実力差
短い!
一番最初の試合というだけあって、全員が固唾をのんでこちらを見守っている。
そして先生が軽く手を上げて、振り下ろしながら叫んだ。
「開始!」
「よっしゃ来い!ってあれ?どこだ?」
開幕思い切り地面を蹴って飛び上がる。翼がないのが残念だが、まあこの少年相手ならこれだけで十分だ。
もともと天狗は機動力勝負なところがある。一瞬をより速く動き相手を翻弄し、相手を置き去りにして動く時間を一秒でも長くする。
「ほっ」
「痛ッ!?なにすんだお前!」
頭に思いきり踵落としをお見舞いしたのだが、通常の妖狐に比べて頭が硬いらしい。普通脳震盪か何か起きるはずの一撃だったのだが、効いていないらしく相手は立ったままだし、痛いの一言で済まされてしまった。
「よっ」
ならばそのまま足払いに移行する。
体制を崩したならそのまま腕を引っ張り重心を傾ける。
倒れたのを確認してから炎術を使う判断をした。
「燃え盛れ」
右の拳が炎に包まれる。そしてその炎を左の拳にも発生させてから、打撃に入った。
相手は受け身を取り損ねていたので、足で押さえるだけで簡単に組み伏せることができた。
あとはひたすら拳を振り下ろすだけ……
「ストップ!ストップよ!」
「へ」
先生の一言で拳を緊急停止させる。
慣性で少し動いた燃え盛る拳は、少年の顔スレスレで停止した。
そして目の前の炎の拳を恐怖してか、それとも安堵してか、少年は私に固定された状態で泡吹いて気絶した。
「あれ…?」
私は一つ勘違いをしていたらしい。
どうやら、私の同年代は、思った以上に弱いかもしれない。
_:(´ཀ`」 ∠):