ナレア王女の物語
1. デネボラ
ライオネル王国は山々に囲まれた盆地にある、小さな国です。大地の北の果てにあり、目立った産業も無いため、ライオネル王国は豊かな国ではありません。ナレアは、そのライオネル王国の王女です。ですが、彼女は十一歳になるまで、王国内のノエル村にある、教会の孤児院で過ごしていました。
孤児院には、ナレアの他に三人の子供がおりました。ウィル、それにジョアンとミーア、皆ナレアよりも年上でした。時にけんかもしたけれど、大体はわずかな食糧や物資を分け合って、本当の兄弟姉妹のように仲良く暮らしていました。
やがて、一番年上のウィルは成長すると神父様の伝手で、遠く離れた町のシルベスター商会で働き始めました。それから間もなく、ジョアンとミーアも王都の鍛冶屋の夫婦に養子として引き取られます。こうして、ナレアは一人取り残されてしまいました。
そのナレアをなぐさめてくれたのは、彼女の親友、デネボラでした。デネボラは人ではなく、ぬいぐるみです。モフモフしていて、妙に尻尾の長いライオンの姿をしていました。神父様によると、クリスマスの朝、まだ赤ん坊だったナレアはデネボラに守られるようにカゴに入れられて、教会の前に置かれていたのだそうです。
デネボラは、いつでもナレアの話しを聞いてくれました。仲の良いミーアとケンカしてしまったことや、夕食のスープを少しだけ余計に取ってネコにあげたことなどなど。取り止めのないことでも、デネボラに話すと気持ちが落ち着くのでした。
デネボラは夜になると、ナレアの夢の中で、光輝く大きなライオンになります。そうして、お化けが出て来ても、ナレアを守ってくれるのでした。それに、時にはナレアを背中に乗せて夜のノエル村の上空を飛び回ってくれました。満月の明るい夜、デネボラの背中から見える村の家々の灯火やぼんやり浮かび上がる教会はとても美しく、ナレアのお気に入りでした、
そんなある日のこと、見おぼえの無い農民の夫婦が教会を訪れました。それは、ライオネル王国の王ニコル三世とメアリー王妃だったのです。
二人がお忍びで教会に現れたのには、理由がありました。仲睦まじい二人の唯一の悩みは、子供を授からなかったことでした。そんな二人の同じ夜の夢の中に神様が現れて、こう言ったのです。
「王都の東にノエル村がある。そこに教会があり、一人の少女がお前たちを待っている。その少女を、お前たちの娘とせよ。」
二人がその教会に行くと孤児院が併設されていて、ナレア一人がそこで生活しておりました。そこで、王と王妃はナレアを王城に連れて帰り、養子としました。もちろん、デネボラもナレアと共に王城へ行ったのでした。
ナレアにとって、王城での生活は楽しいものでした。王と王妃はナレアにとても優しく、ナレアは生まれて初めて親の愛を知りました。ナレアもそれに応えようと、慣れない作法や教養をがんばって勉強しました。
2. 王都での出来事
しかしそれから三年が過ぎて、王城での生活に慣れてきたナレアは、ふと疑問を感じました。教会の孤児院にいた頃は、仲良しの子供達ですら食糧をうばい合ったのに、王城に来てからは、好きなだけ食べられます。王城の外の町「王都」は、どうなっているのでしょうか?
