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今日と明日の境界
「『明日が来る』って、物凄くおかしな表現だと思わない?」
まだ薄暗く、空気が夜特有の冷気を微かに残す時間帯の屋上。手すりから少し身を乗り出しながら、君は言う。
「どうして?」
「だって、昨日は『今日』が『明日』だったじゃない。だけど、じゃあ今日って『明日』なの?」
伸びをする君の視線の先は薄ぼんやりと白んでいて、それは――
「私ね、『昨日』も『明日』も、端っこから『今日』に溶けていくんじゃないかな、って――そう思ってるの」
――溶けだす水彩絵具に、よく似ていた。