2.いざこざありつつ
「私は絶対に反対です!考え直してくださいっ!」
「...そう言うだろうと思っていましたよ、ユミさん」
切羽詰まった怒鳴り声と同時、机を叩く音が響いた。
夕暮れ。蝋燭が1本柔らかい光を放つだけの薄暗いとある部屋で、数センチ先にある女性の顔をこれでもかと睨む黒髪の少女。眼力で岩をも砕けそうな程だ。
そんな恐ろしい視線を悠然と受け流し、紅茶をすするのは、『コントラッタ王国』唯一の教員である銀髪の美女フィル。闇に飲まれつつある空間に居てなお彼女の髪は輝いて見えるほど美しい。
「あの場で発表しないからおかしいと思ったんです!私に聞かれたくなかったんでしょう!?こうやって、馬鹿みたいに喚き散らすのがわかってたから!」
「行動力の高さはあなたの長所です。これからも磨いてください」
「そんな話をしに来たんじゃない!!」
手元の本を読みながら受け流そうとするフィル。話をする気は無いという事がひと目でわかる態度だ。
そんな彼女にユミは苛立ちを抑えきれない。もはや敬語など使わず、怒りを込めた声でどうにか相手を土俵に引きずり出そうと躍起になる。
暫しの沈黙。蝋燭の火は揺れず、ただ静かに己が仕事を全うする。徐々に徐々に、自身の命を削りながら。
「...」
「...」
「...はぁ」
あまりにも必死な生徒の訴えに、ため息と共に本を閉じるフィル。そしてゆっくりとユミの目を見つめ返した。
激情に燃える強い眼差し。その奥には、ユミという人間を形成しているであろう硬い決意と信念が垣間見える。絶対に引かない、そんな意思が言葉なしにも伝わってくる。一切の濁りが無く、真っ直ぐで美しい緋色の瞳だ。
一筋縄ではいかないだろう。だが、フィルとて引く訳にはいかないのだ。
「...何が望みですか」
「決まってます。遠征班からベニを外してください」
「何故ですか」
「足でまといだからです」
間髪入れずに要求を口にするユミ。予想通りな生徒の発言に、フィルは再びため息を吐いた。
長い戦いになりそうだ。
「...そうでしょうか?ベニくんはあなたが思っているほど弱くありませんよ。体技は並程度ですが、逆に言えば並程度には戦えます。足でまといにはならないと思いますが?」
「並じゃダメなんです。今回向かうのは国の外で、しかも未知の洞窟なんですよね?人並みの実力しかない人間を連れて行けるとは到底思えません」
「純粋な戦闘力は確かにそうかも知れません。彼では魔族に勝てない。もしあそこに魔族がいたのなら、彼の実力では生き残ることは難しいでしょう」
「なら...」
「ですが、それは戦闘力という一面のみから見た場合です。彼にはそれ以上の武器がある。彼を外す訳にはいきません」
切り口を見つけ、一気に方をつけるために前のめりになるユミ。しかしそれを牽制するかのように、フィルの声音に力が篭もる。
フィルから発せられる強い圧。小柄な体躯に見合わぬ凄まじい程の威圧感に、ユミは後退りしそうになる。
...一体、何が違う?
「...武器というのは、ベニの魔法の事ですか」
「その通りです。彼はこの国に4人しかいない"色付き"のうちの1人です。そしてあの年齢で既に理解している。素晴らしい才能です。腐らせていては勿体無い」
「でも戦闘向きじゃない!ベニは弱すぎるんです!ついてきたって邪魔になるだけ、絶対に死にます!あなたはベニを殺そうとしている!」
「ベニくんは死にませんよ。それはあなたも分かっているでしょう?むしろベニくんがいないとあなた達が危ないです」
「そんな事ない!!あんなやついなくたって、私一人だってどうにでも...」
「いい加減に現実を見なさい、ユミ」
「...っ」
強い語気に怯み一瞬言葉が詰まる。一筋の汗が背中を伝う感覚がある。
...一体、私とこの人で、何が違うのだろうか。
フィルは言動は大人びているものの、実際の年齢は自分とさほど変わらない。恐らく2つか3つ、差があるだけだ。背は小さいし、何ならユミの方が歳上に見えるだろう。
それなのに、この差はなんだ?何故こんなにも壁を感じる?
