の質の向上である。

新人冒険者の死亡や離脱はとても多く、中堅冒険者も長年の苦労が祟り廃業する者が多いなど、慢性的に冒険者の人手不足があった。


 『立ち上がる者達』は右も左も分からない新人達にノウハウを教え、時には武具やアイテムを融通してくれたりする。

中堅達にも長くやって行くためのアドバイスや、他の技能向上の手助けをする事で、冒険者としての寿命を延ばすようにしている。


 冒険者は基本的に余り自分達の手の内を見せない。

それが知られると、他に真似されて自分達の稼ぎが減ったりするからだ。

だが、『立ち上がる者達』は敢えて自分達の持つ知識や技能を公開している。

最初は反発する者達も居たが、技術交流によって伸び悩む者達も、新たな力を身に付けられる等のメリットがあるので徐々に受け入れられた。


 こうして『栄光の剣』に並ぶ二大クランの一角として、『立ち上がる者達』は認知されていく。

そうなると派閥争いやら何やら面倒事も起きるハズなのだが、それは起こることなく至って平和であった。


 理由として、『栄光の剣』の中核のメンバーと『立ち上がる者達』のトップが知己であった事。

更に『立ち上がる者達』の前身となったパーティーメンバーが『栄光の剣』に加入し、今でも交流をしているなど、両者の関係は良好であったからだ。


 ウィンキーとシェスターは切磋琢磨し、その力を高めていった。

そして遂に『栄光の剣』からスカウトを受けたのである。

切っ掛けはネームドの存在である。


 強力なネームドの出現は基本的に『栄光の剣』かもしくは軍隊が対応する。

しかしその日は運悪く、『栄光の剣』は別のネームド討伐に出ていた。

複数のネームドが確認され、あわや大惨事と言う事態であった事から、『栄光の剣』が総出で出る事になったのだ。


 軍隊もまた、『栄光の剣』では手が回らないエリアに出現したので、そちらへと派遣されていた。


 そんな対ネームド戦力が揃って不在の中、更に別のネームドが現れるという緊急事態が起きた。

そこでウィンキーとシェスターが立ち上がった。

勿論、マートとパーシィも付いて行った。

ローガンは他の仲間と共に街の防衛に務めた。

ネームドの出現で他のモンスターまで活性化し、街を襲ったのだ。


 激闘の末、遂にウィンキーとシェスターはネームドを仕留めた。

マート達の支援があったとは言え、これは偉業であった。


 丁度『栄光の剣』もネームド達を討伐し、急いで街に戻って来たのだが、この結果に驚き、ウィンキー達の力を認め、クランへの加入を打診した。


 最初はウィンキー達も迷った。

ネームドとの戦いで確かな手応えを感じていた。

それに『栄光の剣』に加入すれば、更なる高みへと上れる確信があった。

だが、それでマート達から離れるという事も、心情的に出来なかった。

そんな彼女達の背をマート達は押した。


 マート達はネームドとの戦いでは支援が精一杯だった。

そんな自分達と居るよりも、『栄光の剣』に加わった方が良いだろうと言う事だった。


 こうしてウィンキーとシェスターは『栄光の剣』に加入した。

今では一線級の働きをしているそうだ。

マート達との交流は今でも続いている。


 実はマートも声を掛けられたのだが、マートは断った。

今のパーティーと離れることが出来ないという事もあるが、同時にネームド戦を経験した事で自分の限界を悟ったからだ。

『栄光の剣』に認められたと言う事実に、満足した事もあるかもしれない。

それにやるべき事、やりたい事もあるので、マートは今のパーティーに残ったのである。


 その後、マート達は『立ち上がる者達』を結成した。








 戦士リドルは光り輝くその道を歩んでいた。

隣には苦楽を共にした幼馴染達と、切磋琢磨した仲間達。

人生における絶頂期に彼は居た。


 『栄光の剣』……冒険者内でも名高い二大パーティーが結成した最強のクラン。

そのメンバーに選ばれたリドルと幼馴染達。

正確には一人、足りないが。

