第九話 信頼の力(お姫様)
健二から質問攻めにあって、すっかり寝落ちしてしまった、目が覚めると案の定、フリッシセス、つまり私の体に戻っていた。戻るのは良いのだが……。
私は何故かメイド達によって拘束されていた。
すると、私の専属メイド、エリカが現れた。
「エリカ!何ですのこれは!早く解きなさい!」
私はエリカに訴えた。しかし、エリカは……。
「うるさいですよ。偽物」
「は……?」
エリカは冷たい眼をしている。
「貴方はフリッシセス様じゃない」
「何言ってんの!私よ!フリッシセス・プリュシレランスよ!」
「違う……。お前はフリッシセス様じゃない」
私がこうやって話している間。少し、違和感を覚えた。
こいつこそ、本当にエリカか?
エリカは私が生まれてからずっと私の専属メイドをしてくれているメイドだ。私が子供の頃こ彼女はまだ12歳であった。彼女は幼いながらもメイドとしてしっかりと私に尽くしてくれた。エリカは私にとって、最も信頼できる存在。私にとって、姉のような存在だった。姉は実際にはいるにはいるが、第一王女である以上、彼女は私と付き合っている暇はない。その代わりにエリカが付き合ってくれた。
だから、彼女がエリカでないことは何の根拠もないが分かる。恐らく、エリカも私が私でない時はしっかりわかっていたであろう。しかし、一旦様子見でもして、私の自我が戻った時、何も言わなかったから、雄二は無害だと判断したのだろう。しかし、何故今エリカはこんな状態なのか、答えは一つ。エリカは今自我を持っていない。
これこそ、誰かが『入れ替わりの術』を使ったのだろう。恐らく、悪意を持って。
私は今、縄によって胴を頑丈に締め付けられて、拘束されている。エレンが隙を見せた瞬間、私は縄を燃やし、拘束を解いた。
「なっ……!」
「熱っ!!!!!」
自分の発した炎によって私の体も燃えた。すぐに頭上にウォーターボール(その名の通り水の玉)を生成し、自分に打ちつけた。
「こんな拘束、解くの簡単よ」
私は少し焦げた身体を治癒魔法で治しながら言った。
「そんな無様な姿でそんなこと言われても、何の感情も湧かんわ」
「ちょっとムカつくけどそんなことはどうだっていい。エリカの身体を返せ!この害虫が!」
「ちょっとやめてくださいよ。貴方もフリッシセス様じゃあないくせに」
「そう言ってる時点で貴方は偽物確定よ」
私は火炎弾を射撃した。
バン!バン!バン!
「うっ!!」
火炎弾は壁、床に当たり、あたりに黒煙がたちのぼる。
私は部屋を出た。
私はどうやらエリカの部屋にいたらしい。出た先がメイド寮だったから判断できた。エリカの部屋には入った記憶があまりないため、すぐには判断できなかった。
「お前ら!捕まえなさい!」
エリカの中に入った何かがそう叫ぶと、部屋から大量のメイドが飛び出してきて、私を捕らえた。彼女らは乗っ取られていないみたいだが、エリカの中に入っているやつに騙されているようだ。エリカは私の専属メイドだけあって、メイドの中ではかなり地位が高い。こういうことも見越してエリカを乗っ取ることを選んだのか。
「ううっ……。このクソメイドが……離せ!この役立たずのゴミ以下が!」
「フリッシセス様はそんな罵倒いうに決まってるだろう……。あれ?フリッシセス様?」
メイドは違和感を感じていた。
この乗っ取っているやつ。息をするように私達を罵倒する……。まるで我がご主人ではないか?と。
しかし、メイドはまだ私を離さない。私は魔法で筋力を増強させ、メイドを振り払った。
私の上には何十人ものメイドが積み重なっていたようで、みんなをのけるのに骨が折れた。
乱雑に。
そのメイドの扱いにメイド達は確信した。
この人はフリッシセスだと。
「何やってんの!さっさとその偽物を眠らせろ!」
沈黙の中エリカはそんなことを叫んだ。それによって、疑いの目は一気に私からエリカに入れ替わる。
「残念ながらみんなの洗脳は解きましたわよ。次は、エリカ。その身体の主を解放してあげないとね」
「っ……。このクソ姫が」
エリカは火炎弾を放った。
「危ないです。フリッシセス様」
メイドの一人が私の前に出て、防御結界を張った。
しかし、火炎弾はその結界を最も簡単に破り、メイドに傷を負わせた。
「うっ……」
「危ないですわよ。あとは私がやります」
私は傷を負ったメイドにサッと治癒魔法をかけた。
「フリッシセス様、いつもと違ってすごく優しい……」
「貴方、後で覚えときなさい」
私は前に出る。そして言った。
「返してくださる?エリカを。素直に返したら、貴方の魂までは傷つけずに返しますけど?」
私は不気味に笑い……。エリカも少しニヤけた。