「昼間に言った通り、私たちには時間がありません。最年少であるあなた達だけが頼みの綱なのです」
「...」
「騎士団は確かに強い。しかし老いには勝てない。彼らは少しづつ、確実に衰退しています。彼らに負けないほどの強力な戦力が必要なのです」
幼い子供を諭すように、ゆっくりと一語一語丁寧に語るフィル。口調は非常に柔らかいのに、揺るがぬ意志が伝わってくる。力強くて不思議な声だった。
「だからあなた達に失敗は許されない。万全を期して確実に洞窟を攻略して来なさい。その為にはベニくんの力が必要です」
「...ベニなんか、いなくたって...」
「足に怪我を負って歩けなくなったらどうします?出血が酷い怪我を負ったらどうします?あなただけでどうにかできますか?」
「それは...」
「落ち着いて、もう一度よく考えなさい。何が起こるかわからない未知へあなた達は飛び込むのです。更に、そこから生還しなければならない。もう一度言います。あなた達は人間の希望です。私情を捨てなさい」
「...」
「お願いします。どうかわかって、ユミ」
...本当は、心のどこかで分かっていた。フィルが大人なのではない。自分が幼すぎるのだ。
いつもそうだ。何も出来ないくせにわがままばかり言って、相手を困らせて。最終的には最悪の状況を変えられない。
あの時もそうだった。もっと自分に力があれば。誰にも負けない強さがあれば。
ーー私もベニも、今頃笑っていたはずなのに。
悔しい。自分の弱さが悔しい。もっと力があれば、一人でなんでも出来るくらい強ければ、こんな事にはならなかった。
こうなってしまったのは、自分の力不足が原因だ。鍛錬が足りなかった。全ては己の責任なのだ。そこに文句を言う権利は、もしかしたら無いのかもしれない。
「...わかり、ました」
「ありがとう、ユミ。厳しいことを言いました。すみません。確かに、ベニくんは強くない。でも、あなたがいるじゃないですか」
「...え?」
自己嫌悪、劣等感、無力感...負の感情の渦に呑まれかけたユミが顔を上げると、そこには美しい碧の瞳があった。
見ているだけで温もりに包まれるようだ。優しくて、愛おしい。
「あなたがベニくんを守りなさい。そしてベニくんもまた、あなたを守るんです」
「わ、わたしが?」
「そうですよ」
「む、無理ですよ!そんなの!」
「そぉんなことないですよ。今この国で一番強いのは、守護者様を除けばあなたですからね」
「そ、そんなこと...」
突然の期待を込めた発言に狼狽えるユミ。自己否定の精神が極限まで高まっていたために、彼女は猛烈にそれを拒否する。
しかしその心の弱さをフィルは許さない。ユミの両頬に手を添える。絶対に逃がさない、その意志を込めて、ユミの瞳をじっと見つめる。
「ベニくんの同行を取り消さないのは彼の能力の高さを買っていることもありますが、それ以上にあなたがいる事が大きいです。あなたなら、どんな状況からでも必ず彼を救い出してくれる」
「だから私にそんな力は...」
「好きなんでしょう?ベニくんの事」
「なっ...!」
完全に不意を突かれた。咄嗟に言葉が出てこず、口をパクパクさせる。みるみるうちに頬は朱に染まり、言葉なしに肯定の意を示してしまう。
ニヤリと口の端を上げるフィル。実に楽しげに畳み掛ける。
「なら守らないと。2人で一緒に帰ってきて、いっぱい愛し合わなきゃね♡」
「あいしあう...っっっ!!!も、もういいです!!!帰りましゅ!!!」
「ふふふっ...明日に備えて、しっかり寝るのよ」
「ふんっ!!!もう知らない!!!」
耳まで真っ赤に染った顔を隠すかのように、恐ろしい速度で180度回転。扉を抜け、力いっぱいに閉める。そのまま早足に立ち去ってしまった。
「...ふぅ」
後には銀髪の美女が一人部屋にいるのみとなった。先程までの賑やかさとは打って変わって、彼女の呼吸の音しか聞こえない。しばらく無言のまま、椅子の背もたれに体を預けていた。
「...ふふっ」
久々に少し高ぶった感情がようやく落ち着いてきた。こんなに楽しい会話はいつぶりだっただろうか。思い出すと、まだ笑えてしまう。
...同時に、少しの罪悪感が湧き上がってきた。
「ごめんね...」
飲みかけのカップに手を伸ばし、ゆっくりと口元へ運ぶ。すっかり冷めきってしまったが、これはこれで美味しい。
甘みが増したような、そんな気がした。
音もなく、突如辺りが完全な闇に包まれた。どうやら蝋燭は最後までその役割を全うし、生涯に幕を降ろしたらしい。燭台に残る透明な液がそれを証明していた。
「...明後日が、10年目」
その呟きは誰にも届かず、闇に溶ける。彼女の意識も、少しずつ、確実に、暗闇の中へ落ちていく。少しずつ、確実に、闇と同化する。少しずつ、少しずつ...
