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吉田とさとうを乗せた静かなドライブが進む。
「あ、次の角曲がってくれ」
急に吉田が声をかける。
「あ!はい!」
さとうは、ハンドルに手をかけオートモードを解除する。
《…軌道ヲ逸レマシタ…》
車の中に無機質な機械音が流れる。
おおよその道路には電磁レールが埋め込まれていてそれに応じて車は浮くように動くようになった。タイヤは収納されて必要な時に使うような設計になっている。
その為、危険な運転は減りほとんどをハンドルから手を離した状態で平気になった。速度も全ての車が同じため渋滞も無くなった。
今は最初に入れていたルートから外れてしまった為、左右曲がる時や停まる時にだけ操作が必要になっている。
「ルートそれてますけど…」
「そこだ、そこで停まってくれ!」
吉田に言われて、一時停止スペースに停まる。
“ガチャッ!バタンッ!”
「Hi!ガンさん!アイスコーヒーでいいよね?ブラック?あれ?誰この人!!車、間違えた!?Oh my god!!」
「…合ってるよこっちだ、こっち、そいつはさとうだ。俺の後釜」
勢いよく、乗り込んできたのはイエローブロンドの女の子。マノン。
「Yeah!hi!さとう!sugar?名前は?」
「あ、その砂糖ではないのですが…名前は、はじめです」
「OK!はじめちゃんね!あたしはManon・Sofia・Duboisごめんだけど、はじめちゃんの分のコーヒー無いよ!いるって知らなかった!」
「…気にすんな。いつまで持つかもわからん。さとう君や、当初のルートに戻ってくれぃ」
「は、はい…」
元のルートで車は再び走り出した。
走り出して直ぐに、マノンはリュックから色々な機器を取り出しはじめる。
「…もしかして…さとう…はじめ…Japaneseサムライ?」
作業をしながらも、マノンは喋り続ける。
「あ!いえ!それは、斎藤一ですね。よく間違われるんですけどね…名前は同じ漢字ですよ」
「お、確かに言われてみればそうだな…さとうは?どのさとうだ?」
「え?さとうにもいっぱいあるの?日系だと、漢字いっぱい凄いね!ここJapanesecolonyだから驚くよ!」
マノンは驚きながらも手を止めない。
「…あぁ、これが面倒なことにさとうの方は普通ではなくて、すなにひがしで砂東なんですよ」
「…ややこしい名前しとるねぇ、キミ」
のんびりとコーヒーをすする吉田。
「すなにひがし…どんな字か分からないけど、はじめちゃんって呼ぶね!その内、通信の時の名前とか決めると思うけど!」
“ピピピピッ”
マノンは眼鏡の右側にふれる。それから、空中をなぞるような動作をする。
「Hey!ガンさん!Bossとゆかり、もう着いてるって!」
「そーかい、こっちもあと少しだわ」
砂東が、あっけにとられているうちにどんどんと話しは進んで行く。