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ゲーム・サイド・ワールド  作者: やぎょう
2/11

第2話 “インパルス”

 次の日。宿の食堂にて。

 

「ふぁぁ、ちょっと早くない?まだ朝の5時なんだけど……。」


 さっきから、あくびを連発しながらノヴァに聞く。

 いつもならこの時間は、まだぐっすり夢の中だ。

 普段は学校があっても部活に入ってないから7時起きで充分なのだ!

 朝いきなり叩き起こされて、一生懸命ベッドからの脱出に成功したオレを褒めて欲しい。


「だって、隣町って言っても結構遠いよ? こっから十数キロは歩くんだもん。それで途中で魔物にでもあったらもっと時間かかるし。」

 

 10キロ以上も歩くのか……。

 しかも、魔物に遭遇する可能性が?

 やだなー。

 10kmちょいって事は、歩くと2時間とかそんくらいだよな。


「……やっぱり早くない? いくら歩きだって今から出発したら昼前に着くじゃん。」

「昼までに帰ってこないとぶっ飛ばすってジエロに言われちゃったんだよぉ。ムッカつくから、10時までに帰ってやろうと思って。」

 それにオレは付き合わせられていると。

「ジエロって? 仲間のひとりか?」

「そうだよ。よくケンカするけど、今回ばかりは聞いとかないとね。急いで集まらないといけないから。それより、いっぱい食べないとスタミナもたんぞ人間クン。」


 店員のおっちゃんが大っきなミートパイを運んでくる。

 わぁぁ、めっちゃうまそ〜!


(料理はアウトサイドと大体一緒なんだよな。不思議だけど。流石はゲーム、ファンタジーにも程がある。)


「うちは飯がうまい、と評判でね。結構自信あるんだよ。」

 店員さんが笑顔で料理を渡しながら言った。

「あんがと、おっちゃん。」

「ゆっくりしてけよ〜。」

 おう、美味しくいただくよ。


「そーいや、昨日宿までの道、魔法使った?」

「あ、バレた?疲れてそうだったから。」

 やっぱり。

「それって瞬間移動的な?」

「そんな感じ〜。詳しくは違うんだけどね。一瞬だけあたし達の後ろに、熱風をふかせてふっとんだだけ。だからちょっとしか進まない。」


 どうりで風がすごいと思った。

 それに気が付かなかったオレもオレだな。

 ちぇー。

「それで隣町まで連れてってもらおうと思ったのに……。」

「楽しようとしないでよぉ?」

 悪い悪い。

 

 

 それからしばらくして、オレと魔法使いは、町を出た。


「ねぇ、そのネックレスってなんか大事なヤツなの? すっごく綺麗だけど。」

 ああ、これ?

 オレは首にかけている黄金色のネックレスをノヴァに見せた。

 立体のダイヤ形をパックリ半分でわった様な形をしている。

 

「これはお守り! 肌身離さず持ってるんだ。」

「へえ、素敵だねぇ。」

「そーいや、会う前に仲間のことちょっと知っておきたいんだけど。 性格とか、能力とか。」

「あ〜。いいよ。

 まず、あたしはノヴァでしょ、16歳。

 魔法使いとして仲間に入ってる。

 あと、もってる魔力は炎属性と土属性。

 次は、〝氷のジエロ〟15歳。役割は剣士。

 魔力は水属性と氷属性。

 チャラ男だね、こいつは。

 そして、〝悪魔のエビル〟17歳。

 一番歳上ね。役割は超能力者。

 魔力は闇属性と幻属性。しっかりさん担当。

 最後に、〝強風のラフ〟16歳。

 役割は槍使い。魔力は風属性と無属性。

 1人だけ妖精族のドワーフなんだ。

 我が仲間のマスコットキャラ的な?

 っとまあざっとこんな感じかな。

 あとは会えばわかると思うよ。」

「なるほど。みんな、めちゃめちゃ強そーだな。それならオレ、安心……」

「しっ! なんかいる。」

 なんかいるって、魔物?

「……多分。」


 ガサガサッと音がして、草むらからゴブリンが出て来た。


(うーん。ここはオレ戦った方がいいのかなぁ。でも多分オレ戦力外だと思われてるんだよな。剣持ってないし。第一気分が乗らないしー。)


 ーー始まりの町にて。

「この町って武器売ってないのか? 今んとこみてないけど。」

「そうなんだよね。ここでは武器を売ってない。持ち込みはオーケーだけど売るのは禁止なんだ。」

「へぇ〜。じゃあおまえ、もし魔物が現れたらオレの事全力で守れよ。」

「はいはい、任せといて〜。」

 ーーということがあった。

 から、大丈夫かな。

 オレは、はじっこで見てよう。


〝フレイム〟

 と魔法使いが言うと杖先にボールくらいの炎が現れた。

〝バーニング〟

 呪文のかけ声と同時に杖先の炎がゴブリンのほうに動く。

 ゴブリンは逃げようとしたが間に合わない。

 ゴウッと音がしてゴブリンは消えてしまった。

「やったあ!経験値ゲットォ。」

 ……が、経験値をもらって喜んでいる魔法使いの背後に、ゴブリンが力いっぱいこん棒を振りかぶっていた。

 

「危ない!後!」

「え?……あ。」


(くそっ。行くしかないかっ。)

 オレは一気にゴブリンの方に突っ込んでいった。



 (ノヴァ目線)

「危ない!後!」

「え?……あ。」


 人間クンの声で背後のゴブリンにやっと気が付いた。


(やばい。チョーシのりすぎた……。よけないと。でも、もう間に合わないっ。)

 

 あたしはぎゅっと目をつぶった。

 あれをくらったら絶対気絶する。

 あの子を全力で守るって約束したのに。

 ……あれ? 誰かが走って来てる?


