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分かりましたか

 どうやらいきなり対処を間違えた私は早々に殿下に心を閉ざされた。

学園から帰った日の夕食後、学園が休みの時の私に割り当てられた学習時間、勉強部屋となっている書斎に殿下は私を入れる事は無かった。


 すまなそうな顔で謝る侍従に私は気にしない様伝える。

侍従からすれば直接の主人である殿下の意向も無視出来ないだろうから腹は立たない。

殿下は私の割り当て時間は真面目に自習しているらしい。

本来は私など必要ない筈だからそれで構わないと言いたいが……。



(そうですか。そう来ますか。子供の様にいつまでも)



 さすがに腹が立ったがそういえば殿下はまだ子供だった。

でもそんな事はどうでもいい。どうせ今年の内に16歳になってこの国の法律上では成人だ。

いずれにしても次期国王ともあろう人間が何と子供っぽい振る舞いをするのか。

女嫌いの癖に女々しいのか。

そう思ったけど入口を閉ざされたら何もできない。



(側妃とは一体何なんだろう……)



 私以外恐らく誰も理解できない問題に悩みつつ私は自分の後宮にすごすごと戻って行った。

偶々だけど今日は第三側妃の私の所に陛下が来る番だ。

私達しか知らない事ではあるけれど陛下とは会話を交わして同じ寝所で休むだけの白い関係である。

それでも色々と話す事はあるもので最近こんな時間も悪くないと思い始めていた。

真面な仕事が無いので堕落しそうだけど。


 そして今日、陛下に殿下との現状を聞かれたので渋々詳細を伝えた。

その後情けない気持ちで陛下に相談する。すると陛下の答えは短かった。



「忘れているのか? 其方は最早伯爵令嬢ではない。

エルヴィンより年長の同じ王族だ」


「……」



 殿下に関しての話題はそれだけで終わった。

その後陛下は王宮での私の暮らしに不自由がないか話題を変えた。

私は陛下と会話しつつも殿下との関係の方向性が見えた事に気をとられていた。



(王宮入りしてから今まで、ずっと委縮しすぎていたみたい)



 私は陛下の隣で眠りについてからしばらく次に殿下と会った時の事を考えていた。

そして、三日後にその機会は来た。


 いつもの様に殿下の書斎に出向いた私を殿下の侍従は申し訳なさそうに謝罪して扉の前に立つ。

しかし、構わず私はその侍従の脇を通って扉に向かった。

侍従は慌てて制止しようとするが当然身分が上の私に触れることは出来ない。



「殿下! 入りますよ!」


 

 私は殿下の書斎をまるで蹴り破ったか様に勢いよく開けた。

殿下が顔を上げていなかったら実際そういう風に思われたかもしれない。

執務机で自習していたらしい殿下は驚いた様に目を丸くしているが構わず私は歩を進めた。



「何をしに来たんです」


「この時間は私の受け持ちの時間です」


「だから、もう来ないで良いと言ったでしょう」


「殿下は何か勘違いされていますわ」


「何を……」


「殿下の元にこうしてわざわざ来るのは私の意志ではありませんよ」


「?」


「陛下のご命令だからです」


「……」


「国王陛下と王太子殿下の命令。どちらが上位か分かりますわよね」


「そういう問題じゃない。貴方に学ぶ事などありませんよ」


「それはそれは。ずいぶんと大きく出ましたね。

前年度王立学園生徒会長だった私に新入生の貴方が、学ぶ事など何も無いと?」


「……」


「そういう訳で、この時間は私が貴方の勉強を見て差し上げます」


「な……」



 絶句する殿下の横に椅子を持って来て私は殿下の自習内容を見た。

どうやら先日行われた試験の復習をしているらしい。



「確か殿下、入学して初めての中間考査が終わった頃ですよね。どうでしたか?」


「貴方に話す事ではない」


「学年3位だったそうですね」


「知っているじゃないですか!」


「貴方の侍従長が教えてくださいましたわ。ちなみに私は一度も3位以下になった事が無いですが」


「……貴方の本性はそれか」


「貴方の本性もそれでしょう? なにせ家格による威厳が無かったもので。

お淑やかなだけでは生徒会長は務まらなかったのですよ」



 私は多少気圧されている様な殿下にアドバイスを始めた。

最初はしかめっ面だった殿下も渋々私の指摘と指導に従い始める。

そのままいつしか割り当ての学習時間は過ぎて行った。



「宜しいですわ。呑み込みの早さは流石です」


「これで今日は終わりですよ」


「そんなに露骨に邪険な態度を取るのは男らしくありませんわよ」


「……」


「では、今日はこれで失礼しますわ。ああ、それと」


「……何です?」


「私達は同じ王室の一員です。年も近い。だから殿下は私に対して敬語を使わなくて結構です。

上から目線を使われたら嫌でしょう? 私も殿下にそうしますから」


「なっ……」


「分かりましたか? いえ、分かった? エルヴィン」


「……」


「返事は?」


「……わかった、アニエス」



 多少睨みつける様な目でエルヴィンは返事を返した。

私はその返事に満足して執務室を出て行った。

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