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私がですか?

「私がですか?」


「うむ。別に不思議は無かろう?」


「と、言いますと……」


「其方が去年までいた場所だ。王族としては今現在学園に一番近い存在だからな」


「学生達は陛下から直接栄誉を賜る事を望んでいると思うのですが……」


 

 私が今陛下とお話ししている内容は先日エルヴィンと話していた話題と同じだ。

学園で行わる剣技会の事である。

そして私が陛下から命じられたのは王室からの来賓として私が学園に出向けという事だった。


 剣技会とは剣の腕に自信のある在校生が強さを競う毎年恒例の大会である。

一定のルールに従って戦うもので予選を勝ち抜いて来た者達だけが参加資格がある。

ちなみに魔法も使用は認められている。

非力な女子の参加も認めているからだ。


 剣で身を立てたい一部の下級貴族や優秀な平民にとっては卒業後の就職に有利になる重要な機会でもある。

学園の単なる一行事と軽く考える事は出来ない。


 そして、上位優勝者には国王陛下から直接褒賞を頂くことが出来る。

その陛下の代わりをやれという事だ。

王室にとっても未来の有能な臣下の顔を知る機会である。



「そんなお役目を私がしていいのでしょうか」



 今の在校生はそれこそ私にとっては在籍していた時の後輩ばかりだ。

要するに在校生の2/3くらいはおそらく私の事を知っている者達である。

ハッキリ言って威厳が無い。



「いいに決まっている。其方の身分は一年前と違うのだから。

学生達も私の様な年寄りより麗しい乙女から褒賞を与えられた方がいいだろう」 


「そんな事……」



 側妃としては笑えない冗談を云う陛下の年齢は40代後半である。

エルヴィンは国王陛下が30になってから誕生した遅い王子なのだ。

何故その年齢になってようやく、というのは事情がある。

いずれにしても若いとは言えないが年配とも言えない。



「有能な其方もエルヴィンの相手だけでは流石に暇を持て余しているだろうしな。

そろそろ王室にも慣れて来ただろう。云わばこれも王族としての其方の新しい仕事の一つだ」


「……承知致しました、陛下」



 そういう言われ方をされたら何も言えない。

まあ、陛下が云った時点で全ては確定してはいるんだけど。

私は陛下の御前を失礼するとそのままノーラ様の後宮に向かった。

お茶会を兼ねた一部仕事の引き継ぎである。


 ヒルダ様とノーラ様は無聊を託ちぎみの私を気遣って妃としての仕事の一部を私に任せる事にした。もちろん陛下の許可済みだ。

今回私がノーラ様から移管されるのは一部の孤児院の運営の責任である。

直接の経営者と云うより実質的には名誉職に近いけど不正な事が無い様に目を光らせたり適切な運営を監督する役割でもある。

福祉が充実しているこの国にとって重要な仕事だ。


 丁度引き継ぎ関係が終わる頃に別の仕事から戻ってきたヒルダ様も合流してお茶会に変貌した。

初めてのお茶会からもう5回目で私にとって楽しみなひと時になっている。

その場で私は以前から聞きたい事をお二人に聞いた。



「ところで、エルヴィンに婚約者候補は居ないのでしょうか」



 居ないのは間違いないので候補という言い方で聞く。



「国外から、では聞かないわね」


「そうね。国内の有力貴族というなら何人かいるけど。

丁度、レッシュ侯爵とヴェンデル伯爵の御令嬢達が同じ年だったわ」



(何だ。やっぱりちゃんといるじゃない)



 国内貴族は基本、王室と縁を結びたいので王子や王女の誕生に自分の子供の誕生もなるべく合わせる。

私は安心して無駄と知りつつ人となりを聞いた。

するとヒルダ様は知らなかったけどノーラ様は知っていた。



「お二人共優秀でなかなかの器量よしと評判よ。特にレッシュ侯爵の御令嬢は生徒会に所属したと聞いているわ」


「あなた、本当によく知っているわね」


「当然よ。将来の親類になるかもしれないのだから」


「私は陛下と子供と自分の仕事の事で頭が一杯なのだけど」


「いいのよ。そういう事は私が気を払っておくから」



 呆れた様に言うヒルダ様にノーラ様がこともなげに答える。

多分私の時もそうだったのだろう。



(あれ? でも初対面の時、ヒルダ様と違ってノーラ様は私の事を知らない風だったけど)



 そう思って聞いてみると知らないふりをしていたとあっさり答えられた。

ヒルダ様と私に対する役割分担を決めていたらしい。

事実、側妃だけの初めてのお茶会の時色々と聞いて来たのはノーラ様の方だった。


 本当にいいコンビだ。

でもお二人は味方だと頼もしいけど敵に回すと怖い気がする。

必然的に2対1になるから。


 それはともかく、その後私はその御令嬢達を記憶に留めておく事にした。



(もしかしたら剣技会の時に目にする機会があるかもしれないしね)



 エルヴィンの未来のお嫁さんにして王室の一員の可能性がある令嬢を直にこの目で見たい気がする。

知っていれば余計なお世話かもしれないが後々彼との仲の手助けも出来るかもしれない。

決して野次馬根性ではない。……ほんの少しあるけど。

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