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二章  声が聞こえたら、一歩だけ踏み出せ 2

  二


 会社生活が長くなると、不条理にも対応できるようになるのだと実感していた。

「サービス残業なんて今の社会じゃザラだから断るなら辞めても構わないんだぞ」

 社長は煙草をくゆらせながら、不機嫌そうに言った。

早く仕事を終わらせてジムに行くつもりだったが、どうやらそれは叶わないらしい。

 イライラした。その傲慢な言い方もそうだが、それ以上に俺を見下し人の努力をせせら笑うその表情が気に入らなかった。

「そのしかめっつらはなんだ?」

 社長は俺の顔を睨みつけながら、不機嫌そうに低い声で言った。気づかず俺の表情は社長から見て反抗的に映る顔をしていたらしい。

「そのしかめっつらはなんなんだ?」

 もう一度、社長は繰り返した。俺は小さくため息をつき「なんでもありません」と言った。トイレ前の水飲み場で顔を洗おう。階段を下りて、冬の外気で冷たくなった蛇口をひねると、キンキンに冷えた水が出た。

 俺は顔を洗い、もう一度、二階の検査室に戻る。階段の真ん中の段で、社長は仁王立ちしていた。嫌な予感がした。

 社長は得意の前蹴りで俺の体を蹴飛ばした。軸をずらしてよけるつもりだったが、存外、体は言う事を聞かず、手すりにつかまらなかったら、多分、頭から踊り場に転落していただろう。

「気をつけろ。筋トレ中毒の肉団子が」

 階段の上から見下ろしながら社長は言った。俺はその日、心の中で二度社長を殺した。

 俺の活躍の場は仕事場ではない。仕事以外にあるんだ。そう実感した。こんな会社にいる間は俺の人生が好転する事はないんだろうな。仕事とは自己実現と金を得る手段。

 どちらも叶わないなら、一体、何を目標にして生きたらいいのだろう。

やはり趣味や未来につながるキャリアアップと言うことになるのだろうか。考えれば考えるほどわからなくなっていく。俺は何をして生きたいのだ?

 結局、痛みは抜けなかった。俺は外科に行って、診断書を書いてもらうことにした。全治三週間の打撲だった。労災おりないかな?

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