そこである日、誰にも告げずに王都に出てみました。孤児院のあった教会は田舎の集落の中でしたし、王城に来てからは一人で外出したことは一度もありませんでした。だから、一人で町を歩くのは、生まれて初めてです。いや、今回も一人ではありません。デネボラだけは、バッグに入れて連れて行ったからです。
王都には活気があって、みんな豊かに生活しているように見えます。食べ物を売っている店もあり、おいしそうなにおいがしてきます。そんな町を歩いただけで、ナレアは楽しい気分になりました。
歩き疲れて王城に戻ろうとした時、若い男がナレアの前を通り過ぎました。かつて同じ孤児院で過ごした、三歳年上のジョアンです。すぐに声をかけようと思ったのですが、彼の顔があまりに暗く見えたので、声をかけるのをためらってしまいました。
ジョアンは、複雑に入り組んだ細い路地を歩いて行きます。ナレアは脇目も振らずに、ついて行きました。細い路地は活気が無く、たまに見かける人はみんな暗い顔をしているので、ナレアは怖くなって来ました。しかし、ナレアがもう引き返そうと思ったその時、ジョアンはみすぼらしい小屋に入って行きました。
その小屋のドアの前に来ても、ナレアはノックするのをためらいました。すると、中から怒った声が聞こえて来ました。
「こんなんじゃ、全然足りねえぞ。お前とお前の妹にくれてやるメシはねえ!」
「オレはいらないから、妹だけにでも…。」
「そうだなあ、コイツは病気だから安いけど、奴隷商人に売っぱらっても良いのだぞ。この無駄飯喰らいめ。」
男がそう言った後、鞭がビシッと打ち付ける音がして、直後に、
「キャアー!」
と女の声で悲鳴が聞こえて来ます。ナレアは思わず耳を塞いでしまいました。その後、ジョアンが、
「頼む。もう一度行ってくるから、それだけは勘弁してくれ。」
と言うと、男が怒ってジョアンに命令します。
「だったら、さっさと行け!」
ドアが開くと、ジョアンと酒に酔った赤ら顔の男が出てきました。ジョアンがナレアに気づいて、驚いて思わず大声で言いました。
「ナレア、どうしてここにいるんだ?お城に行ったんじゃ無いのか?」
赤ら顔の男が、ジョアンの声を聞きつけて、
「ナレア?…そうか、あの養女のお姫様か。これは良い金ヅルになるわい。」
と言うと、ナレアを力づくで小屋に連れ込もうとします。
ジョアンは必死に男を止めようとしましたが、男に殴られて気を失ってしまいます。足がすくんだナレアは男に捕まって、小屋に引きずり込まれてしまいました。
3. ミーアとの再会
小屋の中には、ミーアがいました。ナレアより一歳年上のミーアは、お姉さんのような存在でした。でも、ミーアは孤児院にいた頃から病気のため、いつもベッドで寝ていました。そして、この時もミーアは干し草の上で横たわっていました。
ジョアンに養子の話が出た時、ジョアンは、
「妹のミーアも一緒に養子としてくれて、ミーアの病気を治してくれるなら。」
との条件を付けて、ミーアも連れて行ったのでした。ナレアは、それまで二人が兄妹だなんて聞いたことがありません。ミーアの病気を心配していたジョアンの、作り話なのでした。
だから、二人が兄妹として一緒に養子になることが決まった時には、
「これでミーアの病気が治療出来る。」
と、ジョアンは泣いて喜んでいたのに…。ミーアは、孤児院にいた頃より顔色が悪く、治療してもらえたようには見えません。それどころか、鞭で打たれたような傷がいくつか見えました。
赤ら顔の男は、ナレアと気絶したジョアンを引きずってくると、ミーアが寝ている干し草の上に投げ出しました。そうしておいて、
「これで、オレにも運が向いて来たぜ。」
と言うと、小屋に外から鍵をかけて、どこかへ行ってしまいました。小屋には一つだけ窓がありましたが、格子がはめられていて、外へ逃げ出せそうにありません。
ミーアは、困惑しているナレアに話しかけました。
「ナレア、お久しぶりね。あなたは王城に行ったと聞いていたのに、なぜこんな所にいるの?」
そこでナレアは、王城をこっそり抜け出して王都に出たこと、ジョアンの姿を見たけど話かけられずにつけて来たことを説明しました。
すると、ミーアはため息をついて、言いました。
「王城の外は孤児院と変わりなく、多くの人はお腹を空かせているわ。いや、あの孤児院みたいに良い人ばかりではないから、もっと大変。王都の表通りは、見かけでは活気があるけど、本当はみんな生きて行くのがやっとだと思うわ。」
それから、孤児院を出てからのできごとを話してくれました。
「私たち二人を引き取った町の鍛冶屋の夫婦は、その後間も無く、借金の形に工房を取られたの。義理の父は、ジョアンを工房でこき使おうとしていたらしいけど、思わくが外れたみたい。義理の母は、私を治療して値を上げてから、奴隷として売り払うつもりだと言っていたわ。だけど、貧乏に嫌気がさして家を出て行ってしまったのよ。」
とんでも無い話でした。でも、その後の話はさらにナレアを驚かせました。
「義理の父と言うのが、さっきの男よ。父は動けない私を人質にして、ジョアンにスリをさせているの。かわいそうなジョアンは、私のためにここから逃げられず、本当に申し訳ないと思っているの…。」
ミーアは自分の話が終わると、今度はナレアに王城での生活を聞かせて欲しいとせがみました。
ところが、ナレアが話そうとした時、突然小屋に数人の騎士が入って来て、そのうちの一人がこう叫んだのです。
「通報のおかげで、ナレア姫を発見した。でも、姫は既に犯罪者どもに殺されていたぞ。」
ナレアは混乱しました。私が殺されたって、どう言うこと?