リドル達なりに何とか頑張って欲しかったのだが、結局モノに成らず決別するに至った。

もし全てが上手く行っていたら、彼もまた自分達と一緒にこの場に立って居たのに……。


「ハッ、我ながら女々しいな」


 四人一緒に栄光の舞台に立つという子供の頃の夢。

それが少し欠けたまま叶った事に、僅かながらの寂しさを覚えたのだった。


 『栄光の剣』は最高の環境だった。

肩を並べる才気溢れる同期達、今の自分よりも遥かに格上の先輩冒険者。

未知の大地、ダンジョン、モンスター、色々とある。

物凄く大変な道程だが、リドル達は充実していた。

そして遂にネームドモンスターの中でも上位に位置する、魔竜ゲルティスを討伐した。

大勢の民衆からの拍手喝采、国からの勲章の授与と、正に人生の絶頂期だ。


 それからの『栄光の剣』の活躍は凄まじい物だった。

未開の大地とダンジョンの捜索や強力なモンスターの討伐と、八面六臂の活躍だった。

皆、全力で駆け抜けて行った。


 『栄光の剣』の名声は日々高まり、積まれた実績は城壁よりも高いだろう。

それ故に苦境に立たされた。

余りにも依頼が多すぎるのだ。


 此処に依頼すれば間違いないという事から、処理し切れない程に多くの依頼が舞い込む。

特に多いのはモンスターの討伐だ。

冒険者としてのメインの仕事であるが、通常ならば強力なモンスターは軍隊が対処する。

ネームドなどの個体相手には、統制が取れて組織力もある軍隊が相手をした方が確実に討ち取れるからだ。


 しかし、『栄光の剣』は、そんなモンスターすら討伐出来る実力があるので、よく依頼される。

軍隊は非常に金が掛かる。

その維持費と実際に運用された時の費用を考えると、『栄光の剣』に依頼した方が安上がりになる。

他にも素材としてモンスターを手に入れる際、実力者揃いの『栄光の剣』なら価値を落とさずに採取出来るので引っ張りだこになる。

そうなると『栄光の剣』の負担も大きい。


「そう言えば、纏まった休みを取ったのって何時だったか?」


 新発見されたダンジョンを前に、リドルはメイアに聞いてみた。


「……ここの所は全然無かったわね、そう言えば」


 メイアは少し考えた後、そう言った。


「私達だけじゃなく、他の皆もそうだよね……」


 ホウミもちょっと考えてからそう言った。


「やれやれ……。有名になるのは良いが、こうも忙しいのは考え物だな。他の者達にも是非頑張って貰いたいところだ」


 溜息を吐きながら三人はダンジョンの調査に入る。


 実は彼等を悩ませる要因の一つに、他の冒険者達の存在が上げられる。

有名過ぎる彼等に憧れる一方で、敵愾心を持つ者も出て来るのだ。

特に実力のある者達がそうなるだけに質が悪い。


 仕事を奪われたとか、何故自分を加入させないのだとか諸々である。

実力だけなら『栄光の剣』に匹敵する者は確かにいるが、それだけに我が強く協調性の無い者が多い。

メリットよりもデメリットが多い者を無闇に加入させるほど『栄光の剣』も阿呆ではない。


 中には自分達でクランを立ち上げる様な実力派冒険者もいるが、大抵は上手く行かない。

先程ほど挙げた通り、協調性の無い実力者同士でマウントを取り合うから纏まらないのだ。

『栄光の剣』は随分前の『栄光の翼』、『自由の剣』時代からお互いに協議し、じっくりと話を煮詰めて来た。

スカウトする者達も吟味を重ねた結果、今がある。


 『栄光の剣』には全ての依頼を片付けられるほどのリソースは無い。

如何に優秀でも、人数に限りがある以上はどうやっても無理なのである。

そういう時は他のパーティーに流したりするのだが……。

喜んで請け負う者もいれば、憤る者も出て来る。

お下がりを押し付けられて、プライドが傷付けられたとかどうだとか。

『栄光の剣』としては実力を見込んでの話なのだが、プライドが高い冒険者は総じて面倒臭い。

順風満帆に見える『栄光の剣』も、見えない所で色々と苦労しているのである。

 

