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新たな知識、白翼と銀翼の書

 第一回目の魔法製作が終わり。ミヒトは改めて自分の使命を振り返る。

 ミヒトは自分とその半身のエルピスがこの世界に来た使命を村の皆に話すのだった。

ミヒトは自分の使命をモナとニット、それから手が空いていた村の人たちに説明する。



「僕はムーとデュー、二人の神様から異世界の発展を見届ける観測者としてこの世界に生まれてきた。技術の進歩や種族の成り立ちを見届け、それらを本などにして語り継いでいくことが僕の使命だ」


「そうだったのですね。私も神に仕える神官として、出来る限りお手伝いさせていただきますね」


「モナだけじゃないわい。ワシも、村の皆も手伝わせてもらうぞ。」


「もちろんだ!」「あなた様のおかげで魔法も使えるようになりましたし」

「服だって作ってくれたしな!」「神に誓って恩返しさせてもらうさ!」


「ありがとう。僕の使命は最初に言った事だけど、その前に二つやることがある。一つは文化の下地を作ること。もう一つは堕天使を捕まえることだ」


「堕天使・・・?そういえば最近になってから天使様とお話し出来ていませんね。その、どういった姿なのでしょうか?」


「さぁ、僕にも想像つかないな・・・。ただ神様の加護が無いから《ステータス》で間違いなく判別可能なはずだよ」



 そう、《ステータス》で見てみたけど村人の皆は神の加護がついていた。けれども兎や馬といった動物には神の加護が付いていないのだ。

 なぜ神がそういった加護をつけていないのか不思議であったが、文化を形成することが神様にとって重要なんだろうか。



 そうミヒトが考えたところでモナが教典の話をしてきたため、そこで思考を切り替える。

 移動はせずにその場で教典。もとい教科書を魔法によって20冊程度生成する。


 教科書の名前は“白翼の書”というものにした。著者名はもちろんミヒトの名前である。

 内容は神の教典で重要な部分、協力と文化の発展、愛についてを抜粋し挿絵を追加した。これらは言葉や文法の教育に役立つだろう。

 また、それらに合わせ禁忌に触れつつ、それとなく法律の基本になるものを盛り込んだ。ミヒトが用意した最低ラインである。あくまでもこの世界の住人が法律を定めるべきだろうと考えた結果である。


 他には簡単な算数とそれに合わせた図と絵をつけた。また実用的な問題として建物の寸法や温度の計算などの日常で使う範囲の例題をつけた。

 貨幣の計算も入れたかったのだが、どうやら貨幣は無く、物々交換で成り立っているようだったので今回は入れなかった。


 あとは“銀翼の書”という別冊をつけた。これは神を崇拝するための最低限の施設という名目の実用書である。

 これは神の名を借りた孤児院であり学び舎、教会の作り方である。基本的な住宅の基礎から壁の作り方などの建築方法を図にまとめるだけでなくミヒトが降り立てるような庭を作るように指示した内容を盛り込んだのだ。

