第七話 正体を明かす(男子高校生)
「フリッシセス様?」
「いや、何でも……」
俺の舌は肝心な時に上手く回ってくれない。
先ほどの言い訳もいい言葉は思い浮かばなかった。
「いいんですよ。フリッシセス様……。いえ、違いましたか」
「へ?」
メイドさんは不気味にニヤけながら、俺に告げた。
「いつまでフリッシセス様のフリをするのですか?」
その言葉を最後にしばらく沈黙が続いた。そして、俺は我に帰ったかのように俺は聞き返した。
「な、何のことです」
「いや、隠す気ないでしょ」
即座にそして、華麗に返された。
その態度はご主人様に対する態度では勿論ない。彼女はもうとっくに確信している。
この人はフリッシセス様ではない。
そんな彼女をこれから、「いや、違う。私はフリッシセスだ」と説得するのは至難の技だ。フリッシセスとは実際に会ったことはないため、彼女がどのような話し方で態度なのか全く知らない。
もう白状した方が良い。
「うん、そうだ。俺は君のご主人様ではない」
すると、彼女は俺に向けて火炎弾を撃ってきた。
「熱っ!」
俺は咄嗟に席を立ち、ギリギリ避けた。しかし、その火炎とフリッシセスの顔の差は一メートルもない。だから、直撃だけはしなかったものの、高熱は肌で感じた。多少、顔に火傷を負ってしまった。生きて寝れるようになったら置き手紙で謝罪しておこう。
しかし、今はこの状況をどうするかだ。メイドは追撃の準備をしている。
俺はまだ、魔術教本をよく読めていないので魔法のイロハは全く理解できていない。なおかつ武器も持っていない。つまり俺ができることはただ一つ。
逃げるしかない。
しかし、メイドさんは唯一の出入り口である扉を背にして立っている。直行でこの部屋を出るのは難しい。幸いこの部屋もかなり大きいため逃げ回る余裕は十分ある。しばらく逃げ回って隙を見てこの部屋から出て、フリッシセスの部屋に逃げて、眠りにつけば、この場は何とかなるはずだ。
俺は180度振り返り、ダッシュで向こうの壁まで逃げた。その間にも同じような火炎弾が二、三発放たれた。しかし、動いてる相手を狙うのは難易度が高く、一発目ほどの正確さはない。
俺は羅列されている本棚の一つの影に身を隠し、彼女の様子を伺う。しかし、どうやってあのメイドさんを動かそうか。
彼女は魔法が使える。魔法というのは一般的に考えればかなりリーチがある。だから、動くことによるリターンはあまりない。彼女にとってはこのまま動かない方が袋の鼠にできて圧倒的有利だ。俺にも何か攻撃手段ができたら彼女を動かすことは可能なのだが。
そう頭を悩ませていると、ある本の背表紙が目についた。
『科学の武器(付録付き)』
異世界語で書かれたそんな言葉。こうゆう世界にもこんなものがあるんだな。
少し開けてみると、付録の説明にこう書かれていた。
『ある謎の人が私は異世界人と名乗って持ってきたある図、それを印刷魔法で印刷されたものを付録にした』
そしてついていた図には明らかに拳銃について書かれていた。言語は英語だ。
その紙のトップには大きく、This was called handgun in my world.と書かれていた。これくらいは流石に読める。腐っても高校生だ。
その図を見ていると、コトッと何かが落ちた音がした。
その音の原因はそこにあった銃でした。銃でした。
何これ怖い。でもこれがあれば牽制としては使える。
俺はそれを拾い上げた。中身に銃弾は運よくある。
これは使える。でも当てたらいけない。殺してはならない。彼女はフリッシセスにとってはきっと大切な人物だからだ。
しかし、何故彼女はそれでも俺に殺気を見せたのだろうか。しかし、あの火炎弾は気を失うことはあれど、死ぬことはない。そんな威力だ。
俺は少し気になったが、今はそんなこて考えている場合ではない。
俺は現状をどうにかするべく本棚の影から姿を現し、銃を構えた。
遅くなりました!次話も遅くなるつもりです!いつ出しても読めるようにブックマークよろしくお願いします!