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黒猫騎士様に懐かれるまで  作者: 鯛焼きさん
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番外編2 その後の二人

最終話です。

ちなみに少し背後に注意してお読みください。

「ワコお姉ちゃんとロイお兄ちゃん!」

「メアリーちゃん!」


遠くから元気に走ってくるのは元気になったメアリー。そして隣にもう一人。


「お久しぶりです…ワコ様」

「改まらなくて良いよ?アシュリー」


 抱き着いてきたメアリーに私も抱き着きながらアシュリーに声を掛けた。もちろん私を刺した罪は重く、本来ならば日の目を見ることは不可能だった。しかし私はこの姉妹が幸せに暮らせることを願っていたので、国が政策をまともにしないのが悪い!といちゃもんつけてアシュリーを外に出してもらったのだ。もちろん彼女は罪を償うために色々としてもらっている。慈善活動から、とにかく何でも彼女が出来る事なら全て。メアリーが笑顔で走り回っている姿を見て涙を流していたのは何とも言えない心臓がキュッとする光景だったのを一生忘れない。ちなみにロイは納得してないから、アシュリーが私の近くに来ると殺気立つからすぐわかる。目がマジだ。


「ねーねーワコお姉ちゃんとロイお兄ちゃんはフウフなの?」

「え!?」


 色々と考え事をしていると、純粋な目をしてメアリーが聞いてきた。いきなりすぎて言葉がうまく出てこない。すると隣にいたロイは優しい笑みを浮かべて答えた。


「そうだよ、ワコは俺の奥さん。ね?」

「う、うん」


 アシュリーに向けて警戒の目を向けていたロイが私に視線を向けた。優しくて甘いその視線に、恥ずかしくなって目を合わせることが出来ない。でも何も言わないのは違うと思って、必死に頷いた。顔は見えないがロイが嬉しそうにしているのがわかる。

 ようやく私から離れたメアリーは、ロイの方を向いて口を開いた。


「じゃあキスはしたのー?このまえ読んだ絵本に王子様とお姫様はフウフになるときはするって書いてたよ!」

「うん、でも少し誤解があるね」


 最近の絵本は凄いな~なんて思っていると、いきなり引っ張られて、そのまま唇を奪われた。突然のことで目を白黒させていると、ゆっくり離れる。自室にいる時なら二人きりだが今は別だ。メアリーは目をまん丸にして見ているし、アシュリーも申し訳なさそうにしている。ロイはにっこり笑うとメアリーの方を向いて言った。


「キスは夫婦になる時だけじゃなくて、好きとか愛してるって気持ちを伝えたくなった時にして良いんだよ。わかった?」

「はーい!」


 手を挙げて元気よく返事をするメアリー。私は絶賛放心中だ。それこそ最初はロイも確認を取ってくれたから心の準備ができていたのに、最近は遠慮が無くなって来ているのだ。


「メアリー、そろそろ戻ろう?」

「うん!じゃあね!」


 話が一通り終わったのを狙ってアシュリーがメアリーの腕を引いて退散した。今日は屋敷に泊まるらしいから後で遊ぼうと、少しずつ戻ってきた意識の中で考える。

 視線を感じてロイの方を見ると、相変わらず愛おしいものを見る顔で私を見ていた。熱っぽい視線が私の目をじっと見ている。普段の私ならば目を逸らしていたが、何故か今日は勝てる気がして負けじと見つめる。するとロイは私に腕を伸ばして、そのまま抱きしめた。


「愛してる」


 吐息マシマシの甘ったるい声で、耳元で囁かれた。背中に電流が走るようにぞわぞわとする。しかし腕の力が強くて逃げることが出来ない。そのままロイは耳やら首やらにキスを落としていく。何かとんでもないスイッチを入れてしまったようだ。だが次の言葉は予想外の物だった。


「ワコ、俺のこと好き?」


 不安に揺れた声で尋ねられる。ロイは抱きしめる力を緩めると、正面から見つめ合うようになり不安そうな表情をしている顔を正面から見ることになる。この一瞬で彼は一体何を考えたのだろうか?


「騎士はいつ死んでもおかしくないから…俺は自分の気持ちをワコに包み隠さず伝えたい。死ぬ前に後悔をするのだけは嫌だから。でもこの感情が実は俺の押し付けだったらどうしよう?本当はワコにも他に好きな人がいるかもしれな…」

「ロイ」


 一人で勝手に話し出したロイに声を掛ける。するとハッとしたような顔で言葉を止めた。そして申し訳なさそうに視線を下に向けてしまう。私は手をロイの背中に回すと不器用に抱きしめた。ビクリと彼の肩が震える。


「ごめんね、私が自分の気持ちを伝えてないから心配になったよね?言葉にするのが恥ずかしくて…でもちゃんと言うね。私はロイのこと愛してるよ。死がふたりを分かつまで私は傍に居続けます…ってのは重いかな?へへ」


 体を離してから恥ずかしくて照れ笑いをしていると、ロイは目を見開いて私の顔を見ていた。そして嬉しそうに笑みを浮かべる。


「俺は死んでからも一緒が良い」


甘えた声でとんでもない提案をしてくる。そのまま言葉を続ける。


「まずは、やっぱり子どもがいる家庭にしない?……なんてね」


 ロイが冗談めかしたように、そして私を試すような顔をして見ている。ここで目を逸らすのは癪に障る。私がすぐに逸らすと思っていたであろうロイが予想外とでも言いたげな顔で見てくる。


「私は女の子が良いな…ってちょっと!」


 言った瞬間、俵のように持ち上げられていた。ロイは長い脚を駆使して、テラスを恐ろしいスピードで駆け抜けている。どう考えても屋敷に向かっているし藻搔いてもびくともしない。ちなみにロイの顔も俵持ちされているせいでまともに見えない。

 そのまま連れて行かれたのはロイの自室だった。ポイと投げられてベッドに捨てられる。ここでようやく何をしようとしているか理解した。恐ろしすぎてロイの顔を見ることが出来ないから必死に横を向く。影がすっぽりと全身に覆い被さる。ロイは手で私の顔を強制的に上に向くようにさせる。妖艶な目を向けて唇にキスを落とすと、見たことが無いような笑みを浮かべて私に言った。


「ワコ、一生大切にするね」

最後までありがとうございました。

ワコとロイそして全ての登場人物に幸せあれ!


現在「ひとりぼっちの妖精は森で出会った青年に恋をする」を投稿しております。

こちら後半からはのんびり投稿となりますが是非ご覧ください!

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