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初めての村と新しい魔法

 巨大な鱗に人間とドワーフの二人乗せて白銀のドラゴンは空を羽ばたく。神官であるモナは感激の声を上げ、逆にドワーフのニットは恐怖で震えて情けない声を上げている。

 ドラゴンとして転生して大体2時間ほどであるが、ミヒトは空を飛ぶことに戸惑いや不安などはなかった。それよりも空を駆けるという非日常的で非現実な感覚に酔っていたのである。

 何よりもドラゴンという強靭な肉体が、人を二人乗せた程度の巨大な鱗などで疲れや煩わしさを感じさせなかったのである。

 ミヒトは興奮に包まれながら夢中になって空を飛び続けた。



 すごい!翼とか尻尾がついててどうしようと思ったけど・・・まるで腕が増えたような?いや、正確には腕では無いのだが・・・特に尻尾を振り回すのは結構意識を取られるな。

 この辺は草原が広がっていていいなぁ。こういう長閑な風景を見ていると父親の実家を思い出すな。いや、あそこは草原じゃなくて田んぼが広がっているからチョット違うか。

 それにしても街道というか道と呼べそうな道は少ない。今のところ草原に土が露出している一本道しかない。生活していそうな痕跡は少ないし畑すらも見つからない。川にも船すら流れちゃいないな。

 本当に魔法文化なんてあるのか?いや、この女の子、モナは神官だって言ってたし村に着いたら教えてくれるって言ってた。どのみち村に到着すれば魔法も文化レベル分かるハズ!



 しばらくすると川と川が合流している所が見えた。目を凝らすと人工物も20程見えた。しかしながらミヒト自身の記憶の中で最も最低の人口物であった。

 人工物は大まかに分けて3種類。藁を円形にして建てた“ゲル”のような物。木材を幾重にも組み上げたウッドハウス。最も立派だったのは煉瓦造りで煙突付きレンガの家であった。

 ミヒトの心中は穏やかではなかった。魔法があるだの異なる文化が発展しているだの聞かされて置いて、実際は中世以下の村を視界に入れたのだ。



 藁のテント、ウッドハウス、レンガの家・・・3匹の子豚じゃないんだからさ。まさかこれがこの異世界の最先端ですって言わないよね。

 そんなことはないハズ・・・一応聞いてみよう。



「時にモナさん?『アムレト』は川の合流にあって藁と木とレンガの家が建っている村かな?」


「流石は神様からのお使い様ですね!神界から見守ってくださっていたのですか?」


「いや、僕は目がいいんだよ。村が見えたからそうなんじゃないかと思ってね。それより『アムレト』は周りの村に比べてどれくらい発展しているのかな?」


「なるほど!聞いてください!実はつい最近私達の村が一番発展しているって事がわかったんですよぉ!」



 モナは自信満々の声で答えるのだが、しかしながらその答えはミヒトが一番望んでいない答えであった。

 視界に捉えた村がこの周囲で一番発展している村であるとすれば町と呼べるものは無いと言える。

 ミヒトは異世界を映画の如く鑑賞するつもりであったが、この文化レベルではそれどころでは無い。自分の実家以下の村が発展するまでいったい何年かかるだろうか?

 干渉せず見守っていれば何十年、下手をすれば世紀レベルで見守ることになってしまう。村に着いたら技術レベルを上げる必要があるだろう。

 いや、あの双子の神様はそれを期待して自分をこの世界に呼んだのかもしれない。




 そんな落胆や不安を頭の中で煮立たせていると村に着いたようだ。



「やっとかのう、とんでもなく長い時間じゃったわい」


「なに言ってるんですかニットさん!とんでもなく速かったじゃないですか!」



 そんなことを二人が話している間に人間、ドワーフなどの村の人が集まってきた。村の人たちに自分が神の使いであると説明したが村人たちはすんなりと受け入れられた。



 ドラゴンって結構ポピュラーなもんなのかな?僕が見たら腰抜かしそうだけど・・・ってそんなことはなかったな。でもあれはドラゴンに転生するって聞いていたからだし、となると村の人たちは事前に神様から連絡を受けていたからかな?

