第二話 こんにちは異世界。(お姫様サイド)
私はプリュシレランス王国の第二王女。フリッシセス プリュシレランスのはずだ。
そんな私が、何でこんな豚小屋なんかで寝ているのだろうか。
「雄二、朝だぞ。支度しろよ」
「な、何ですの!」
いきなり男が入ってきた。その男は眼鏡をかけている中年だった。
「いや、どうしたんだ雄二。その口調」
「な、何でもありませんわ。ところで、朝食は?」
「食卓に出してるけど、とりあえず、俺はもう仕事行くからな。お前も早く学校行けよ」
すると、男は慌てて出ていった。
てか、本当にここはどこなんだ。
もしかして、ここは豚小屋なのではなく、民家なのか?
一般庶民の家なんてあまり見たことないが、こういうものなのだろうか。
とにかく、彼が言っていた食卓にある朝食を探す。家が狭いおかげですぐ見つかった。
そこには、米と何やら茶色い汁物。あと、卵を割って、それを焼いて目玉のように見立てたものやあとミニトマトとブロッコリーが添えられていた。
「ずいぶん質素ですわね」
とりあえず一人で席に座り、朝食を口に入れた。
結構いける。
普段、父上や他の使用人の目線が無いとなるとかなり楽にもなる。それもあるのだろうか。
意外においしい。
ちょっと庶民の生活の好感度が上がった。
ピンポーン
いきなり音が鳴った。
「おーい。熱田―」
どこからともなく声が聞こえる。
「何ですの?どこから鳴っているんですの?この音!」
「おーい!遅刻するぞー」
私がどれだけ尋ねても、その声は答えてくれなかった。
「不親切!」
ようやく玄関のドアというものにたどり着いた。まさかこんなちっさい扉が外と中の境界とは。
扉を開けると、正装を着ている男がいた。
「おい、熱田。はよ行くぞって……。お前制服にまだ着替えてないのか……」
「せーふくって何ですの?」
「何だその話し方。お前、どっかで頭打った?」
何だこいつ。無礼だな。と思ったが、あまり気に留めないようにした。
薄々気づいていた。まだ鏡を見ていないから今の自分の顔がどうなっているかは分からない。しかし、分かっているのは。
私は今はフリッシセスではない。
故に私は王族の扱いを受けないと。
「とりあえず、早く着替えろ。マジで遅刻するから」
すると、男は何かの配慮なのか扉を閉めた。
「……」
とにかく、私は男が来ていたやつと同じような服を家から見つけ出し、大急ぎでそれを身につけて、男が持っていたものと同じ鞄を持って再度、扉を開けた。
すると信じられない世界が私の視界に映し出された。
とても発展している街が見えた。
鉄の塊が魔力も無しに動いてたり、遠くにはとても高い建物も見える。本でよくある未来の世界みたいな景色だ。
それを見て私は確信した。
ここは異世界。
テクノロジーの世界だと。
「わぁ、すごいですわ……」
「何言ってんだ?行くぞ」
私はその男についていった。
そして、私は『エキ』というところについた。『スイカ』という板をかざすことでゲートが開き、そして、『デンシャ』という鉄の塊に乗った。信じ難いがこれは乗り物のようだ。
電車は馬とは比べ物にならないほど速く進みあっという間に学校に着いた。
学校の建物は私の世界のものと比べると質素である。それはそうか。私の世界では学校とはある程度の上級国民が行くもの。もちろん王族も通うのだが。
この世界では国民のほぼ全員が学校へ行くみたいなのだ。それならここまで質素なのは理解できる。
「何だその人の通ってる学校を小馬鹿にしたような顔は」
え?そんな顔してましたか?
門をくぐり、教室へ入った。どうやらこの身体の主は高校生一年生らしい。
間も無くして授業が開始された。ここで私はあることに気づいた。
授業中、教師は黒板に見たこともない文字を書いている。しかし、私はそれを読むことができた。自然にその言葉の意味が脳に入っていく感覚である。
「では、この日本語を英訳するとこうなります。板書しますね」
黒板にはもう一つ別の言語が書かれた。この言語は読むことができない。
今やっている授業は『英語』という言語の授業だ。おそらくこの身体の主は英語を使えない。日本語は使えるのだろうか。つまり、今の私はこの身体の主、すなわち熱田が習得している言語を理解することか?
その調子で数時間授業が終わったのち、学校が終了した。
「いやー今日は午前で終わって楽だったな」
「そ、そうね」
男とまた来た道を歩き、ほどなくして家に着いた。
相変わらず豚小屋のような部屋だ。
それにしても、これのような現象を起こす魔法が私の世界の文献にに載っていたはず。
どこにあったかな。
確か名前は『入れ替わりの術』
これは自分とある特定の人を入れ替えることができる術だったはずだ。しかし、第三者と第三者を入れ替えることはできない。
私は勿論、こんな魔法使ってない。
何故こんなことが起きたのか。
とりあえず私はもし、入れ替わりがまた起きたときのために書き置きを置いた。
その後、疲れ果てて、私はすぐベッドに向かった。
*****
翌日、私はフリッシセス プリュシレランスになっていた。
「夢?いや、その割には記憶がハッキリしすぎですわ」
私は起きて、メイドの朝食の知らせを受ける前に部屋を飛び出し、書庫へ向かった。