 そんな彼等に取って、恐れていた事が起きた。

複数のネームドの発見があり、それ等の討伐の為に街を空けた所で今度は別のネームドが現れたと言う。

自分達が不在の時と言う、どうしようもない状況下での出来事だ。

何とか目の前のネームド共を屠り、急いで街へと帰還した彼等の眼に、信じられない光景が映った。


 たった四人のパーティーに、ネームドが倒されたのである。

しかも全員が魔法士と言う。

その内の三人は、嘗て『栄光の剣』から戦力外として、加入させなかった者達であった。


 慢性的に人手不足である『栄光の剣』は彼等の実力を認め、スカウトした。

結果、二人が加入する事となる。

残りの二人は、残念ながら断られた。


 リドル達は久しぶりに、嘗ての幼馴染と再会する。

以前よりもずっと力を付けたマートに、リドル達は喜ぶ。

やっと四人揃ったと。

だが、マートは『栄光の剣』への加入を拒否した。


「何故だ?! 今のお前なら十分に資格はあるんだぞ!」


 昔は敢えて突き放したが、本音では皆で一緒に戦いたかった。

今のマートなら十分にそれが可能だ。

昔の事はちゃんと謝って、これから一緒にやって行こうとリドル達は思っていたが……。


「ごめん。この戦いで理解したんだ。僕の限界を……」


 マート曰く、魔法士でありながら主にネームドと対峙したのはウィンキーとシェスターであり、自分ともう一人の付与術士は支援で精一杯だったと。

 

「後衛でサポートが主体なんだ、それも無理なかろう」


 ネームド相手に、前衛無しにサポートを出来ている時点で十分な実力である。


「ウィンキー達もアタッカーとは言え、同じ後衛だよ? 陰で隠れていた僕達と違って、戦闘の殆どを担当したんだ」


 マート達のサポートを受けながら、距離を取りつつ魔法で攻撃するウィンキー達と、完全に後方支援に徹するマート達。

悲しいが、マートだけではネームド相手に戦闘は無理だった。

『栄光の剣』なら付与術士でも最低限、ネームド相手に自分の身を護る事は出来ただろう。


「それに僕には仲間達とやりたい事、やるべき事があってね。悪いけど、僕はそれを優先したいんだ」


 昔は何処か自信無さ気だった幼馴染は、決意を持った目でそう話した。


「そうか……。お前がそう言うのなら、これ以上無理は言わない」


 それを受けてリドル達も観念した。

マートの意志を尊重したのだ。


 こうして幼馴染達の道は再び分かれた。

だが、それは以前のような置いて行くものとは違った。

それぞれが自分の意志で選択した道だからだ。






「これから忙しくなるけど、皆! 付いて来てくれ!」


 マートは宣言した。

新しいクランを結成すると。

それまでは複数のパーティーを組んで、交流しつつもそれぞれ活動していたが、遂に一つの形に纏まるのである。

ウィンキーとシェスターが抜けてしまったが、寧ろそれはセールスポイントでもある。

此処で鍛えれば、あの『栄光の剣』への加入も可能だと言う事が証明されたからだ。

勿論、相応の努力と才能が必要ではあるが、実績を作ったのは事実だ。


 残った者達で、これからの新人やこれまでやって来た中堅に対してノウハウを与え、冒険者の質を高めていく。

更に才能を腐らせている、原石の研磨もやって行くのだ。

それこそがマートのやりたい事、やるべき事だった。


 これだけ見ると他者に良い様に使われるだけになるかもしれないが、その辺はマート達も理解している。

何故このような事をするのか?

