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天狗最強→妖狐の異端児  作者: 時雨笠ミコト
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炎術

『妖怪は幼いうちから妖術を身につける』

その点に対して疑問を持ってはいない。


『その妖術は種族ごとで異なる』

それが常識であると認識している。


『出来るまで徹底的に叩き込む』

しっかり旅立たせると言う意味合いでも良い風習だと思っている。


『妖怪は一つの妖術しか習得できない』

これにも同意する。事実、複数の妖術を習得したと言う前例が存在しない。


……問題は、『私が何故か、既に風術を習得している』と言う現状だ。

そう、私は寝返り(?)を打つときにナチュラルに風術を使っていた。

そして、上四つの事柄に準じて考えると、私は今から父親に炎術を習うのだが、習得できずにしごかれ続ける未来しか見えない。

なので今、赤ん坊にあるまじき量の冷や汗を流して震えていたりする。

「紅ちゃんどうしたの、生まれたての子鹿みたいになってるわよ」

比較的隠してるつもりだったんだけど、どうやらママンにはバレバレのようです。

「ほら紅!綺麗だろう、今からこれを使えるようになるんだぞ!」

多分気を紛らわせるためにお父さんが炎を発生させて見せてくれた。

が、察してくれお父さん。それ逆効果や。

あと子供の気を紛らわせるための炎としては火力が高すぎる。頬が熱い通り越して痛いのですが。

「ばぶ…」

「あなた、炎を遠ざけて下さいな。紅のほっぺが焼けてます」

ママンいつも代弁ありがとう。

「ハッ、そうかごめんな紅〜ッ!」

お父さんは悪い人ではない。本当に悪い人ではない。

だがしかし、何をやっても何故か徹底的に空回ってしまう人なのだ。

あと頬擦り痛いです、朝の髭剃りサボったなこの人。

「ごほん、じゃあ紅、基礎から教えるぞ」

「ばーぶ(はーい)」

ちゃんとお返事はします、いい子だからね。

それから、お父さんの講義オンザステージが始まった。

話す内容の大半は、私が既に知っているものと大差ない。どちらかと言うと、復習の時間に近かった。

「まず妖狐が使うのは炎術だ。そして妖術を使う上で大切なのはイメージと経験。イメージが上手ければ初めてでも思うように使える。が、経験が無ければ燃費が悪い。常に全力投球しているようなものだからな」

 イエスイエス、大丈夫だよお父さん、そこまでは分かってる。

「イメージが大事だからな、大体自分の想像を確固たるものにする為に、大体自分オリジナルの『呪文』……言い換えると『起句』を持つ」

 ついでに妖術の形や威力、効果の特徴も想像力に左右されますね。イメージ大事。

「妖術は、一度習得するまでが大変だ。なかなか感覚……と言うかイメージが掴めないからな」

 神妙な顔で頷くお父さん。とても親身になってくれているのはわかるのだが、娘相手だとしても感情移入凄すぎないか。

だって目に涙浮かびつつありますもん。

「……だが!!そこは安心しろ紅!パパは紅が炎術を使えるようになるまで、最後まで!徹底的に教え続けるからな!」

 わぁ熱血。嬉しいはずの言葉なのに全く嬉しくないのは何故なのか。

理由は単純、お父さんが私に教え続けた先に、疲労で死にゆく未来しか目に浮かばないからだ。

「紅、あなた白目をむいているわよ」

 ハッ!?危ねえ危ねえ、子供にあるまじき顔面を晒すところだった。

「取り敢えず一回試してみろ紅!コツは…そうだな…ググっとカチッとしてボーン!だ!」

 ………ごめん、なんて?

いや、何だよググっとカチッとしてボーン!って。擬音しかないよお父さん?

うん、もういいや。これ以上難しく考えないでおこう。

案ずるより生むが易し、取り敢えず試してみるってのには一理あるし、やってみるか。

「ゔーーん……ん!」

私は炎術を使おうとした!

……。

………。

…………、しかし、何も起こらなかった!

うん!知ってた!

「……紅」

  おいコラそこ!一発で使えなかったからってそんな悲しそうな顔をするんじゃない!

逆に赤ん坊が一発で炎術使ったら怖いでしょ!?

「んーーー!んーーーんーーー!」

 嗚呼もう、上手くいかない!なんか炎術を出そう出そうとしてるだけなんだけど…なんだろう、便秘になった人みたいな感じがひしひしとするわ。

自分のことこんな客観的な見方したくなかったけど。しかも内容最悪だし。

しょうがない、練習あるのみ!


「…ぷぅ」

まあかれこれ五時間くらい頑張ってみたわけですが。

うん、無理!イメージしろって言われても上手くいかないし。

前……風術の時は体から押し出す感じでやってたんだけど、これじゃ炎術は使えないっぽいし。

うーーむ、感覚を掴めって言われてもなぁ。どうしても風術の時の感覚のなごり?でやろうとしちゃうし。

「やーっ!」

無理です!の意を込めて手をバッテンにして見たところ、お父さんの時が止まった。

おっ、てか、あれ?もしかして、私何か地雷踏み抜きました?

いや待ってママン。そんな『やれやれやっちゃったわね』みたいな顔でため息つかないで怖い怖い!

「紅」

「あい」

ねえお父さん、目に光が宿っていませんが。

「今から俺の全力の炎術をお前に叩き込む」

ねえちょっと待って、なにその熱血スポ根みたいな。

聞いてないんですけどー!?

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