 ってニットさんあの鱗お神輿みたいに運んで行っちゃったよ。モナさんはこっち見て微笑んでるし・・・。



 ニットは村に到着してすぐに8人程の人間とドワーフの手で白銀の巨大鱗を持って行ってしまった。

 モナはすぐ近くいたため早速魔法について聞いてみることにした。



「モナさん、無事に村に着いたことですし、魔法について教えてもらえませんか?」


「ええ、私にお話しできることであれば!」



 それからモナの話を聞いて分かったこと。魔法とは自身が頭のなかで描いたものが発現するという。詰まる所想像力が大切である。また想像力が無くても連想できる単語をつぶやいていくだけでも発現するという。

 所謂、詠唱というやつのようだ。しかしながらまだ魔法の基礎というものは無く、現状では神からのお告げを聞く魔法。切り傷を塞いだり、疲れを消す癒しの魔法。火を灯す、あるいは熱を出し水をお湯にする魔法。

 他には夜道を照らす魔法や魚を誘い出したり動物を呼び寄せる魔法など。聞いていて不思議であった。戦い関連する魔法がないのだ。

 確かに狩りに使うような魔法はあるが、RPGによくある火球や電撃などの魔法がないのである。だがその疑問とは別に自分が最初に思った疑問をモナに聞いてみた。



「そうだ、僕の力が測りたいんですけど・・・そんな力を見る魔法とか無いですか?」


「力を測る・・・そういった魔法は聞いたことありませんね。作ってみてはいかがでしょうか?」


「う~ん、試してみたんだけど出来なかったんだよね。何がいけなかったのかな?」


「そうですね・・・何かと比べてみてはいかがですか?ニットさんがナイフを作るときによくやっていました!作るたびに最初に作ったナイフと比べるんですよ!」


「最初と比べる・・・なるほど基準値がないとダメか。何か最低値みたいな動物は・・・」



 基準値となる動物を考えミヒトは記憶を探る。この世界に昆虫はいる。しかし1というより0.00・・・というように小数点の世界だろう。仮に一とすれば自身は何千何万になるだろうか。

 そう考えていると鼻の先に蝶、いや小人が乗っかってきた。透き通る羽、新緑の衣に金髪の髪。少年とも少女ともいえる顔立ちであった。これは・・・



「そうボクはその妖精ってやつだよ♪モナから聞いてるよミヒト君♪」


「わたしはメントに一言も言ってません!勝手に心を読まないでください!」



 なるほど、この妖精は心を読むのか「メントって呼んでね♪」それにいきなり表れてきたような「姿を消せる魔法だよ♪」それにモナさんと面識がある「300年前からいる大先輩だからね♪」・・・・・・・・調子が狂う。


