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吉田に付いて行く。さとうと同じく猫背で、ひどくがに股、ダボダボのスーツを着ている。50は過ぎていそうなおじさんだ。
「今から行くのはとりあえずの入口だからな」
「はい」
受付の真後ろへ進み、柱の影へ移動する。
「ここで、止まれ。あそこカメラな、こっち見てない時…進め」
そう言って、すっと移動して柱の先の扉を開けて中に入る。非常階段のような薄暗い場所だ。
「ここは普通に降りて大丈夫。地下駐車場まで行くぞ」
「…はい…エレベーターとかは…」
「普段はいいけど、今回みてぇにお呼びがかかったらダメだな」
「…お呼び」
「よし、出る前に周囲の確認。で、こっちの端を歩いてけ」
扉から出て直ぐに駐車場の壁沿いに駐車してある車の後ろの端を歩かされる、さとう。
「…何故こんな端っこを歩いているんですか…」
「キミが新たに配属された部署は秘密が多いんでな。お呼びがかかった場合は秘密裏に動かにゃならん。ここ、3台使って良い車だ。絶対正面から乗り込むなよ」
そう言って、何の確認も無しに吉田は助手席へ乗り込んでいった。
「…何故正面から乗ったら駄目なんです!」
「正面から乗ると人が消えた風に見えちまうからな」
「何を…!」
「運転してくれぃ。目的地は入れた」
渋々、運転席に乗り込む、さとう。
「運転は良いんですが、説明をお願いします!」
「へぇ、へぇ。とりあえず前、出してくれや。そんで完全に出たら一時停止して後ろ見てみろや」
言われた通りにするしかない、ゆっくりと車を前に進めて一度停まる。
そこには、他の2台は見えずなにも停まっていない空の駐車場があった。
「…こ、これは…スペースマッピングですか!?」
「そうそう、すぺ……なんちゃら…だよ」
何のことか分かっていないような吉田。
「…凄い緻密だ…映像は…あそこか…これは、いったい誰が!?」
「あぁ…その内わかるだろうよ、これから会うんだしよ、それよか、早く出発してくれ」
「は、はい!」