 それだけでなくレンガや皿の作り方、製鉄、鋳造や衣服の作り方、村の主食であるイモ類など野菜の栽培方法や連作障害などの栽培の注意点や解決方法などもまとめた。


 また、神官や知恵あるものは神の教えと共に“白翼の書”の内容を人々に教えよという教育の内容も付け加えた。

 この別冊によって少しでも早く町が出来上がるようにとミヒトが分けて作ったのである。



「出来たよ、合わせて二冊になっちゃたけど。どうかな?」



 そう言ってミヒトはモナに教科書を渡す。モナは流し読みで確認していく。


 村人たちも教科書を手に取り中を確認する。皆は新しい知識に喜び、感謝を述べ教科書を持って村へ散っていった。

 ニットたち工房で働くものは“白翼の書”には落ち着いた様子で納得の表情を見せていた。

 しかし、ミヒトが実用書として作った別冊の“銀翼の書”を見て表情を一変させた。

 ニットは驚きの声を上げ、皆で工房へ走り去っていった。大方、実際に取り組んでみようというのだろう。


 自身の半身であるエルピスは題名の翼の部分に文句をつけたが、著者名を見て渋々納得したようだった。

 モナはある程度、内容を把握したのか。教科書を閉じ、ニコリとミヒトに微笑む。



「大丈夫です。絵が付いてて分かりやすいですし、算数?というのも理屈は分かりました!二冊目に書いてあるように教会で教えればいいんですよね?」


「うん、そうして貰うと助かるかな。あとはこれを複製して世界中に配るだけだね」


「複製ですか・・・それもミヒト様の魔法で?」


「うん、エルピスもいるし何とかなるでしょ」


「そうだね、早速やってみよう」



 そう言ってすぐに《複製(コピー)》と唱える。すると寸分だがわぬ形で二冊の教科書が複製された。

モナは複製された教科書を手に取り確認する。内容が同一であること少し驚きながら確認する。その後はミヒトとエルピスの二人体制で《複製(コピー)》の魔法をかけていく。


 本が二百冊ほどに増えたところでエルピスが疑問を口にした。



「ここで本を作らなくても、ミヒトが飛び回って直接渡したらいいんじゃないかな?」


「確かに・・・。なら出かける前に連絡手段を確保しないと」


「ミヒト様、連絡手段と言うのは何ですか?お手紙を出すのではいけないのですか?」


「それだと伝わるまで時間がかかるからね、遠く離れた所からでも話ができる様にしたいんだよ。それと・・・様付けはちょっと恥ずかしいからやめてくれないかな?」


「そんなことが!?それが出来れば、東の大森林に残したイェレーに『おやすみ』のあいさつが出来ますね。流石です、ミヒト様」


「イェレー、モナさんの家族?」


「はい!私の大切な妹なんです。あの子は気が強いんだけど、私と二人だけだとすぐに甘えてくるんですよ。今度会ったらミヒト様のことを教えてあげなくちゃ」



 むぅ、どうやらモナさんは様付けをやめる気は無いみたいだ。それにしても連絡方法はどうしようか、念話みたいな感じかな?確か、マナはあらゆる物に結びついていて空気の中もマナが漂っているだっけ?

 携帯みたいに会話出来ればいいんだけどなぁ。携帯番号は無いから、代わりに人の名前で会話できるようにしよう。

 念話で、名前に宛てて「また面白そうな魔法を作ってるね♪今度はどんなの?」・・・・・・・・。



 微笑みながら白銀の翼竜の周りをぐるぐると飛び回る新緑の妖精。メント・レイはミヒトの思考を覘き、口を出す。どうやら《継承(インヘリタス)》の魔法で受け渡した知識を無事に吸収して起きたみたいだ。

 メントに教科書の事と連絡する魔法を作る経緯を教えると、自分にも手伝えると言い出したのだ。



「僕ら妖精はマナを管理する“調律者”として思考や知識を共有できるんだ♪だからミヒトの《継承(インヘリタス)》で貰った知識は僕ら妖精全員に伝わっているんだ♪」


「そっか!ならわざわざ飛んでいかなくても妖精たちが知識を伝えられるのか!」


「いや、それが僕たちも全部の種族と一緒にいるわけじゃないんだよ?ただ人間が好きなだけでさ♪その、獣人(ビーストマン)と話すのは苦手なんだ・・・。それに僕たちの魔力でもそれだけの本は一冊くらいしか作れないよ♪」


「誰とでも話すと思ったけど、そうだったんだ。それにメントの魔力で作れないとなると、やっぱり僕が直接行くしかないのか」


「それでも、その教科書の内容は理解できるから教えることはできるよ♪」



 ・・・ということは教員は十分ということかな。だったらあとは教材を配るしかないな。まずは連絡魔法だね、名前は《通話(コール)》で!

 早速使ってみよう、となりのエルピスに《通話(コール)》!


(エルピス、聞こえる?)


(うぁ、僕?いや、ミヒトか・・・これが連絡用の?)


(そう!《通話(コール)》だよ)


(分かりやすくていいね。じゃあ村の方は僕に任せて。家も増やしておくから周りから人を呼んできてよ)


(うん、わかった。それと村の皆に魔法教えておいてね!何かあったら《座標跳躍(コーディネイトワープ)》ですぐに帰ってくるから!)