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石の外壁で囲われた国『コントラッタ王国』現国王、九代目コントラッタ。
38歳の時に先代が寿命で他界、玉座につく。
保守的であった先代とは正に真逆で、彼は非常に積極的であった。
彼はまず、人口増加を見越して領土の拡大を試みた。その為には外の世界を知る必要がある。そこで、街を守るはずの集団である騎士団に外の調査を命じた。
最初は猛反発された。折角生きているのに、何故わざわざ死にに行くのか、と。
『ふんっ、小心者と非力な者は奪われる他あるまい。変化を求める勇気こそ、我らが生きるのに必要な力であろうに。よい、ならば私一人で行くとしよう』
説得に来た騎士団の団長に告げた言葉である。
結局遠征には騎士団が向かった。腹を括り、死を覚悟し、ある者は泣きながら城門を超えた。因みに王がついて行くと言って聞かなかったので、フィル含む臣下が全力で玉座に縛り付けておいた。
半ばやけくそ気味の騎士団が向かった先...そこには彼らの決意を裏切るかのように、ただただ広大な森が広がっていた。
魔族の姿はおろか、気配すら微塵も感じ取れず、呆気に取られる。
見たことも無い食べ物が木に実っていた。恐る恐る食べてみると、それは驚くほど甘く、体に害のあるようなものでは無かった。寧ろ体に不足していた何かを補ってくれているような気さえした。加えて、人間でも魔族でもない、新たな生き物...『獣』を確認した。
彼らは魔族とは違い、人間の言葉を理解しない。こちらに気づくなり襲いかかってくる事が殆どであった。しかし国の近くに住んでいる獣は戦闘力が低く、騎士団でも十分に殲滅できるレベルだ。
そしてなんと嬉しい事に、獣の肉は食べる事が出来た。しかも味は悪くないどころか、非常に美味である事が多いのだ。
騎士団は獣狩りを行った。獣の見た目の特徴ごとに名前を付け、彼らについて分析、食用として捕獲。国へ持ち帰り、国民に配った。それまでは野菜や米などしか食べていなかった人間にとっては正しく天からの恵みに等しかった。これを期に、九代目の王は国民からの信頼を得たのである。
そんな輝かしい功績を持つ現国王は今...まるで別人のように変貌してしまっていた。
「国王陛下。本日遠征に向かう勇気ある若者5人です。どうか、あなたのお言葉を頂戴したい」
「...伸びしろ、を、多く、持つ、我が子ら、よ...どうか、どうか、死なんでおくれ...」
背筋は曲がり、嗄れて震えている声。真っ白な髪はボサボサに広がり、顔の上半分を隠している。全体的に痩せこけていて、骨の形がよく分かる。今にも折れてしまいそうな程細い。
威厳も覇気も感じられない。奇跡を齎した我らが王はそこにはおらず、ただ危険を案じるだけの老人が玉座に腰かけていた。
「ありがとうございます。皆さん、分かりましたね。あなた達の任務は洞窟を攻略し、無事に生還する事です。様々な危険が待ち受けていることが予想されますが、見事その全てに打ち勝って見せなさい。強き者にしか明日は訪れないのです」
玉座の間。普段なら国王以外誰も入ることを許されない神聖な空間に、今は8人が同席している。
1人はすっかり腰の曲がった老人...もとい、国王コントラッタ。彼の傍らで激励の言葉を述べるのが、この国唯一の教育者兼国王補佐、銀髪の美女フィル。何処でどんな状況であっても彼女の凛とした立ち姿は美しい。
その前に跪いている5人。フィルの教え子であり、今回発見された洞窟へ向かう選ばれし5人である。黒髪の女性が2人。1人は肩口で切りそろえたボブカットで、もう1人は高めに結ったポニーテール。その横に坊主の青年が1人。跪いているので分かりづらいが、筋骨隆々で背も高く、かなりガタイが良さそうだ。そして、薄い青髪と燃えるような赤髪の青年が1人ずつ。彼らは微動だにせず教師の言葉に耳を傾ける。
「困難は山のようにあるでしょう。ですが心配はいりません。あなた達は強い。私が保証します。あなた達ならきっと、どんな困難にも打ち勝ち、必ずここへ...」
「んま、無理だったら無理だったでいいっすし。おれっちがいりゃどうにでもなるんでぇ〜」
「...もう少し黙っててください」
「もう我慢の限界でぇ〜す」
死地へ赴く戦士達へ、せめてもの激励を。その一心で言葉を紡いでいたフィルだったが、そこへ突如場違いなほど明るく、嫌味に満ち満ちた声が乱入した。
不快感を隠さぬ顔で振り向くと、コツコツと足音を立てながら一人の男が歩み寄ってくる。キラキラと輝くド派手な金髪の男だ。彼が先程まで寄りかかっていた壁には、決して小さくない彼の身長と同程度の大きさの斧が立てかけられている。
