緊急事態1
後半まで来ました。
最後までお付き合いよろしくお願いします!
ちなみに見てくださる時間を考えた結果、17時が妥当と判断しました。
「へぇ~魔法は使いすぎると具合悪くなるんだ」
「ワコ様は聖女様なので、普通の人の二倍は使えるそうですよ」
書斎で勉強中、メアリーさんとは順調に仲良くなった。私はメアリーさんに呼び捨てで良いと言っているが、本人が拒んでしまう。私はもっと親密になりたいのだけど、残念だ。
「メアリーはどんな魔法が使えるの?」
「アタシは風を吹かせることができますよ!それっ」
読んでいた本のページが微風と共に捲られた。
「すごい!」
「へへ、ありがとうございます。実は棚の隙間の掃除に使えたりと、この魔法は結構便利なんですよね。もちろん治癒魔法には敵わないですけど」
「私の住んでた世界には魔法なんて無いから全部新鮮で凄いよ……」
僅かなお喋りの後、再び私は本を読みだした。あの日以来ろくに目を合わせることが出来ないが、ロイさんは別に普通に接してくる。自分だけ変に意識していて情けなくなる。
「体内に瘴気が発生して最悪死に至る……?」
本に書かれている魔法の過剰使用の副反応が恐ろしすぎて続きを読む気になれない。
「安心してください、休息をとることで瘴気の発生を抑えることが出来ますから。でも体内を蝕むと、そこから腐っていくなんて聞いたことがありますけど……ワコ様?」
ボロボロになる自分を想像して寒気がする。言われてみると、あの全く眠れなかった日は治癒の終了後に眩暈が起きて気分が悪かった気がする。寝不足だと勝手に解釈していたが、本当は体に瘴気が充満して調子を狂わせていたのかもしれない。
「そっか……使いすぎないように注意しないと」
限度がわかっていないからどこまで消費したら止めるべきなのか不明だが、無理はしないでおこうと胸に誓っていると、ふと新聞が目に入った。大見出しに大きくアシュリーの記事が書かれている。
「このアシュリーって泥棒はいつ捕まるのかな?人を殺してまで金品を盗む理由も気になるし」
「ワコ様は毎日新聞まで読まれて…大変勉強熱心ですね」
「情勢を知ると国の状況がよくわかるからね」
読みたいところだけ読むと、私は本棚を掃除しているメアリーさんに話しかけた。
「そういえば、どうしてメアリーは私の専属メイドになってくれたの?異世界から来た何者かわからない人間の専属になるなんてチャレンジャーだわ」
メアリーさんは困ったように眉を下げた後、話し始める。
「実は私には妹、たった一人の家族がいるんです。でもあの子は昔から体が弱くて…薬が必要なんですけど普通の仕事じゃ厳しくて。この仕事は給料も弾みますし、何より嫌な人がいなくて本当に最高の職場です」
「ここは皆優しくて私も好き。メアリーの妹さん、はやく元気になると良いね」
これ以上は仕事の邪魔をしてはいけないと思った私は、再び新聞に目を向ける。暫く読みふけっていると、突然書斎の部屋が勢いよく開かれた。驚いて扉を開けた主を確認すると執事長だった。冷静沈着な彼が今までに見たことが無いような慌てた顔で私たちの顔を見ている。
「ロイ様が……ロイ様がっ!」
執事長の顔が青白くなり、言葉に詰まる。何か良くないことが起きたのは一目瞭然だった。次にくる言葉に身構えると、執事長は地面に崩れ落ちた。膝をついて震える声で言った。
「ロイ様が、大けがを負われて意識不明に…」
読んでいただきありがとうございます。
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