マート達は自分達が『栄光の剣』のような超一流に成れない事を理解し、受け止めたからだ。

良くて一流半、二流が限度だろう。

大概の冒険者なんてそんな所だ。

寧ろ三流なんてゴロゴロしている。

それらを自分達が育てるのだ。


 一流に成れずとも、その一歩手前に。

志はあっても、結局底辺を歩む事しか出来なかった者達を、今よりも上の所にまで引き上げる。

それこそが、マート達の目的だった。


 駄目な自分でも、覚悟を持って努力すれば、一端の冒険者に成れる事を証明する。

本人のやる気と指導さえしっかりしていれば、確かな実力は付けられる事を、パーシィが証明してくれた。

突出した才能が無くても、しっかりとした知識と経験を積めば、長くやって行ける事をローガンは証明している。


 選ばれなかったとしても、這い上がれる者は居るんだという事を、ウィンキーとシェスターは証明した。

だから、この道を突き進むと、マート達は決意したのだ。


 実際問題、マート達の試みは上手く行っていた。

新人達は早期に脱落せず、中堅達も現役を続ける者が多く出た為、慢性的な人手不足が徐々にだが解消されてきた。

更に、実力を上げて来た者の中には、『栄光の剣』に加入する者が出て来るなどあった。


 これは『栄光の剣』から、加齢や怪我の悪化で現役を退く事になった人材を『立ち上がる者達』が受け入れた事で、一流の元冒険者の薫陶を受けた者達が、その才能を開花させたからだ。


 『栄光の剣』は以前と違い、日々の忙しさに謀殺されて、新しい加入者を育てる余裕が無くなっていた。

求めるは才気とやる気のある者達だったが、今では即戦力が求められ、狭き門へとなっていたのだ。

結果、才能は有れど『栄光の剣』に届かなかった者達が出て来るのだが、それを『立ち上がる者達』が引き取り、引退した元『栄光の剣』の冒険者が鍛えると言う構図が出来上がった。


 二大クランと言いながらも、傍目から見ると『立ち上がる者達』は『栄光の剣』の下部組織に見えなくも無い。

だが、彼等の間では対等の関係であった。

如何に強大な力を持つ『栄光の剣』であっても、人数的に限界が有り、足りない所はある。

そこを『立ち上がる者達』が補っているのだ。


 現役を退かざるを得なくなった『栄光の剣』の元メンバーと、『栄光の剣』では見たくても面倒を見切れない人材の受け皿になってくれる『立ち上がる者達』に対して、『栄光の剣』は頭が上がら無かった。

何せ、自分達の代わりに『栄光の剣』に相応しい冒険者を育ててくれるのだから。


「は~、何時も本当に助かっているよ」


 先日大きな依頼を達成したリドルがしみじみと語る。

今では『栄光の剣』の中核と成った彼は、大陸に勇名を馳せ、その結果日々高難易度な依頼を受ける事になっていた。

元メンバーであるメイアと、ホウミは今は育児に集中している為、中々に痛い戦力ダウンをしているので、『立ち上がる者達』から上がって来た実力者の存在は、実にありがたいのだ。


 リドルとメイアは結婚し、ホウミも『栄光の剣』に所属している剣士の男と結婚した。

マートは彼等を祝福した。

そしてマートも、先日パーシィと結婚したのだった。

今日は新しく『立ち上がる者達』から『栄光の剣』へと加入する者達との顔合わせに立ち合っていた。


「相変わらず大変そうだね。君の様子を見ていると、あの時断ったのは正解だったと改めて思うよ」

 