でも、ミーアは直ぐに状況を理解しました。
「父と騎士達はグルだわ。ジョアンと私がナレアをさらったことにして、父は通報者として賞金をもらうつもりよ。そして、孤児から王女になったナレアに反感を持つ騎士達は、私達があなたを殺したことにして、あなたを殺してしまうつもりだわ。早く逃げて。」
ミーアの声の最後の方は絶叫でした。
ナレアは、ますます混乱してしまいました。それに、騎士達に小屋の入り口を固められ、ナレアが逃げられるところはありません。
ついに、一人の騎士に体を押さえつけられて、もう一人が剣を振りかざして来ます。ナレアは叫びました。
「デネボラ、助けて!」
すると、小さなぬいぐるみだったデネボラが、たちまち光り輝く巨大なライオンの姿になりました。ナレアが夢の中でいつも見て来た、デネボラの姿です。
デネボラは「ガオー」とひと吠えすると、その鋭い前脚でナレアに襲いかかった騎士を剣ごとはじき飛ばし、後ろ脚でナレアを押さえつけていた騎士を蹴り飛ばしました。ナレアを危機から救ったデネボラは、その長い尻尾で残りの全ての騎士と赤ら顔の男を打ち倒しました。
こうしてデネボラは、今度は夢ではなく現実の世界で、ナレアを救ってくれたのです。その後、ナレアとミーア、それにまだ気を失っているジョアンを、長い尻尾を使って大きな背中に乗せると、騎士達と赤ら顔の男を尻尾でしばり上げて、空へ飛び立ちました。
ナレアとミーアは、空から見える王都や王城の眺めにうっとりしましたが、王城にはあっという間に着いてしまいました。すると、気を失った騎士達と赤ら顔の男を縛りあげていた尻尾の端が、自ら城壁に巻き付き、デネボラから外れました。デネボラは、新しく生えてきた尻尾で三人を下ろすと、元のぬいぐるみの姿に戻りました。
ナレアが、ぬいぐるみになったデネボラをだきしめて頭をなでながら、
「助けてくれてありがとう。」
と言っているうちに、お城の人達がかけ寄って来ました。ナレア王女が突然いなくなって、お城は大騒ぎだったのでした。
ナレアはお城の人達に、縛り上げられている騎士達と赤ら顔の男を監獄に、ジョアンとミーアを客室に案内するように告げると、両親であるニコル三世とメアリー王妃に報告に行きました。
王と王妃は、失踪したナレアをとても心配して、食事がのどを通らないほどでした。無断で一人で城を出たナレアをしかった後、ナレアの話を聞いた二人は考え込みました。
ライオネル王国の貴族達や、外国の王様たちからは、国民を大事にし過ぎていると言われる二人でした。それでも、国民はまだ貧しいことを思い知らされました。
それに、ナレアに反感を持っていた騎士達の存在も、二人には驚きでした。ライオネル王国は王、貴族、騎士、平民の身分に分けられてはいるけれど、便宜上のことと考えていました。ですが、少なくとも一部の騎士は平民に対して差別意識をもつことが、今回の事件ではっきりしました。
そこで、今回の問題を起こした赤ら顔の男とナレアに直接おそいかかった騎士二人は無期懲役、それ以外のこの件に関わった騎士を追放して平民とし、騎士団も縮小することにしました。そして、騎士団の縮小で浮いたお金で、貧しい人々に与える食糧を買うことにしました。
ジョアンについては、自らスリをして来た罪を申し出たため、罰として終生ナレアの護衛をさせることにしました。また、その「妹」であるミーアも連座で、罰としてナレアのお付きの女中として働かせることにしました。もちろん、その前に治療して働けるようになってから、との猶予付きです。
