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砂東が何が起きているか分からないような顔をしているの見て、吉田は砂東の肩を叩く。
「…マノン、とりあえずこいつゲストとして回線に混ぜてやってくれないか」
「そっか!やり取りが分からないと見学にもならないよね!はじめちゃん!個人AIのナンバー教えてくれる?マノンたちのホームに、お試しだけどログインさせるね!」
マノンは言いながらも次々に電子機器を操りながら話を続ける。
砂東が番号を伝えると直ぐに…
“リリリリリリッ”
《Mサンヨリ招待ガ届キマシタ》
砂東は招待に従い手のひらに収まる程度の四角い板の様な機器を操作する。
“……ッジ…ピコンッ”
《ゲストガログインシマシタ》
『先ほどはどうも、これからは名前は使わないので私のことはレッドと』
「赤銅だ」
吉田が助手席から小さな声で教えてくれる。
『では、行動開始です。現場は警備部一班の…ジャックですね…すんなり入れてくれるでしょう』
赤銅が多くの雑踏の中進んでいる音がする。
『どうも、ジャック。なかなか大変そうじゃないですか』
『……赤銅か…なんでここにいる…』
ジャックと呼ばれた相手の嫌そうな声が通信越しでも分かった。
『人質が何人かいるみたいですね、危ないのは左腕を電子義手に改造した男ですかね…他仲間が3人ですか』
『…何で…まぁ、そんなこと聞いたところで仕方ねぇんだろうな。人質はあの銀行の従業員5人、客が6人だ』
『もし、お困りでしたらこちらに交渉人がいるのですが、どうです?』
「赤銅さん…中の様子知ってたんですね…」
「そうゆう奴らなんだよ」
吉田が無気力に砂東に告げる。
「そうゆう奴っていうか、ここに来るまでにあたしが情報収集してまとめて送っただけだよ!」
そう笑いながら話しつつ相変わらず手の動きは止まらない。彼女は車に乗ってからずっと情報収集に徹していたわけだ。
『交渉人って、その女の子?』
『女の子で申し訳ないです。アザリアと申します。仕事はしっかり致します』
『……赤銅、いっつも違う綺麗なねぇちゃん連れてるよな』
ジャックの疑うような声色だ。
「アザリアちゃんは、ゆかりちゃんだよ!話しかける時はパープルって呼んであげて!」
砂東はあっけにとられるしかない。
何故なら、先程少し聞いた彼女の声はとても低かったのだ…今通信から聴こえた声は、もっとずっと高い声だった。