33・4対1
(不可解や…何でこのタイミングでジョルクを逃したんや?防御に徹するんやろか…さっきからあの筋肉が考える事がさっぱり分からん…)
誰がどう見ても優勢、だが、筋肉の考えが全く分からないアルマは心理的に押されていた。
考えが分からないという事は次に相手が何をするかが分からないという事。戦闘において予測が出来ないのは非常に厄介である。何故なら相手の挙動に即時判断が求められるからだ。
「………4対1やで?もういい加減堪忍しいや」
「ロッシ、俺の邪魔はすんじゃねぇぞ…」
バルトの手元の空気が歪み風魔法が放たれる。風魔法は不可視ではあるが先程の戦闘から直線的な攻撃が多い事は理解している。タイミングさえ分かれば躱すのは難しい事じゃない。
「うわっと!」
風撃を躱すと同時に踏み出した右足を砂地に取られガクンと体が下がる、と、その下がった頭のすぐ上をブンッっと何かが掠めるっ!
「あぁくそっ、惜しいっ」
「もっと下っスよ、良く狙うっス!」
砂地や泥地などの地盤が緩い場合、強い脚力はかえって仇となる。力を入れた分だけ足がめり込むからだ。今回はそれがたまたま良い方向へ動き偶然にも躱す事が出来た。が、これ以上躱すにはあまりに場所が悪過ぎる。俺はすぐに転がる様に砂地を脱出、バルト達との距離を取る。
「どうだ見えない攻撃は?自慢のシールドを取りに行かなくていのかよ!」
「石弾丸!石弾丸!」
「シールドが無いうちに叩くっスよ!氷柱!」
ーーーガンッガツン
右手にバルト左手にロッシ、左右から来る攻撃を軽鎧で覆われた小手と拳で叩き落とす。バルト以外の魔法は大した事は無いが二方向捌くのは忙しない。
ここに先程の混合魔法が来るとヤバいが、幸いアルマはジョルクの動向が気になるのか付近を警戒している。恐らく、何処かに隠れて詠唱をしながら狙っていると考えてるのだろう。
(そう簡単にあの規模の魔法は乱発出来ないと信じたいが、確かにシールドはあるに越した事は無いな)
攻撃の隙を見て、シールドへ向かって走り出す!…が、俺の横っ腹にバルトの風撃がめり込んだ!
ーーーグハッ
(こ、この衝撃…中学の時にバスケ部の先輩に殴られた時と同じ!)
嫌な思い出と共に胃液が口に溜まる。先程のバルトの言葉にシールドの方へ誘導された結果がコレだ。思わず膝が折れた俺に向かってここぞとばかり魔法が降り注ぐ、が、ここで倒れる訳には行かない!
(…今は距離をッ)
ーーードンッ!
「うわったっ!?」
立ち上がろうと力を入れた足を魔法で狙い撃たれ、バランスを崩し肩から地面に転がる。追撃されぬ様にそのままゴロゴロと転がる俺にバルトの罵声が響く。
「はんっ、馬鹿の行動は予測し易いなっ!」
味方が増えて冷静さを取り戻したバルトは俺の行動を予測どころか誘導して魔法を放ってきやがる!
「う、うっせぇ!お前の攻撃なんて全然効いて無いしっ!」
「んだとこの砂掛け野郎!」
小学生並みの舌戦を繰り広げながら起き上がった俺はガードを上げジリジリと後退する。もうすぐ荒らされて無い草地だ、深い草場に入り視認される事が無くなれば被弾率は下がる。
「あっ、逃げるっス!アイツ逃げるっ気っスよ!」
多少の被弾は覚悟で俺はくるりと振り向き走る!意識の底に眠る第六感を呼び覚まし、左右ジグザグに走る。そう、回避は完全に勘頼りだ!
「それも予測済みだ、馬鹿が! 攻撃手段が無いなら逃げるしか無いからな、アルマっ!」
「これで仕舞いや!氷雪暴風!」
背後に感じる冷たい圧力、畝る風の音が轟轟と迫ってくる。
(……この風圧と音…さっきの魔法かっ! 躱すには範囲が…広過ぎる!)
風魔法と同じく直線的な攻撃ではあるが、氷雪暴風は畝る竜巻だ。その範囲はちょっと横っ飛びして躱せる様な物ではない。
だが今はこの魔法の範囲外まで走るしか手が無い、魔法の範囲が何百メートル続くかは分からないが、永遠に突き進むなんてな事は無いし距離と共に威力も落ちる筈だ。
そう信じて俺は全力で走る!足トレの日には坂道ダッシュもこなしてきた俺だ、短距離には自信が有る!
(範囲がKm単位じゃ無い事を願うしかねぇ!)
ーーー走るッ走るッ走るりまくるッ!
しかし所詮は人の足、あっという間に背後に迫るが氷雪暴風が軽鎧の背中をガリガリと削り始めた、その時。
「ーーーあ?」
急に今まで踏み締めていた大地が姿を消し、行き場の無くなった右足が宙を蹴る。そのままバランスを崩し前のめりに倒れ込んだ先にはもう地面は無かった。
「どわぁぁあ!?」
ーーーバッシャーン!
俺は草地に突如現れた大きな穴へとなす術もなく倒れ込んだ。
◇
「これで仕舞いや!氷雪暴風!」
バルトとアルマが逃げるアイツの背中に向かって大技を放つ!不気味に畝る竜巻が必死に逃げる背中に迫る。
「こ、混合魔法っスか!? 何もそこまで全力出す必要無くないっスかね?」
今までどこか遊び半分で攻撃していたロッシは全力で魔法を放つバルト達を見て驚いた。氷雪暴風はバルト達の切り札だ、威力は強力だがその分代償も大きい。クールタイムは長いし魔力の消費も激しい。決してジョルク達の様な弱い分隊相手に出す魔法では無い。
「……ウチらがこれ出すんは今日二度目やで? もうこれで今日は終いや…」
「二度目!? 切り札を二度も使わなきゃならなかったって事か? そういや…ドルニス達は?」
今更ながら二人しか居ないバルト分隊に気付き周りを見渡すユーシスは砂山の端に横たわる二人を介抱するドルニスを見つけた。
「……マジかよ、何がどうなったら…お前らの『鉄壁』がああなるんだ?」
「あの筋肉が飛んで来たんや…」
「?? 飛んで…?」
「だがこれでアイツも終わるけどな!」
バルトの視線の先ではちょうど氷雪暴風に飲み込まれる男が…
「…あんっ?…………消えた?」
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