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74・傀儡


 サイラスが倒した襲撃者が舞台にもなった事件の犯人かもしれないだって?……それは凄い! 凄いけど物凄く厄介な面倒事に巻き込まれた感も凄い!


「ま、まぁ、右手とお話ししてただけで噂の殺人鬼とは限らないよね? 舞台が流行ったんなら模倣犯かも知れないしさ?」

「ふん、そうだと良いのだがな……だが、仮にそうであったなら少々厄介な事になっているやもしれぬぞ?」


 厄介な事ねーーうんうん分かるよ。バックに居る貴族のお偉いさんから狙われる事になるんだろう? 例えば道端で腹筋してたら急に暴れ馬車が突っ込んできたり? あと貴族御用達の毒が俺のプロテインに混ざってたりさーーいや、でも良く考えたら倒したのサイラスじゃん、俺関係無いじゃん! そしてこの世界にプロテイン売って無かったわ……ちくしょうめっ!


「その厄介って、もしかしてだけどーー俺に全く関係なく無い?」

「ふんっ、関係大ありだ馬鹿者っ!」


 ーー関係大ありだった……って何でだよっ!? 


 俺はそいつを倒した場所にさえ居なかったのに? 理不尽だ! 横柄だ! 働け貴族主義! 幼気(いたいけ)()を守ってくれ!


「お前は舞台など観れる立場では無いから知らぬのも無理は無いが……劇中の犯人は特殊な魔法の使い手だったのだ」

「特殊な魔法?」

「そうだぜ兄貴っ、犯人は人形(パペット)を操って被害者を誘ったり、殺したりしてたんだぜ! なぁ?」


 へー、人形を操る特殊な魔法か……まぁ俺にとっては魔法全てが特殊ではあるんだけどな。

 この世界にはアニメでよく見る四大元素魔法の他にも雷や重力、生活魔法なんてのもある。沢山ありすぎてどれが特殊なんだかそうで無いのか正直今の俺にはまだ分からない。

 特殊だろうと貴重だろうと平凡だろうともーーどの魔法もわくわくするのは間違い無いけどね。 あぁ、一体いつになれば俺の魔法無双が始まるのだろう、やはり学校に行かなきゃ駄目なんだろうか?……で、それと俺の関係は?


「そうだ、犯人以外は使う事が出来ないのではと言われている特殊な魔法だ」

「あん? 犯人以外ってーー人形操るくらいなら他にも居そうだけど……そんなに難しい魔法なのか?」


 風で人をぶっ飛ばしたり土から槍が生えるよりも、人形を操る方がよっぽど簡単そうなんだけど……。


「ふんっ正確には、()()()()()()()()()操る魔法とでもいうのだろうな」


ーー人を傀儡(かいらい)の如く操る魔法


 どうやら最初は人を材料に人形を作っていた犯人だが、人から人形を作った方が早いと考えたらしい。そうして傀儡にした人を操り、新たなる材料を集める為の殺人を繰り返していたとか。


 人を人形にするなど倫理のカケラも無い魔法は勿論学校で教えられる訳もなく、犯人が無数の犠牲を出しながら開発したオリジナル魔法だろうとの事だ。


ーーよって犯人以外、誰も使う事が出来ない魔法。


 この魔法……本当に人を傀儡化させれるなら高位の貴族がリスクを冒してまで犯人を脱獄させたのも納得出来る。

 例えば自身の政敵を傀儡化する事が出来れば? もっと言えば国のトップを傀儡化する事が出来れば? 使い方次第では国が取れるぞこれ……脱獄に手を貸した高位貴族はそいつの作る人形に魅せられたと言うよりは、きっとこのオリジナル魔法に魅せられたんだろう。


(ーーん、人を操る魔法? 人を操るだって!?)


 ここにきて、俺は何故ギュスタンが急にこんな話題を降ってきたのかに気が付いた。


「……ちょっと待て、まさかナルが抵抗してないのって……」

「ーーその可能性もあると言う事だ、覚悟だけはしておけ。もしそうであってもーー俺は加減はせんからな」


(……マジか、確かに関係大ありだったわ……)


 ーー加減はしない……か、全く随分と嫌な事を言いやがる。でも、仮にナルが操られていたなら俺はどう対処すべきなんだろう……。

 女性に暴力を振るうのだって嫌なのに、ナルを殴る事なんて出来やしない! ましてや仲間を殴るなんて……あれ? でもジョルクが同じ状況になったら俺、全然殴れる感じがする不思議!


(それにしても、ヨイチョ連れてこないで良かったな……)


 もし、ヨイチョがこの場に居たならば冷静では居られなかっただろうし、下手すればナルを庇いかねないもんな。


 あ〜全く、そもそも人を操るってなんだよ? 洗脳みたいな感じか? 確か昔テレビで見たカルト教団から連れ出した信者達は、随分と長い間カウセリングを受けて正気に戻ったんだっけ?

 

ーーカウセリングか、当然俺はやった事は無い。


 俺が出来るのは精々筋トレメニューのアドバイスやダイエット相談ぐらいだ。

 でもここは異世界、ヘルムが無理でもアレス辺りが魔法でチョイチョイと洗脳を治せる可能性もある。

 

 う〜ん、今はまだ未確定なんだから考えたってしょうがない。取り敢えずだ、俺はナルが操られていようがいまいが無事に連れ帰る事を目標にしよう。後の事はきっと誰かが何とかしてくれる筈だ!

 

「ーーまぁ最悪、ナルに連日筋トレさせて死ぬほど追い込めば……」


 俺も過去にウダウダ悩んでいた時期があったが、ヘロヘロになるまでガッツリ筋トレしてたら悩みなんてどうでも良くなった経験がある。

 健全なる精神は健全な肉体に宿るって言うし……よし、ナル用の筋トレメニューを今のうちから考えておくか!

いつも読んで頂きありがとうございます!

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