「僕にいちいち話しかけないでよ・・・。幾ら心が読めても失礼じゃないか?」


「そんなことないよ♪大先輩として新参者に顔を合わせてこうと思ってね♪」


 なるほど、大先輩ね。そうだ、この妖精を基準値としてみたらどうだろう丁度1って感じが「ちょっとぉ!失礼なのはどっちなのさ!」する・・・。


「大体ボクはモナよりたくさん魔法使えるんだよ!魔法の基準がすごいよ!たいへんだよ!」


「なら大先輩として丁度いい感じのはないかい?」


「ん~出来立てのアンブルなんてどうだい?ほ~ほいっと」



 そう言ってメントは手をくるくる回すと灰色の塊が出来た。メントは灰色のアンブルを抱えてミヒトの鼻先から降りる。

 アンブルを地面に転がすと徐々に大きくなり黒っぽくなっていく。バレーボールほどの大きさになると勝手にズルズルと動き出した。

 アンブルは速さもそこそこ出し、出来たばかりでマナも足りない。力はあるのか分からないが落ちてる小石を動かしているから有るには有るのであろう。



 よし、こいつを1としてステータスを定義すればいいんだな。むむむ・・・。



 ミヒトが念じていると段々とステータスが浮かび上がってくる。もちろんすべての項目が1なのだが。


―――――――――――――――――――――――


 ≪種族≫ アンブル

 ≪名前≫ 無し


 ≪筋力≫ 1 ≪体力≫ 1 

 ≪敏捷≫ 1 ≪知性≫ 1 

 ≪精神≫ 1 ≪魔力≫ 1 

 ≪生命≫ 1 


 ≪特性≫

・マナ収集 ・浄化 ・環境適応 


 ≪魔法≫

・《魔力索敵》 ・《水》 ・《空気》



―――――――――――――――――――――――



 なるほど、こういう奴だったんだ。「アンブルって空気も出していたんだ♪」この魔法はわかりやすく《ステータス》と名付けよう。何よりもわかりやすいのが一番だ。それと魔力がMPってやつか?Lvも付け足そうかな。


「この《ステータス》って魔法便利だね♪」


「なら先輩として広めてくれないかい?」


「そうだね♪じゃあちょっと試してみよっか♪モナ~」


 そういってモナの周りでくるくると飛び回るメント。白銀のドラゴンは初めて作った魔法で神官の少女と妖精を見比べてみる。



―――――――――――――――――――――――


 ≪種族≫ 人間 Lv.3

 ≪名前≫ モナ


 ≪筋力≫  9 ≪体力≫ 10 

 ≪敏捷≫ 10 ≪知性≫ 16 

 ≪精神≫ 17 ≪魔力≫ 22 

 ≪生命≫ 12 ≪ MP ≫ 39/39


 ≪特性≫

・信仰 ・神官 ・神の加護 ・浄化 


 ≪魔法≫

・《夜灯》 ・《神託》 ・《治癒》 ・《熱火》



―――――――――――――――――――――――



 お、MPとやらも数値化できた。HPは、無理か・・・。ここまでわかるなら十分だ。それに神官とか言っていたのは≪特性≫になるんだ。細分化しなかったからか?

 魔法は4つだけか。さっき説明してくれた魔法かな?

 それにしても随分シンプルな名前だな・・・。いや、こういうものってなっていただけで実際には名前なんてないのか。

 さっきもこういう魔法だよって説明しながら言ってたし。《ステータス》を使ったから名前が付いたのかな・・・。



―――――――――――――――――――――――



 ≪種族≫ 妖精 Lv.5

 ≪名前≫ メント・レイ


 ≪筋力≫  4 ≪体力≫  4 

 ≪敏捷≫ 16 ≪知性≫ 22 

 ≪精神≫ 22 ≪魔力≫ 122 

 ≪生命≫ 12 ≪ MP ≫ 134/144


 ≪特性≫

・妖精 ・飛行 ・マナ収集 ・マナ管理 ・調律者 ・神の加護 ・浄化


 ≪魔法≫

・《成長》 ・《豊穣》 ・《治癒》 ・《風》  

・《透明化》 ・《読心》 ・《脱出》 ・《ステータス》



―――――――――――――――――――――――



 うひゃ~確かに魔力が高い・・・。モナさんの6倍弱くらいあるよ。それにしても本当にアンブルの4倍近い筋力があるのか?名前が関係しているのか?

 魔法もモナの倍ある。といってもその一つはさっき出来たばっかりだけど。しかし、こうやって見ると新しい物が後ろに付くのか。

 であれば《透明化》や《読心》は後から覚えたのだろうか?よし、これもふくめて自分のステータスを見てみよう。



 白銀のドラゴンは自身に対して魔法を掛ける。そして自身のステータスを確認したミヒトは己に驚愕したのだった。


ステータスのテンプレ


―――――――――――――――――――――――


 ≪種族≫ 種族 Lv.

 ≪名前≫ 


 ≪筋力≫  ≪体力≫ 

 ≪敏捷≫  ≪知性≫ 

 ≪精神≫  ≪魔力≫ 

 ≪生命≫  ≪ MP ≫ /


 ≪特性≫


 ≪魔法≫

・《》 ・《》 

・《》 ・《》 


―――――――――――――――――――――――

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