(すぐに回復するけど、MP(マナ)を使い切ったら気絶するから気を付けてね。)


「何話してるのさ♪ちょちょっとミヒト!?」



 妖精が話に混ざろうとした頃には白銀のドラゴンたちの中で話は完結してしまい、翼竜のミヒトは自身の半身である亀竜のエルピスに村の発展を託して、空へ飛び上がった。

 空へ飛んでいくミヒトを見つめ、メントはどれ程の時間を掛けて周るつもりなんだと途方に暮れるのであった。



「せっかく新しいお気に入りが出来たのに・・・」


「何か言いましたかメント?」


「何でもないよモナ!それよりミヒトが何でいきなり飛び出したか聞きだす必要があるね♪ほら!とっとと吐くんだこの亀ドラ!」


「亀ドラ・・・」

 




 エルピスがメントとモナに《通話(コール)》の内容を説明してる頃。ミヒトは東に飛び、モナたちの村“アムレト”から既に5km離れた南北から合流する川の上に飛んでいた。

 “アムレト”は川によって周りと孤立していたが安全であった。北には巨大な山脈があり、落石などの危険がある。南には大森林があり自然の恵みにあふれていたが、猪や熊と言った生物をミヒトは上空から捉えていた。


 川に沿って東に行けば北に山脈が並び、それらの隙間には海が見えた。南には大森林が広がる。大森林は起伏に沿って青々とした巨大な樹木が生い茂っており、大森林への着陸は困難であった。

 ミヒトは川の沿って目を凝らすが、人が住んでいるような痕跡は無い。その後もアムレトと同じような村を探して川の周囲30、40kmの範囲を目を凝らして飛び回って探す。

 太陽達は直上から照り付ける、既に村人が起きてから6時間、飛んでからは2時間ほどたった。視界の奥には大森林の端が見え、川は枝分かれ、海に繋がっていた。さしずめ大陸の最東端である。

 ミヒトは反転し大森林の中心を目指し、南西に飛びながら人の生活圏を探す事にした。



 うーん、見つからないな。もしかして森を切り開かずにツリーハウスを建ててるとか?それだと上からじゃ見つからないかも。

 モナさんに聞いておくべきだったな。いや、善は急げだ。いや、だけど急がば回れって言うじゃないか・・・。そうだ、ナビみたいなものを魔法で作ればいいんじゃないか!?

 《経路(ナビゲート)》!えーとモナさんの妹のところ!



 するとミヒトの視界に、大森林の一部に青い靄のような印がかかる。ミヒトはその場所へ一直線に飛ぶ。

 印の眼前に迫ると、青い印は霧散した。眼下には大森林が口を開け、透き通った大きな湖が広がっていた。


 ミヒトは湖の端、樹木に人工物が幾つもくっついているのを見つけた。家々が木に沿って建てられ、それらを橋で繋いでいる。

 群生した家の塊にミヒトは心を奪われた。湖の端に降り立ち、樹木を、ツリーハウスの群生を見上げる。

 家だけでなく樹木の中にも穴が開いており、外側だけでなく内部にも住居があった。

 正直、ミヒトはこれが村というより一つの街という印象を受けていた。


 すごい・・・ツリーハウスだ!そりゃあ見つからないわけだね。ちょっと惜しいけど、この体だと家には入れないから出てきてもらおう。

 確か、モナさんの妹さんはイェレーって名前だな。モナさんはすんなり受け入れていたけど神様の使いってあらかじめ言っておこう。



「私は神様からの使い!ミヒトです!イェレーさん渡したいものが有ります!出てきてください!」



 ツリーハウスから人がぞろぞろと出てくる。茶髪や金髪だったりと様々な人がいたが、中には耳の先が鋭くとがった者もいた。ミヒトはそれがエルフでは無いかと前世の知識で判断する。

 その人混みの中から赤い髪の女の子が跳びだす。樹木に蹴りを入れながら、器用に落下の速度落としてミヒトに駆け寄ってきた。



「貴方が神の使いだろうと!私の名前を気安く呼ばないで貰える?」



 ミヒトの前に出てきた少女はモナとだいたい同じくらい背格好の赤髪の女の子だった。モナと同じ白い服に短パンの動きやすい服装。美しい赤髪は片側に一まとめにされていた。

 少女は絞るようにミヒトを睨み見上げ、先ほどよりも大きな声で主張した。



「私はイェレアス!イェレ―と呼んでいいのは世界で唯一、モナお姉様ただ一人なの!」



 イェレアスと名乗った少女は、燃えるような赤髪と瞳を揺らし、ミヒトを睨んだ。


熱いですね、熱中症になりかけました

皆さんも暑さにお気をつけてください


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