「フィルちんったら話長すぎぃ〜んだよなぁ〜。おれっちならぁ〜?そんなお話ぃ〜?10秒で終わるってぇ〜のぉ〜〜!」
語尾を無駄に伸ばし、無駄な抑揚を付けた喋り方で無駄に人を煽る金髪青年。ブレスレットやら指輪やらを身に付けていることもあり、無駄にキラキラして見える。
「...」
「要するにぃ〜、フィルちゅわんが言いたいのってぇ〜、こ〜ゆ〜ことでしょぉ〜?」
無駄に足音を立てながら無駄にゆっくり歩くと、跪く赤髪の青年の前へ。そして青年を見下しながら、こう言った。
「さっさと行けよ雑魚どもが。失敗したら殺す」
「...ちっ」
「あぁ?」
赤髪の青年が舌打ちをした。目の前の無駄に派手な青年に聞こえるように、わざと大きな音で。
勿論それはしっかり聞こえていたようで、ただでさえ細い目を更に細めて赤髪の青年を睨みつけた。
途端に空気が一変。息苦しいほどに張り詰められ、正に一触即発といった雰囲気だ。
しばしの硬直。誰かの心拍音が聞こえそうな程の重苦しい静寂を先に破ったのは、赤髪の青年だった。
「...申し訳ありません、守護者リベラ殿」
「分かりゃぁ〜良いんだよくそ雑魚のゴミ屑が。いいかぁ〜?今この国を守ってんのはぁ〜、このおれ様なんだよぉ〜。そこら辺ちゃぁ〜んと分かってるぅ〜???」
「理解しております」
「...んまぁいいやぁ〜。話進めてフィルちぃ〜ん」
「...あなたはもう少し守護者としての自覚を持って、大人になってください、リベラ殿。いつまでもそんなふざけた喋り方で、馬鹿みたいにキラキラした物ばかり集めて、何故あなたはこうも...」
「おせっきょは後で聞くからさぁ〜。時間ないんしょぉ〜?さっさと話進めてくれよぉ〜」
「...」
最初に遮ったのはてめぇだろ!と叫びたい衝動をグッと抑えるフィル。これ以上面倒な事にはしたくない。
この男が、かつて対魔武具を手にし、我らの先祖を魔族から解放した英雄の血を引いているとはとても思えない。実は嘘なんじゃないか、検査したらすぐ分かるのではないか。苛立ちから現実逃避に走りそうになるが、今はそれより優先すべきことがある。
一つ咳払いをすると、フィルは改めて遠征班5人に視線を合わせる。
「...時間が無いのは事実です。まだ言いたい事は山ほどありますが、ここは我慢することにしましょう。あまりあなた達にプレッシャーを与える訳にもいかないですしね。皆さん、立ち上がってください」
その声に従い、5人はすっと立ち上がる。今まで伏せていた為見えていなかった顔がよく見える。
フィルはその一つ一つを記憶に刻み込むようにしっかりと見詰めると、名残惜しそうにこう言った。
「...行ってきなさい」
誰からともなく頭を下げる。必ず任務を遂行する、その硬い決意を込めて。
そして振り返り、歩き始める。人類の勝利を求めて、未知と危険の待つ場所へ。
「ベニ、ま、待ちな、さい」
「...は、はい?」
と、それまで黙っていた国王が1人の少年を呼び止めた。彼の声は弱々しいが、不思議とよく通る。
まさか呼ばれるとは思ってもみなかったため反応が少し遅れたが、薄青髪の少年が振り返る。そこで、彼は見た。
「必ず、我が元へ。よいな」
「...は、い」
今にも死んでしまいそうなほど弱々しい、枯れ木のような老人。その瞳に込められた、並々ならぬ激情を。
何を思っているのか。過去に何があったのか。自分には何も分からない。だが、これだけは分かる。
我らの王は、まだ死んでいない。
その圧に押されるように、部屋を後にする。言葉の意味はよく分からないが、今はとにかく行かねばならない。
彼と話したい。その衝動を飲み下し、自らの使命を全うするため歩き出した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「...明日が、10年目です」
「心配すんなよ。何があっても、あんただけは守ってやるよ」
彼らが出ていった扉をしばらく無言で見つめた後、か細い声でフィルが呟いた。
恐怖。抗うことの出来ない、魂が震えるほどのそれに呑まれかける彼女。そこへ必死に手を伸ばそうとする英雄の子孫。力強いその言葉に、しかしフィルは乾いた笑みを送るのみ。
明日が10年目。彼らはそれを知らない。
知らせるべきだっただろうか。いや、駄目だ。絶対に、それだけは。何も知らせず、信じて待つ。これが最善のはずなのだ。
「お願い...」
最善、のはず、なのに。
何故彼女の心には、後ろめたさという雲がかかっているのだろうか。答えを得られないまま、ただ両手の指を絡ませて祈ることしか、彼女にできることはなかった。