そして、ミーアは主人となったナレアから、デネボラの活躍を秘密にするよう言われました。もっとも、この事件の関係者…騎士達や赤ら顔の男、ニコル三世とメアリー王妃、それにジョアン…ですら、自分が見たり聞いたりしたことを信じられなかったのです。だから、ミーアがデネボラの真の姿を話しても、誰も信じないでしょうけど。
4. 侵略と反乱
それから三年間、ライオネル王国は平安を保っておりましたが、となりのアストラル王国では大変なことになっていました。国境から、デルモニア帝国が侵略して来たのです。
侵略されたアストラル王国は、王族も騎士も皆殺され、略奪されました。そこで立ち上がったのが、レナードです。彼は民衆を率いて戦い、ついにデルモニア帝国軍を追い払いました。そして平民だった彼を、民衆が王様にしたのでした。
十七歳になったナレアは、そのレナード王と婚約しました。ライオネル王国が彼を支援して来たこともあり、小国同士が結びついて助け合うための政略結婚です。
ナレアは、婚約するまでレナード王を見たことも無く不安でした。でも会ってみると、レナード王は英雄とは思えないほど、おだやかな好青年でした。それになんと言っても、レナード王にも子供の頃から大切にしているライオンのぬいぐるみがある、と聞いたので親近感が湧いたのでした。
次第に話がはずむようになり、時々訪れて来るレナード王とお忍びで町へ出かけることもしばしばでした。以前より少しだけ豊かになった町の屋台でおいしい食べ物を買い、そのまま歩きながら食べる。二人とも元々平民なので、こんな気ままなデートは肩の力が抜けて楽しいのです。
ところが、そんなある日のこと、突然デルモニア帝国軍がライオネル王国に侵攻して来たのです。王都はデルモニア帝国の軍隊に囲まれてしまいました。ニコル三世はすぐにアストラル王国に使者を出しましたが、いつ援軍が来るのかわかりません。
ナレアもジョアンを護衛にして、お忍びで王都の様子を見まわります。しかし、そんな時に反乱が起きてしまいました。三年前にナレアを殺そうとした騎士の仲間が、追放されたことを逆恨みして、デルモニア帝国軍と同調したのでした。
ナレアとジョアンは、人の流れに紛れて王城に帰ろうとしますが、反乱軍に見つかってしまいました。二人は必死に逃げましたが、ついには囲まれてしまいます。ナレアは、夢の中以外では三年ぶりに叫びました。
「デネボラ、助けて!」
デネボラは、再び光り輝く巨大なライオンの姿になると、ナレアとジョアンの周りにいた反乱軍を倒しました。しかし、反乱軍はまだ隠れているかも知れません。そこで、デネボラはナレアとジョアンを背に乗せると、王城へ向けて飛び立ちました。
ところが、ちょうどその頃、ナレア達がいたすぐ近くの城壁がデルモニア帝国軍の手に落ちたところでした。デネボラはまだ城壁よりも低い高度を飛んでいます。
それを見たデルモニア帝国の兵士は、弓矢でデネボラを狙って来ました。たくさんの矢がナレア達に向けて飛んできますが、皆デネボラの尻尾で弾き飛ばされてしまいます。いえ、たった一本だけ尻尾から逃れた矢が、ナレアの胸に深く突き刺さってしまいました。
その直後、別の輝く巨大なライオンが飛来しました。レナード王を乗せたレグルスです。レグルスから流星のように光線が降り注ぐと、城壁にいたデルモニア帝国軍は一瞬で壊滅しました。
