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ジャンヌ・ダルク
飽和した音と光が三半規管を殴りつける。思考も感覚も麻痺して、ただ熱に浮かされるまま非日常を泳いだ。音の海に溺れ、ひたすらに腕を振る。流れ込む巨大なものたちにひたすら圧倒された。ステージライトが眩しかった。
そして私は、十四曲目──その音の海から真っ直ぐ注ぐ、力強くも透き通った歌声を聞いたのだ。あの時彼女は確かにロックンロールで、ステージ上のその姿は救済そのものだった。例うならジャンヌ・ダルクのような、この碌でもない世の中に希望の光を堂々と掲げるような──そんな力が、彼女の歌声には確かに有った。