〝インパルス〟


 ドンッ、ビリビリッ!

 という音がして、ゴブリンの気配が消えた。


「後ろからは卑怯だぞ!! なんちゃって。」

 ……え。その声はあの人間クン?

 何が起きたんだろう。


「あ〜あ。ぜんっぜん守れてねーじゃんよー。」

 おそるおそる目を開けると、やっぱり目の前にいるのは人間クンだった。


「やっぱ、久しぶりで体がにぶってんなー。」


 と、自分の腕をさすってる。

 どうして? 人間族は魔力を使えないんじゃないの?

 しかも、にぶってる状態であの強さ。


「あんたいったい何者?」

「オレの通り名は〝稲妻のレビン〟オレは魔法使い族と人間族のハーフだ。よろしくな、ノヴァ。」


 と言って彼は、にっと笑った。

 あ、初めて名前で呼んでくれた。

 にっと笑ったあの顔、どっかで見たことあるんだよなぁ。

 ハーフか、何となく魔力はもってる気はしてたけど。


 よろしくね!

 と、返事をしたあたしは人間クンとまた歩き始めた。



 (ライト目線)

「ねえ。」

「んー?」

「冷静になったら聞きたいこといっぱいあるんだけど、まずレビンって呼んでいい?」

「あ〜! それはやめて!ちょっと勢いで言っちゃったけど、みんなには内緒にしておいて、名前だけは。」


(だから、内緒にしようと思ったのに!! 何やってんだオレ……。)

 

「ハーフってことは言ってもいいけど。」

「えーなんでよぉ。めっちゃカッコいい名前なのに……。じゃあライトって呼ぶね。それならいいでしょ?」

「ああ、それなら文句なし!」

「なんで隠してたの?」

「それは……怖かったから。それを言ったら嫌われると思ったから。」

 

 答えながらオレは遠くを見つめる。


(前みたいに力ずくでこの世界から追い出されるのはまっぴらだったから。それにオレ、まだまだ隠し事はいっぱいあるしな。言えないけど。)


「でも、そうかもしれない。あたし達の仲間はそういうのへーきだけど、他の人は人間族のことあんまよく言ってないかも。」

「だろ? だから隠してた。そっちの方がお互い、いい時もあるんだよ。」

 

人間族が危ないって思われてるのは知ってるし。

 昨日だって、今日だって、結構軽蔑の目で見られてた。

 いつか、誰かに絡まれそうでやだな。

 言い訳を聞いてくれるとも思わないし……。

 だいぶ雑草でボーボーだった道が整ってきた。

 そろそろ隣町につくっぽいな。


「あ! あれだよ、あの塔があるところに『出発の町』があるよ!」


 確かに、遠くの方に塔が見える。もうそんなに遠くはない。



 その後1時間くらい歩いたあと、仲間の待つ『出発の町』に着いた。

 外観は、さっきまでいた始まりの町とおおかた一緒という感じ。

 若干武装と言うか、いかにも戦いに行きます! 

 ってな見た目の人が増えたのかな?

 

「着いた〜〜っ。疲れたぁ。」

「え、こんなんで疲れたの? スタミナ少ないんじゃない?ライト。」

 ぐぬぬ。

 こっちに戻って来たばっかなんだからしょーがないだろ?

「さっきオレに助けてもらったくせに。」

「えへへ。それは感謝してます。」

 ところで、みんなどこにいるんだ?

「うーん。同じところにじっとしてられるような人達じゃないしなぁ。とりあえず集合場所に行ってみよっか。」

 ここには武器屋あるんだよな?

「あるよ! おすすめは『ジョンの武器屋』かなぁ。あ、そうだ!気になってたけどなんの武器つかうの?」

「片手剣使ってたよ。小さい時に。」


 3歳くらいから、剣の特訓を毎日の様にさせられてた。

 お陰で、だいぶ上手くはなったと思う。


「ホントはオレの剣あったんだけど、ここに置いてったからどこにあるかわからん。」

「なんでぇ。せっかくの剣を……。」

「だってゲームの外の世界じゃ、剣使わないし。第一、警察に捕まるからな。」

「そっちは平和なんだね……。武器を持たなくていいなんて。あたしもホントは武器なんて持ちたくないよ。」


 ノヴァは一瞬すごく寂しそうな顔をした。

 ったく、しゃーないなぁ。

 オレはノヴァの肩にぽんっと手を置いて、


「大丈夫。おまえが何悩んでるのかは知らねーけど、みんなで平和にすればいいさ。な!」

 と言ってにっと笑ってやる。

「ありがと、ライト。みんなで平和にすればいい、か!」

 ま、そのみんなにまだ会ってないからよくわからんけどな。



 ーー「ここ? 集合場所って。」

 

 そこにあるのは、元々は豪邸だったらしいボロボロの屋敷しかない。

 庭は雑草が生い茂っていて、ジメッとした空気が立ち込め、つるに覆われた屋敷の窓には、所々板が打ち付けてある。

 かろうじて中が見える窓からは、破れたカーテン、布をかぶったカビ臭そうな家具が見えた。

 オレはホラゲーの世界に入っちゃったんだっけ?

 なんか、オバケ出そう……。


「そう。ここがあたしたちの集合場所だよ。」

「このボロ家のオバケ屋敷が?」


 中もひっどいんじゃないのか?

 こんなところで過ごすなんて、考えただけでゾッとする。


「入ってみれば分かるよぉ。」

「なにニヤニヤしてるんだよ。」

 

 オレはドアのぶに手をかけた。


お化け屋敷に行きたい。


誤字脱字がありましたら、報告してくださるとありがたいです!

次回は来週の日曜日に投稿目標です。

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