しかし、まだデルモニア帝国軍は押し寄せて来ます。危機を脱したデネボラは倒れたナレアを乗せたまま王城に向かい、レナード王は残りの敵と戦うため、城壁の外へ出撃して行きました。
5. エピローグ
ようやく侵略軍と反乱軍を撃退して、ニコル三世がレナード王を伴って帰城したのは、その翌日でした。ナレア王女はウエディングドレスを着せられて、ぬいぐるみに戻ったデネボラと共に棺の中で二人を待っていました。
ニコル三世とメアリー王妃は泣きはらして、死出の旅に出る愛する娘に最後の挨拶をしました。その後に、レナード王が二人に婚約者として挨拶したいと申し出て、受けいれられました。
王城の人々が見守る中、レナード王がナレアに何か声をかけて、キスをしました。すると、一瞬二人が光輝き、辺りが明るくなったように見えましたが、間も無く光は消えてしまいました。しかしその時、ナレアは棺から起き上がっていたのです。
それからひと月後、二人の結婚式がとり行われました。その後、二人は人々の歓喜の声につつまれて、ライオネル王国を出発しアストラル王国に到着しました。ミーアとジョアンも、ナレア王妃のお付きの者として、アストラル王国までやって来ました。
ようやく、騒ぎが収まって日常に戻ると、ミーアはずっと不思議に思っていたことをナレアにたずねました。
「ナレアが生き返ったのは、レナード王のキスのおかげなの?」
「私もそう思っていたのだけど、レナードは違うと言ったわ。『私でも、死者を蘇らせることはできない』ってね。」
「でも、ナレアは確かに…。」
「私は、自分が死んだと思い込んでいただけらしいわ。レナードにキスされて、びっくりして起きちゃったんじゃないかって。…私は死なないそうよ。」
「えっ?」
「レナードは、本当は神様なんだって。この世界と、男女の人間を作った後で、不死である彼自身の伴侶…女神を作ったって。それが私。レナードは『男の自分は、秩序にこだわる。世界を維持するには、それは大切なんだけど、何かが足りないと思ってた。人間を見ていたら、それは女が持つ母性の慈愛ではないかと思った。だから、あなたを作った。』なんて言ってたわ。」
ナレアは、ミーアの今後についても話しました。
「レナードによると、そのうちに私とレナードは、精霊達と共に、神の世界へ引っ越すらしいわ。その時には、ジョアンとミーアに私達の影武者になってもらって、アストラル王国をまかせるそうよ。いずれはライオネル王国もね。そうなっても、時どき遊びに来るので、お願いしますね。」
そう言うと、ナレアは頭を下げました。
ミーアはもう一つ気になって、ナレアにたずねました。
「精霊達というのは、あのライオンのぬいぐるみのこと?」
「そう。デネボラは精霊なんだって。それに、レナードお気に入りの精霊はレグルスというのだけど、やっぱり普段はぬいぐるみなんだ。他にもいるんだけど、まだ覚えきれなくて…。」
ナレアは、そう言って笑いました。
こうして、アストラル王国とライオネル王国には、神様と女神様、それに精霊達の加護の元、永く平和な日々が続いたそうです。いや、デネボラ達が空を飛ぶ小さくて平和な国が、今もどこかに存在しているのかもしれませんよ。
おしまい
作中で活躍するライオンのぬいぐるみ「デネボラ」は、「獅子座の尻尾の星」の名前からとりました。また、レナード王のぬいぐるみ「レグルス」は、「獅子座で最も明るい星」の名前です。
獅子座は春の星座ですが、11月下旬頃に見られる「獅子座流星群」も有名です。そんな星空をご覧になった時に、この物語を思い出して頂けると嬉しいですね。