 冗談めかして言うマートに、リドルは苦笑する。


「ちっくしょ~、何も言い返せねぇ。マート達のクランが無かったら、俺達潰れっちまうもんなー」


 『栄光の剣』とてそれなりに依頼を選んでいるが、ギルド本部や偉い貴族、更には国からの要請となると流石に断れない。

最強の冒険者クランにとって、一番の強敵が人間だったなど、笑えない話だった。


「おお、そうだ。ウィンキーとシェスター何だが、遂に年貢の納め時が来たそうだぞ」


「ああ、やっとくっつくのか、あの二人。何だか感慨深いものがあるな……」


「切っ掛けはウィンキーの妊娠だがなー。はぁ、また一人戦力が減って行く……」


 お目出度いが素直に喜べない複雑な心境のリドルである。


「ああ、うん……。でも今度そっちに行く彼等なら、十分穴を埋めてくれるさ。シェスターだって、今よりもずっと気合を入れるだろうし」


「何から何まですまねーな。期待してるぜ? それにしてもまったく、此処の所何かしら面倒事が湧いて来やがる。お陰で休む暇も無い様だ」


「いきなり未解明のダンジョンが複数出て来たり、ネームド級のモンスターが湧いてきたり、国の政変とか色々起きたからね……」


 兎に角色々起きるので、『栄光の剣』だけで無く、上位の冒険者達は彼方此方で忙しくしている。

何処かの国では婚約破棄が切っ掛けで、国のトップが入れ替わったとか、これまで目立たなかった国が良く分からない力で急に台頭して来たとか、話題に事欠かない。


「ガキの頃に夢見た最強の冒険者……一応それっぽい地位に就いたが、やってる事はお偉いさんの使いっ走りとかな……現実は世知辛いぜ」

 

「それでも、しっかりと夢を叶えたじゃあないか。凄い事だよ。今の僕なら素直にそう思える」


「お前だって凄いだろ。その最強の冒険者に認められたのに、それを断ってこんなスゲー組織を作ってよぉ」


「ハハハ、クランの事は僕だけの力じゃ無いし、冒険者として頂点に立てる程の力は無いさ」


「……そうかい」


「そーそー。そんな僕等でも出来る事があって、それをやる為に力を合わせた。そうして今があるんだ」


「ま、その恩恵を十分に受けちゃってるからなー、俺達。ホント頭が上がんねーよ」


「見返りは十分に僕等も受けてるからね。あくまで対等の関係だよ」


「そう言ってくれると助かる」


 今の彼等には嘗てのわだかまりは無い。

対等のパートナーとしての関係を築いている。

何も『立ち上がる者達』も人材の育成と提供を無償でやっている訳では無く、『栄光の剣』からその育成費用や移籍費用を貰っている。

それも相当な額だ。


 それが有るから新人や中堅の育成が出来る。

それに湧き出る強力なモンスターの対処は、『栄光の剣』が担っているのだ。

彼等無くして、この街の存続はあり得ないと言って良い。

故に二大クランの共生が成されている。


「さーて、無事に引き継ぎも終わったし、早速だが明日から新メンバーの彼等と、楽しいモンスター討伐だ」


「お疲れ様。あともう何人かが良い感じに力を付けてるそうだから、その内、紹介出来ると思うよ」


「おお~、そいつは有難い! 期待してるぜ?」


 そう言ってリドル達は、明日のモンスター討伐の準備に取り掛かる事になった。

マートもその場を離れ、帰りの準備をする。

何時の間にか外は暗くなていた。


「もう暗くなってる……そういう時期か」


 ふと、マートは後ろを振り返り、自分の歩んできた道を反芻する。

かつて断絶した道が交わり、多少形が変わったが、共に歩む事が出来るようになった。

これからも色々な事が起きるだろうけど、自分達の選んだ道は決して間違ってはいなかったのだと、そう思った。


 リドル達も大変だが、マート達もこれからやらなければならない事は山積みだ。

新人育成、中堅への指導、実力者の選定などやる事は多い。

尤も、それはマート達が望んだ事だった。


「よっし! 僕も頑張らないとな!」


 改めて気合を入れるマート。

帰って妻の料理を鱈腹食べて、明日への英気を養おう。

軽い足取りで、マートは帰路へと付いた。


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[良い点] 一軍クランと二軍クランで住み分けがされているのは斬新で面白いですね。 [気になる点] マートは過去の経緯やリドル達との良い関係があってこそ 今の二軍監督的な位置に甘んじていられるけど マー…
[良い点] 後味が良い [一言] 良い事ばかりじゃ無いけれど、それでも前を向いて頑張りたいと思えました
[良い点] 面白かった! 限界がある人も居るよね、誰もが大英雄じゃない
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